「ちょっと、まだ追いかけてくるんですけど。あれですか、今流行のストーカーって奴?忍足先輩みたいだ」
「おい、、ストーカーなんて別に全然はやってないだろう」
「今、俺見たいってボソリと言ったやろ?!」
「えぇ、そんなこと言ってませんよー」
「って、なんでそんな冷静なの?!」
鳳が焦ったように声をだす。別に私も冷静なつもりは無い。これでも場の空気を和ませようと思ってやっている事なんだけど、と心の中で付け加える。しかし、このまま逃げ続けるだけじゃらちが明かない。人間には体力の限界があり、私はそろそろその限界を迎えてしまいそうなのだ。私はどうにかして、このメリーさんから逃げる方法は無いものなのかと今まで読んだ恐い本を思いだそうとする。だけど、走ることに一杯一杯でなかなか思い出せない。
「跡部、二手になるで!!」
「チッ、そうだな」
私達はその一言で階段を上るグループと3階に行くグループに分かれる。一番最後を走っていた私は忍足先輩とジロー先輩、日吉が行った3階のほうへと向う。メリーさんを見れば、どうやら跡部部長たちのほうへと向っていったらしい。段々と遠くなる足音と甲高い声。向こうのグループのメンバーを考えれば心配する必要もなさそうだと一息をついた。それを見届け、前を走っていた忍足先輩は足を止まる。
「行ったみたいやな」
「なんで俺たちがこんな事に巻き込まれないと行けないんですか」
「でもでも、なんだか楽Cー!!」
「いやいや、楽しまないでくださいよ」
先ほどまではすごく気分が悪そうにしていたジロー先輩がいつのまにか元気になっていた。元気になったのは良いが、おねがいだからこの状態を楽しむような事はやめて欲しいと切実に思う。だって、私達は仮にも命を狙われていたのだ。
「とりあえずどうしましょうか」
「一階に行って、外にでよか」
外に出ればなんとかなるか、と私達は忍足先輩の言葉どおりにに今上がってきた廊下を降りていく。思えば、いつの間にか学校全体が暗く、窓から見える外はもう夜の様に見えるぐらい黒い闇に染まっていた。どうして、と考えなくても多分原因はメリーさんか、他の何かのせいだろう。
「・・・暗い」
「そうだな。まるで夜の学校みたいだ」
夜の学校と言えば、しばしば恐い話でも舞台になる場所である。そんなまさか、と考えて頬をかるくつねってみれば痛いと感じる。どうやら今までのことは夢じゃないらしい。こんなありえない状況にいるのに、夢ではないなんてと泣きそうになるがそれを我慢する。階段を降り1階について、下足箱にむかう。下足箱の玄関は通常、学校があっているときは閉まる事はない。もちろん私達が音楽室にいく為に校内に入ったときも開いていたはずだ。しかし、何故か今はしまっている。ジロー先輩がドアに近付き開けようとするもドアは閉まっているのか開く気配は見られない。
「忍足ー、これ閉まってる」
「閉じ込められたって事かいな」
「芥川さん、ちょっとそこどいてください」
日吉はそういうと、自分の長い足を窓に向けて振り下ろした。割れる!!そう思った瞬間、日吉の足は窓を割ることなくはねかえされた。確かに、氷帝学園は普通の学校に比べれば良いガラスを使っているが、防弾ガラスを使っているわけじゃない。それに古武術を習っている日吉の蹴りは冗談抜きで強いのである。それなのに割れないなんて、絶対におかしい
「どうやら、俺たちを外に出すつもりはないらしいですね」
「とりあえず他の出入口も確かめてみよか」
そういうと、忍足先輩が踵を返して一番後ろにいた私の方に来る。他の2人も私の横を通り過ぎていき、私も踵を返そう足を動かそうとした。しかし、急に頭痛がおそい私はその場にしゃがみこむことしかできなかった。
「――」
「・・・誰?」
「――ずっと私達、友達だからね」
聞こえてきた声は私を呼ぶ。だけど、私はこの声の持ち主をしらない。
「・・こ・・・裏切・・もの!!」
急に声が苦痛を秘めたものへと変わる。
「・・、!!」
「日、吉?」
「大丈夫か?!」
いつの間にか声も聞こえず、頭痛も治まっていた。目の前には心配そうにしている先輩達と日吉。この場に女の子なんていないはずなのに、聞こえてきた声は女の子のもだった。とりあえず、これ以上、みんなを心配させるわけにはいかない。早くここから脱出しなければ、いけないんだから。私はそう思うと立ち上がった。
「大、丈夫」
「どうしたん、何かあった?」
「いえ、ちょっと気分が悪くなっただけです。ご迷惑かけてすみません」
「こんなところにいたら誰でも気分悪くなるCー!!」
「そうですね。、また気分悪くなったら言えよ」
こんなこと言ったら殴られるかもしれないけど。、普段の日吉から考えられないぐらい優しい。たぶん、日吉もこんな状態の中で気遣ってくれてるんだろう。忍足先輩を先頭に私達は、他の入り口がないかを探しに歩き出す。下足箱のほうを一度だけ振り返れば、髪の長い女の子がこちらを睨んでいた。
「えっ?!」
私の声に前をいく3人も振りかける。しかし、その時には既にその女の子は姿を消していた。私の見間違いかと思ったけど、違う。あの女の子は確実に私を睨んでいた。
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
別に言わなくても良いだろう。もしかして、先ほどの女の子の声はあの睨んでいた女の子のものなのだろうか。
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(2007・08・13)
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