「とりあえず、どこからまわります?」
「そうやなぁ、4階から見て回ってみよか」
2階にある図書館から、鳳と宍戸先輩を捜しだした私達は4階に行くために階段を上がっていた。4階には最初に行った音楽室と恐い話では有名な理科室があるはずである。他には通常のクラスがいくつかあるが、幽霊が出るとなったら、音楽室か理科室くらいだろう。できる事なら、宍戸先輩達と会う前に危険な目にはあいたくないと思い、避けたいクラスでもある。4階につけば、果てが見えない廊下が私達を出迎えてくれた。昼間ならそこまで長く感じない廊下も、今はどこまでも続いていそうな雰囲気をかもしだしている。
「別に誰もおらんようには見えるんやけど」
「そうですね。だけど、もしかしたらどこか教室にいるかもしれませんよ」
「それもそうやな。一つずつ確かめよ」
もしかしたら、宍戸先輩達は幽霊から逃げる為に、どこかの教室に隠れているかもしれない。そう思った私と忍足先輩は暗く静まり返った廊下を歩きながら、一つずつのドアを開け教室を確かめていく。教室は廊下よりもカーテンがあるせいか、暗く、ほとんど中の状態は確かめられないぐらいだ。本当にこの中に宍戸先輩と鳳はいるのだろうか。
「宍戸せんぱーい、鳳ー、いますかー?」
「・・・おらんみたいやな」
そう言って、理科室のドアを閉めようとした瞬間、大きな音が理科室に響いた。
―ガシャン
思っても見なかった音に思わず肩がビクッと震える。さすがに、忍足先輩も驚いたのか目を見開いて理科室の中を覗き込んでいた。しかし、中を見てもどこから音が聞こえてきたのかは分からない。再び静寂の戻ってきた理科室に、私は何の音だったのか確かめようと思い足を一歩、踏み入れた(勇気あるな自分、と褒めたくなった)
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
「っ!!」
聞こえてきた悲鳴があまりに大きく耳に響いた。私はあまりの声の大きさと甲高さに咄嗟に耳を押さえる。しかし、声は小さくならず先ほど以上に悲鳴は私の脳内にまで響き渡った。そして、いつの間にか、またあの時の頭痛が私を襲う。思わず瞑ってしまった目を開けば、そこには下足箱で見た女の子と、見たことも無い女の子が理科室の中央にいて、下足箱の女の子は何かの薬品をもう一人の女の子に向ってかけていた。その顔には何故か笑顔がうかんでいて、私の背中を寒気が襲った。
「や、めて、・・」
「絶対に許さない」
やめてと懇願する女の子に、顔を歪ませた女の子はさらに薬品を女の子の顔にむかってかけた。そのせいか、女の子は既に話すこともできず段々と崩れ落ちながら、悲鳴も聞こえなくなっていた。もしかしたら、死んでしまったのではと思い、駆け寄ろうとするも足が動かない。未だ頭が割れそうになるぐらい、痛む。
「あと、2人」
女の子がそう呟くと、私の頭痛はいつの間にか消えて、理科室も先ほどと同じように真っ暗で静かな空間に戻っていた。こんなに暗いと、普通なら理科室の中で何かをやっていたとしても見えないはずなのに、なぜ私には彼女達の姿が見えたんだろうか。それとも、やっぱり私の勘違いか何かなのだろうか。
「ちゃん、どうしたんか?」
「い、いや、何もないですよ」
忍足先輩には先ほどの女の子のやり取りは見えなかったらしい。と言うか、よくよく考えればあの女のが見えているのは私だけのような気がする。確かに岳人先輩は女の子の声を聞いたといっていたが、どう考えても私の見ている女の子とは違う女の子だろう。だって、あの女の子は私を首をしてめ殺そうとしたのに、岳人先輩に私の居場所を教えるなんてどう考えてもおかしいじゃないか。しかし、どんなに考えても答えはでず、私はどうすることもできない。
―ガシャン
忍足先輩に続いて、理科室からでると理科室の中からまた音が聞こえた。しかし、さっきと違うのは後ろのドアが開き、そこから人体模型が出てきてこちらを見て、にっこりと笑ったことだ。
「さっきの音はこいつやったんやな」
ボソリと忍足先輩が言う言葉に、なるほどと思う間もなく私達は人体模型から逃げる為に、その場から走り出していた。後ろからはガシャンガシャンという音とは似合わず、陸上部もビックリしそうなぐらい軽やかなフォームで追いかけてくる人体模型に少しだけ惚れ惚れしたか、どんなにフォームが綺麗で走るのが速くても、こいつは人間ではないのだ。恐怖というよりは、人体模型の気持ち悪さに俗に言う"キモイ"と言う感情の方が大きくなっている。
「伏せてください!!」
急に聞こえてきた声に、私達は素直に伏せた。ただ、急に聞こえてきた声なら私達も素直に伏せたりはしなかったが、その声は聞き覚えのある声だったのだ。伏せながら前を見れば、ボールが飛んでくる。そのボールは私の後ろへと飛んで行き、後ろからはガンッと言う音と何かが倒れる音が聞こえてきた。どうやら、私達はお目当ての人物と会えたらしい。だけど、こんな簡単に見つかってよかったのかと思ったのも事実だ。なぜなら、映画では良い事があると確実に、悪いことが起きてしまうからである。そして、私の普段の生活も悲しい事にそうであるからである・・・(少し涙がでそうだよ)
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(2007・08・14)
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