アイスを買いに行くかどうしようか、と考えても結局答えは出ない。こんな寒い中買いにいくのは面倒だしどうしても食べたいとも思っていない。腕をくみ、唸る私にコップを置いた吾郎がこちらに視線を向けた。
「俺が行ってきてやろうか?俺が食べたわけだし、」
「あー、良いや。そんなに凄く食べたかったわけじゃないから」
こんな時間に吾郎を外に出すなんて、そちらのほうがもっと面倒くさいことになりそうだと思った私は吾郎からの申し出を断った。凄く食べたかったわけではない、というのも事実ではあるけれどそれ以上にこの時間に吾郎を外に出せば痴漢なんかにあいそうで、もちろん痴漢相手に負ける吾郎ではないけれど痴漢をぼっこぼこにして警察に呼び出されるのも困る。
折角の大晦日ぐらい静かに過ごしたい。
「じゃあ、今度代わりに買ってきとくな」
「うん、よろしく」
アイスを食べることをあきらめた私は再びソファーに腰をおろして、テレビに視線をやった。吾郎もすぐ近くにすわり、テレビを見始めた。
普段忙しくて歌なんて聞くことはないけれど、こうやって音楽を聞くのもたまには良いと思う。
かかっている曲に耳を傾ければ、聞き覚えのある曲。この曲の映画見に行きたかったなぁ……結局、どっかの風紀委員長に仕事押し付けられて見れにいけなかったけれど、と一年を振り返りながら再びみかんに手を伸ばしていれば携帯電話が音をたててなった。テーブルの上にある携帯電話からは音が流れ続けている。
正直、こんな時間に携帯がなるなんて珍しすぎる。それも今日は大晦日。はっきり言うといやな予感がしてとりたくないのが本音だ。
「、携帯」
「あ、うん」
吾郎に言われて、私はやっと意をけっして携帯を手にし、携帯の画面に視線をやる。画面に映し出された文字。
電話だった
メールだった
……やっぱり何も見なかったことにしよう。
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