敵は君のすぐ傍に.4
6時間目になる前の休み時間、隣の席でノートをやっと書き写したブン太が唐突に聞いてきた
「は委員会何に入るんだよ」
そう言えば今日の6時間目は委員会きめだったような
周りの子達の会話を聞いていてもそれらしい単語がいくつか出てきているようだ。
仲の良い友達となったり、好きな男の子と一緒になるために頑張ってる女の子を見ると本当に自分と同じ年なのかと思ったりする
「お前、それは年寄りくさいぜぃ」
「黙れ」
いつの間にか声が出ていたらしい。
にっこりと笑顔でブン太の方を見れば、ブン太はすぐさま目をそらしガムを口の中に含んだ
「そ、それでお前委員会は?!」
「図書委員に決まってるじゃん」
だって図書委員って意外と楽なんだよ。クーラーと暖房がついてるし、放課後なんてほとんど人こないから寝ても何も言われないし
と、私は図書委員の良いところを語っているのにブン太はそそくさと仁王の席の方に行ってしまった
え、私の扱いひどくない?
ブン太は私のブン太への扱いが悪いとかたまに言うけど、ブン太も十分私にとったら酷いと思うよ。
そんな事を考えているとチャイムがなって、橋田先生が入ってきた
遂に始まった委員きめ
私としては図書委員に敵がいないことを祈るばかりなんだけど、
まぁ図書委員になりたがる人なんてなかなか居ないからこれがアッサリなれたりする
新しく学級委員になった田中くんが司会をすすめて、決めていく
「はい、じゃあ図書委員になりたい人ー」
私は思いっきり手をあげる。いや、そこまで思いっきり上げたら少し恥ずかしいから、かるめに上げた
見る限り私だけだから男子の方も地味に普通の人だったら良いなぁとか思っていたのに
「えっと、と仁王?」
・・・・・と仁王?
あれ、私耳おかしくなっちゃったかな?そう思った私は仁王のほうを向く
こちらをニッコリと微笑みながら、手をだらしなくあげている仁王がそこにはいて、私はすぐさま視線をブン太の方にうつした
ブン太がなにやら疑問そうに私を見ていたが私が「仁王を見ろ」と小声で伝えると、ブン太も青い顔になった
しかし、仁王が図書委員になるということが分かった瞬間、女子の皆様(一部)がそろいにそろって手を上げた
図書委員の仕事を譲るのはしゃくだが、このまま仁王と仕事をするのは私には無理だと思った私は手を下げようとした
「先着ってことでと仁王に決定だから」
い つ か ら 委 員 決 め は 先 着 に な っ た ん で す か ?
いや、確かに先着順だと思うけどさ、なりたい人がいるなら私譲るよ。むしろ譲らせてもらうよ?
私はこんなになりたい人がいるならって言おうとしたのだけど、それを言う前に次の委員決めにうつってしまってどうすることもできない
この時ばかりはどんどん話をすすめていく田中くんが憎らしくてたまらなかった
これなら大変だけど学級委員とかのほうが良かったかもしれない
あ、でもそれは嫌だな。学級委員って仕事大変そうだし。
黒板に書かれた自分と仁王の名前を見てため息が漏れる
なんで関わりたくないと思っている奴と同じ図書委員にならなくちゃいけないんだ。
「ブン太、ブン太!!」
まだ前では田中君ががんばっているが、ブン太に呼びかける
「なんだよ?」
「なんで、仁王が図書委員なわけ?」
「お、俺が知るわけないだろぃ!!」
「いや、でも仁王が図書委員ってキャラ違うじゃん」
「・・・・確かにそうだな」
「なのに図書委員だよ?!誰かツッコめや!!」
「ならがつっこめよ」
「それは無理」
「無理なのかよ!!」
だって、私がつっこんだところでアイツは嫌な笑いをうかべるだけだ
ただでさえクラスが一緒って言うのも嫌なのに、委員会までいっしょなんて私には無理だ
私は机に額を押し付け、ため息を大きくついた
「お前、そんなに仁王と一緒のが嫌なのかよ?」
「うん」
「・・・・なんだかんだいって仁王良いやつだぜぃ」
ブン太がそれを言った瞬間思わず、鼻で笑ってしまった
あんな可愛い女の子に酷いことを言った仁王が良いやつなんで考えられない
私にとってはただの性格の悪い男なだけだ
放課後、急遽図書委員の集まりがあった
私が聞いた時には既に仁王は部活に行ってるみたいだったし、
1人の方が気楽というか正直仁王と一緒に仕事をするのが嫌だったから
1人で委員会に出た。別に他のクラスも1人のところはいくつかあって、6時頃には委員会は終わった
教室に鞄を取りに行くと教室の電気はついてなくて、少し怖かった
手探りで電気をつければ一つだけ机の上に乗せられた鞄
それを手にとって静かな廊下を歩く。下足箱で靴を履き替えれば、テニス部も終わったんだろう。
いつも聞こえてくる女の子の声も聞こえないで静かな暗闇が広がっていた
校門まで1人で歩いていると急に肩を掴まれて、後ろを向かされた
それがいきなりのことだったので思わず「ギャッ!!」と女の子らしくない声が出てしまった
肩を掴んだ腕の先を見れば、そこには少し息の切れた仁王がいた
「ずいぶん遅いお帰りじゃの」
「・・・・仁王には関係ないじゃん」
そう言うと仁王の目が細くなった気がした。実際くらいから顔なんて良く見えないんだけど
声の調子とかがいつもより低い感じがするからそう思ったのかもしれない
「今日、委員会があったんじゃろ?」
「あ、うん。なんで知ってんの?」
「・・・柳生から聞いた」
そういえば、柳生くんもテニス部だったけ。彼とは一年のときから図書委員だから割と仲が良い方でよく話す
今日の委員会の時だって隣の席で、私の横にあった空席が誰かについて聞かれたっけ
「なんで俺に言わんかった」
「だって、仁王部活に行ってたし別に1人でも大丈夫そうだったから」
私が言えば仁王は黙った。実際、仁王がいなくて困ることは無かったし
仁王なしで仕事はちゃんと終わったから私ひとりで十分だった。だから、
私が仁王に怒られる理由なんてひとつもない
「私帰る」
なんだか仁王を見ているとイラついてきて、私は帰ろうと思い歩き始める
「待ちんしゃい」
そう言って仁王は私を呼び止める
「もう暗いから送っていくぜよ」
「い、いや。別に良いよ!!そんな事気にしないで!!」
私は半ば泣きながら首を横に振った。何が楽しくて嫌いな男と帰らないといけないんだ
そんな私を仁王は何やら楽しそうに見ていて、
「そう気にしなさんな」
気にしてなんかいないのに、私が嘆いた言葉は仁王には届かないようだった
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(2007・06・01)