敵は君のすぐ傍に.3
「おはようさん、」
クラス替えがあってから早一週間とちょっと
なぜかあの日から仁王は私に絡んでくる。正直、うざくて仕方ない
これがジャッカルとかだったら私も笑顔で挨拶を返すけども、目の前の男は私の嫌いなタイプの男
そんな男に挨拶する義理なんてないと思う
私は仁王に向いていた顔を下足箱に戻して、その中から自分の上靴を取り出した
仁王に視線を移すとその奥から、ジャッカルとブン太がこちらに来ていた
その瞬間、私はこの嫌な空気(自分から作ったのだけれど)から抜け出せると思って笑顔でジャッカルに挨拶をした
「ジャッカル、おはよう!!」
「おはよう、」
「え、俺には?俺には挨拶ナシなのかよ」
「あ、うん」
やっぱりこの2人と話すのは楽しい。先ほどまでの嫌な空気は直ぐになくなってしまって、ほっと息をつく
私は2人に挨拶をすると急いでその場を離れようと歩き始めた
「ちょっと待ちんしゃい」
いきなり仁王が私の腕を掴む。仁王の顔は胡散臭い笑顔で掴まれている腕が少し・・・・いや、かなり痛い
その様子をジャッカルをブン太が恐ろしそうな顔で見ている。あの様子じゃ、私を助けるなんてこと頭にないだろう
「ジャッカルに挨拶するのに俺にはないってどういうことかの?」
それはちょっとジャッカルに酷すぎませんか?
たしかにジャッカルより仁王のほうがモテるとは思うけど私は仁王よりジャッカルの方が好きだし
誰に挨拶をするかしないかなんて私の自由だと思う
だけど私の腕を掴む手はだんだんと強くなってきていてそんなこと言ってられないって感じになってきた
「お、おはよう」
私は嫌々ながら挨拶の言葉をかける。その言葉に満足したのか、仁王は私の腕から手を離した
離された腕は赤くなっていて、こんちくしょーと心の中で悪態をつきつつこれ以上なにかされたらたまったものじゃない
未だ固まったジャッカルとブン太を横目に私は教室まで走っていった
「ジャッカル。今日部活の時覚えておりんしゃい」
「・・・・!!(俺何もしてないじゃん)」
「ジャッカルご愁傷様」
「丸井もな」
「何で?!」
****
お昼休みまで後5分
隣の席のブン太もお腹がすいているのかウズウズしている様に見えた。もちろん私も空腹で
早くチャイムがなることを心待ちにしている
「じゃあ今日は少し早いけど、ここまで。学級委員号令ー」
先生大好きだよ!!心の中で先生の愛を囁きつつ、私は鞄の中からお弁当を取り出した
「なぁ、」
「なに、ブン太?お弁当はあげないよ?」
「そんなこと一言も言ってないだろぃ?!」
そうだけどさー、とブン太と言い合っているとジャッカルがやってきた
しかもその横には何故か仁王もいて、私は思わずその場を離れようとするがそれをブン太の手が阻止する
「離せ」
私が睨みながら言っているのにブン太は離そうとしない
おいおいこのままじゃ仁王が来てしまうじゃないか
「も一緒に弁当食べようぜ!!なっ?!」
なんだか焦った様子のブン太に私は驚いたけれど、コイツと食べるイコール仁王ももれなくついてくるという事になる
ジャッカルと弁当が食べれるのはとても嬉しいが・・・・
「無理。絶対無理」
私は勢いよく頭を横に振る。
「そんな事言いなさんな」
「そうだぜ、」
なんだよ、何の嫌がらせだよと思う。ジャッカルにそんな事頼まれたら断れるわけないじゃん!!
ブン太も私の手を離してくれそうにないし、私が妥協するしかないの?
「の弁当はこれじゃな?」
そういうと仁王は私の弁当を手にとって歩き出した。え、ちょ、私のお弁当どうするつもりなんですか?
そのお弁当は私のお母さんが朝早くから愛情をこめて作ってくれたものなんですけど
ジャッカルとブン太もその後に付いていくもんだから、私も仕方がなしについて行った
行き着いた先は屋上。まだ肌寒さが残っている為か人はいない
仁王は座り込むと私のお弁当を私に向けて投げてきた
私はそれをうまく受け取った瞬間、逃げ出そうとしたけれどジャッカルが泣きそうな顔で必死に止めてきたから逃げることを諦めた
その場に座り込んで仁王を見れば、嫌な笑顔で笑っていたのでやっぱりこいつは嫌いだとあらためて感じた
結局4人で食べたお弁当だけど、いつもより美味しく感じなかったのは仁王のせいだろう
教室に戻って5時間目が始まるとブン太が小声で話しかけてきた
「お前ってもしかして仁王のこと嫌い?」
「なんで?」
仁王の話題で私の声は不機嫌になる。ブン太もそれに気付いているとは思うけど、それでは話をやめようとはしない
先生が問題を黒板に書く。私はノートに視線を移し、それを書きながらブン太の話に耳を傾ける
「いや、なんか仁王のこと避けてるだろぃ?」
「うん。まぁ、そんなことあるけどさ」
「あるのかよ!!」
ブン太が大声でツッコむ。確かに良いツッコミだけれども、こいつは忘れているんじゃないだろうか
今が授業中だということを
その証拠に黒板の前ではとても良い笑顔の先生がブン太の方を見ていて
黒板には丁度良く問題が書かれていて
「丸井、そんなに問題が解きたいなら先生に言ってくれれば良かったのになぁ」
「げっ?!」
ブン太の嘆きもむなしく終わってしまったようだ。そして、この時私は気付いていなかったのだけれど
仁王が睨んでいるのをジャッカルは怯えながら見ていたらしい
私はと言えば、黒板の方に向うブン太を哀れに思いながらこれ以上どうすれば仁王と関わらなくてすむか考えていた
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(2007・05・12)