直ぐになりやんだメロディー。きっと、メールだったんだろう。恐る恐るメールボックスを開けばそこにはツナの名前があった。ツナからのメール。正直ツナからのメールは愚痴を言い合ったりすることもあるけれどリボーンからの伝言もたまにくることがある。
だから相手がツナだからといって安心できないのが本音である。ぶっちゃけ読みたくない、かもしれない。

それでもリボーンからの伝言だった場合それを無視していたときのほうが恐い。

殺される可能性だって考えられないこともない。よし、と気合をいれてメールを見れば案の定それはリボーンからの伝言だった。思わず泣きそうになったのは言うまでもない。






暗い夜道を一人で歩いていく。なんだ結局アイスを買わなくても外に出ないといけなかったんじゃないか、と思いながらツナの家まで呼び出された私は黙々と歩いていた。

もし、リボーンからの用事が早く終わったらアイスもついでに買いにいこう。

誰もいない夜道を歩きながらそう心に決める。リボーンからの用事がさっさと終わってくれるとはとてもじゃないけれど思わないけど、そのぐらい希望を持っていてもよいだろう。早く終われ、と心の中で祈りながら歩いていれば前方から足音が聞こえて来た。まぁ、私にとっては関係ないひとだとは思うのでまっすぐ前をみてあるいていく。
あまりに暗くて足音が聞こえて来たときにはどんな人かさえも分からなかったけれど、その人が丁度街灯の下にきたとき私は「ツナ?」と声を出していた。


「あ、!」
「何やってんの?今からツナの家に行こうと思ってんたんだけど」


こちらへと走りよってくるツナ。そんなツナに首をかしげながら口を開けば、ツナは質問に答えるまえに思いっきり石で躓いていた。あぁ!と咄嗟に手を伸ばして、支えればなんとかツナはこけることはなく、二人一緒に、はぁ、と安堵の息を吐く。

思いっきり私の腕を縋るように握っていたツナはそれに気づくと急いで手をはなした。



「ご、ごめんっ!」
「あぁ、別に大丈夫だよ。ツナのほうこそ大丈夫?」
「うん」



私から離れ、ツナがまっすぐと立つ。この前まではそれほど身長の差はなかったはずなのに、いつの間にか少しだけツナを見上げるような形になっていた。少しだけ悔しく思ったけれど、私だってまだ伸びる可能性がないわけじゃない。でもやはりツナも男の子なんだと改めて実感した。


「で、何やってるの?」
「えっと、その、を迎えに来たんだ」


私の言葉に苦笑いで答えるツナ。別に迎えなんていらなかったのに、と呟けばツナからハァとため息をつかれた。最近、ツナも初めて会ったころにくらべて随分私への態度が酷いものになったような気がする。
それも気をゆるしてくれているからなんだと思うけれど、もうちょっと同じツッコミ担当として優しくしてくれても良いと思う……いや、ツナは今でも十分というか十分すぎるくらい優しいけど。


「女の子がこんな時間に一人で歩いてたら危ないだろ?」
「私としてはツナの方が危ないと思うんだけど」
「それは絶対ないから!」


えぇ、でも最近は男に対しての痴漢もいるそうだし絶対とは言い切れないと思う。それに不良に関していっても、私はまだ対処方法はいろいろあるけれどツナは絶対に怯えるんじゃないだろうか。ツナのほうが不良なんかよりも全然強いとは思うけれど、ツナ自身がそれには気づいていないから。



「もうちょっと女の子としての自覚持とうよ」
「いや、でも実際今まで何にもなかったし」

「今まではなかったとしても、これから、何かあるかもしれないだろ?」



少しだけ怒ったようにいうツナ。これも私のことを心配して言ってくれているんだと思うと、怒りがわいてくることはない。それにツナの言葉に確かに、と思えた私は頷いていた。
いや、でも私なんかを狙う物好きな痴漢なんて早々いないとは思うし不良も雲雀さんの名前をだせば一発だとは思う。ツナの家の方向に歩きだしたツナの横に私も並んで歩き出した。



「でも、最後の最後までリボーンに呼び出されるとはね」
「だよね…ったく、リボーンの奴。何考えてるんだろ」



二人でボソボソと文句を言っていく。小さい声でいっているのは万が一リボーンに聞かれでもしたら、死をも覚悟しないといけないからだ。

辺りに視線をやりながらツナと話していれば、どうやら獄寺や山本もツナの家にいるらしい。まったく、皆を呼び出して何をするつもりなんだろうか。良いことではないのは今までの経験上分かってはいるので期待はしないが、悪いことではないことを祈る。
先ほどから祈りすぎだとは思うけれど、私の祈りなんて神様は何一つ聞き入れてくれることはないんだろう。

それさえも私は今までの経験上分かってしまっていた。


「それよりも、寒くないの?」
「あ、少し寒いけど大丈夫だよ」


心配そうな表情で聞いてくるツナ。確かに急いで出てきたから、マフラーをしてくるのを忘れたけれど耐えられない寒さではない。しかし、ツナは足をとめてこちらを振り返ると自分のしていたマフラーをはずして、ふわり、と私の首にかけた。戸惑う私にツナは恥ずかしそうに少し微笑んで「が風邪でもひいたら困るから」と言った。

そんなツナに優しさを受け取らないわけにはいかず、ツナを見上げて「ありがとう」と言葉を紡ぐ。いつもより近くにあるツナの顔は私と同じように少しだけ頬が赤くなっていた。


「ううん、俺がしたかっただけだから」


じゃ、じゃあ、行こうか、と上ずった声で言うとツナは歩き出す。私はツナのしてくれたマフラーに顔を埋めながらツナの隣を歩く。ツナの香りのするマフラーは、とても暖かくて、何だか嬉しくなってしまった私は緩んだ頬をとめることができない。嬉しそうにしている私を見ていたツナの瞳は、いつも以上に優しい色をしていてツナも嬉しそうに目を細めていた。



(2008・12・31)
ツナend
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