敵は君のすぐ傍に.2











先ほど発表されたクラス替えで自分のクラスを確かめた私は、自分の教室へと向っていた



3年になって何か変わるかってこともなく、隣にあった名前は2年のときと変わらずブン太。仲の良い友達数人とも同じクラスになれて、

新学期からまずまずの出だしだと思う









「これ、落としたぜよ」








いきなり後ろから声をかけられた事に驚きながら振り向けば、

銀髪を赤いゴムで結んだカッコよい少年が私が落としたと思われる定期を差し出していた

落としたことに少しも気付かなかったとは私もまだまだだなって思いながら少年の手から定期を受け取る










「サンキュー、少年」











この学校で私は今日から3年だから、制服を着た人がいたらそれはタメか年下であって自分より年上の人はいない

だから改まって挨拶をする必要もないということで敬語で話さなければならないのは先生だけと言う事だ






定期を再び制服のポケットの中に、今度はちゃんと落さないよう入れこんだ

近くの女子がこの少年の顔を見て目がハートになっている(いささかこの表現は古いような気がするが








「お前さん、何組?」



「あー、多分3組だよ」



「俺も同じ何だが、教室まで一緒に行かんか?」






会ってすぐの人にこんなこと言われるとは思っても見なかったが、1人で新しい教室に入るのが寂しいのだろうか?

別に良い人のようだし断る理由もなかったので一緒に教室まで行くことにした私は少年と共に歩き出した












これから一年間同じクラスなんだし仲良くなっていても損はないだろう










教室に着くまでの間、くだらない話をしながら行った

初めて話す人なのに結構楽しかったから、この人はそうとうな話し上手な人なんじゃないかと思う






この少年の話では3組の担任は、橋田先生らしい





橋田先生は生徒の中でも人気のある教師だし本当に橋田先生が担任だったら嬉しいけれど、

なんでこの少年はそんな事を知っているのかと疑問だ。教室に入ると、もう席が決まっているので少年と別れて自分の席に向う。


教室に入った瞬間女子がこちらに、と言うか少年を見て騒いでいたのでやはりあの少年はモテるらしい











まぁ、あの容姿でモテないとしたらこの世の男は全て恋をすることは許されないってことになるが










「よっ、!!」







「おはよう、ブン太。朝からお菓子食べるのは止めた方が良いと思うよ?」












隣の席であるブン太は朝から、お菓子を机の上において食べていた。軽く胸焼けしそうになったのは私だけじゃないと思う

それでもにこやかに机の上のお菓子を減らしていくブン太を尊敬したいぐらいだ

机の上に鞄を置いて、座る。隣でブン太が私の方に向きなおして、私の方を見てきた。その目は意味が分からないといった感じの目で

私は何事かと思ってブン太を横目で見るが、あまり気にしてはいない









「お前さ、仁王と仲良かったの?」









急に何を言い出すかと思ったら、







誰だよ、仁王って?







仁王なんて人、私の記憶の中にはいないはずと思って考え込めばある1人の人が頭に浮かんだ

もしかしてブン太の言っているのは、あの最悪人間仁王のことなんだろうか



まさか。私はそんな奴を仲良くなった覚えはない



なのに何故今その名前が出てくるのか私には分からなかった












「なんで?」











少し不機嫌になった私の声は少し低くなってしまった

その声にブン太がビックリして目を見開いていたがすぐにいつもの顔に戻って、ガムを口に含んだ







「いや、さっき一緒に入ってきただろぃ?」





「どこに?」




「教室に」







ブン太は何を言っているんだろう。

夢でも見たんじゃないかと思う。それかお菓子の食べすぎでどこか変になったのか?




だって私は教室に確か銀髪少年と入ってきて










「・・・・・・」










そういえばあの少年の声には聞き覚えがあるような気がした

春休みの前、ブン太と話していた少年の声










「別に俺には関係なかよ」










私としたことが、今まで忘れていたなんて。なんたる不覚・・・!!

だんだんと生徒が増えて騒がしくなる教室の中、私はただ呆然とブン太の顔を見ているしかできなくて

自分のあまりの記憶力のなさに悲しくなった













「まさか、お前と仁王が仲
「良くないから」・・・・・」










なんとかイラつくのを抑えながらブン太の言葉を遮った

私は仁王と言う人間があの瞬間から大嫌いで、仲良くするなんてアリエナイ事







しかし、私はあの少年が仁王と言う事を知らなかったのも事実だ








それならば今からでも遅くないはず。私はあいつとは絶対に関わらないことにしよう









「なにやってるんだお前ら、にらみ合って」








「ジャッカル!!」









忘れていたけれど、ジャッカルとも同じクラスだった

ジャッカルとは2年のときブン太を通して仲良くなったが、本当に良いやつだと思う












「同じクラスよろしくね、ジャッカル!!」











先ほどまでのイラつきはどこにやら私は満面の笑みで話しかける

俺の時と態度違いすぎるだろぃ、とブン太はぼやいていた









「おう、よろしくな」











仁王と同じクラスという事がとてもショックだったけれど、ジャッカルと同じクラスだったからプラスマイナスゼロだよ

私ジャッカルとは心の友になれるような気がする




「お、仁王!!」



ブン太のその声に眉が歪む

ブン太の視線の先には先ほど一緒に教室まで来た銀髪少年が結んだ髪の毛を左右に揺らしながら歩いてきた






「ジャッカル、外で真田が呼んどるぜよ」



「そっかわざわざすまねぇな」



銀髪少年――改め、仁王に言われるとジャッカルがこの場から離れていった

用件を言い終わったはずの仁王は未だブン太の席の前にいて







さっさ自分の席に帰れ!!







と心の中で念を送るのになかなか仁王にはとどかない。それにさっきから見られているような気がする

いやそんなの私の勘違いだよね。自意識過剰な女は嫌われるぞ!!







「お前さん、名前は?」


「へっ?」




いつの間にか目の前にいる仁王




「さっき名前聞くの忘れておったからの」



「そいつはだぜぃ」



いつまでも言おうとしない私に痺れをきらしてか、隣からブン太が言った。言わなくても良いものを!!

仁王はブン太の方に顔をもどして、眼を細めて言った








「俺は丸井に聞いたつもりはなかったぜよ」








ブン太が青い顔になって、まるで私に助けを求めるかのような眼でこちらを見てきた

私としては巻き添えをくいたくなかったので無視をきめこむ

しかし、それは無理だったらしい







「まぁ、良い。俺は仁王雅治じゃ。よろしくな?」







とても良い笑顔で私のほうに振り返る。

その笑顔に数人の女の子は感嘆のため息を漏らしていたけれど私にはただ恐怖の対象でしかなかった

もちろんそれはブン太も同じだった見たいでさっきより青い顔になっていたのは言うまでもない















チャイムの音が学校内に響く同時に先生が入ってきた













入ってきた先生は仁王の言ったとおりの橋田先生だった




仁王って何者なんだよ







  






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(2007・05・06)