「岳人、行くで」
「おう、勝つのは氷帝だぜ!!」
「そうや、氷帝テニス部をなめたらあかんで?」
「それに、また、みんなでテニスをするんだCー!」
先輩達と遠くなる中、聞こえてきた声に思わず足を止めようとする。だけど、日吉と鳳がそうはさせてくれない。だんだんと離れていく先輩達との距離に、私はどうしようもなく、もどかしい。
「日吉、鳳、離せ!!」
「無理だ。跡部さんからの命令だ」
「跡部部長の命令だったら何でも聞くって言うわけ?!」
「違うよ」
「何が違うって言うの?!この手を離しやがれ!!」
「、とても女の口調とは思えないぞ」
日吉に少しだけ冷ややかな視線を浴びながら、私はパッと日吉の腕を振り払った。後は鳳の手だけだと思いながら振り払おうとするも、なかなか鳳は腕を離そうとはしない。ブンブンと腕を振り回すも、離そうとしない鳳にイライラが募りつつ、鳳を睨見上げれば、少しだけ悲しそうな顔をして鳳はこちらを見ていた。
「俺だって譲れないよ」
鳳が呟く。私は腕をとめて、鳳の次の言葉を待つ。
「は女の子なんだから、あそこに戻るのは危険だよ。だから俺はこの手を離すつもりは――ガンッ!!
「決まったな」
私は最後まで鳳の言葉を聞かず、自由になっていた手を鳳のあごへと繰り出した。その勢いか、私の腕から鳳の手が離れる。少しだけ、その後が赤く残っていた。
「わ、私だって仲間なんだからね!!」
それだけを言うと私は、踵を返して先輩達のいる方へと走り出していた。そりゃ、鳳が私のことを女の子として心配してくれるのは嬉しい。でも、、女だからって特別視はされたくない。
確かに、私は女かもしれないけど、だけどそれ以前に氷帝テニス部なんだ。
「鳳、はそこらの女とは違うぞ」
「それもそうだったね」
「・・・もしかしたら俺よりも強いかもな」
「あはは、だったらありえそうで恐いや」
「俺達も、行くか」
「うん」
私の視線の先には、今まさに口裂け女が岳人先輩にメスを振りかざそうとしていた。そして、それを庇うかのように忍足先輩が岳人先輩の前に出る。
「侑士!!」
「って、させるか!!――――ガンッ!!
口裂け女はものの見事に吹っ飛び、廊下へと体を叩きつけた。口裂け女の口からは声にもならない声が出ているようだ。私は半ばそれを無視しつつ、岳人先輩と忍足先輩の方を見る。突然の私の登場に少しだけ驚いているようだった。人体模型の相手をしていた、宍戸先輩と跡部部長と樺地も驚いた顔でこちらを見ていた。
「な、なんでが」
「岳人先輩を助ける為に戻ってきましたって、言ったら少しキザですかね?」
「とりあえず、助かったわ」
「あ、そうだ。クソクソ、侑士の馬鹿!!俺を庇ってんじゃねぇよ!!」
「あはは、しょうがないですよ、岳人先輩。だって、親友が危ない目にあったら誰でも体が勝手に動いちゃうものですから」
「そうやなぁ。ちゃん、ありがとうさん」
忍足先輩は微笑むと、ずれた眼鏡をかけ直し私の
頭に手を置いた。すぐさま、私はその手を払いのけさせていただきましたけどね。
「なに、戻ってきてんだよ、テメーは?」
「跡部部長。だから、さっき言ったじゃないですか」
「アーン?」
「親友が危ない目にあったら誰でも体が勝手に動いちゃうものですからって」
「それが・・・」
「仲間でもその気持ちは一緒だと思うんですよね」
私は微笑みながら言う。だって、私はさっき自分ひとりで逃げるのは嫌だった。それならみんなと戦いたいと思ったから。まだ、テニス部のマネージャーになって月日もたっていないけれど、それでも私にとって、この人たちの存在は大きいらしい。本当は認めてたくないけどね。いつのまにか、鳳と日吉も走りよってきていた。
「私だって、仲間なんですから」
そう言えば、みんな呆れた顔で私の方を見ていた、正直、この人たちにこんな顔をされるのは腹立たしいが今はそんな事も言ってられない。倒れていた口裂け女が立ち上がって、こちらに向かって来ようとしているのか構える。
「俺達、激ダサだな」
「そうやなぁ。ちゃんに一本取られたわ」
「・・・ウス」
「クソクソ、こいつらなんかに負けねぇぞ!!」
「俺だって負けないCー!!」
「ったく、こんな奴らに負けてちゃ下克上なんてできませんよ」
「俺だって、やる時はやるってところみせてやります!」
「俺様たちに勝てると思うなんて、浅ましいにもほどがあるぜ」
口裂け女と人体模型なんて、このメンバーにかかったらもう、生きる道は残されてないな。いや、もう死んでるとは思うけど。しかし、そう思わずにはいられない光景が、5分もしないうちに広がっていた。途中、なぜかテニスの技名とかでてきたけど、それは無視する事にした。あれ、確か鳳と宍戸先輩が持ってたラケットとボールは図書室においてきたはずなのにな・・・・
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(2007・08・16)
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