図書室に着けば、先ほどよりもみんな真面目に書籍をあさっているように見えた。しかし、あまり良い本はないのかみんなの顔には少しだけ疲れも見える。一体何時間経ったのかと今さらながら携帯の時刻を見れば、最初にメリーさんから電話がかかって来てからまったく、時間が経ってなかった。
「お、ちゃん。何かみつかったかいな?」
「はい、これです」
私は先ほど手に入れた、日記帳をみんなの前に差し出した。みんな興味津々と言った様子で覗き込んでくる。
「ジロー先輩の机の中にあったんです」
「え、ジローこんなの書いてたのかよ?」
「・・・ガックン、俺こんなの見覚えないよ」
ジロー先輩の言葉にやっぱりと思いつつ、私は日記帳を開いた。人様の日記帳を開くなんてすごくいけない様な気がするけど、だけど、見なくては何も始まらないし。心の中でごめんなさい、と謝りつつページをめくっていく。特にこれと言った事は書かれていない。他愛もない友達と過ごす日々の事が書かれているだけだ。
「なんだ、普通の日記帳じゃなぇかよ」
「そうですね。これと言って変わったことは・・・」
「待って。ここから内容が、おかしい」
あるページを開いたまま、私の手が止まる。
最近おかしなことが多い。今日は、教科書の間に剃刀の刃が挟まっていて指を切ってしまった。もしかして誰かがわざとに教科書に挟んだんだろうか。だけどこんな事されるようなことは覚えにないし・・・とりあえず、私の手違いか何かで挟まったのかもしれないし、気にしないでおこうと思う。
「なん、だよ。これ」
「明らかにイジメだと思いますが」
今日自分の下足箱の中に押しピンを入れているところを目撃してしまった。同じクラスメイトの女子だった。私はすぐその場に隠れたおかげで、見つかる事はなかったけど、なんであの子達が私にこんな事をするんだろうか。理由は分からないけど、悲しくて帰り道泣いてしまった。
あの子達についに呼び出されてしまった。私を見ているとムカつくらしい。くだらない、と思いつつ殴られている間は何も出来なかった。だけど、あの子が来てくれたからどうにか助かった。本当にありがとう。
あの子が最近、私を避けるようになった。どんなに苛められていてもあの子がいたから頑張れたのに。明日、勇気を出してちゃんと聞こうと思う。
「なんや、あの子って?」
「さぁ?この日記帳の持ち主の親友じゃないでしょうか?」
「だけど、避けるようになったってあるぜ?」
宍戸先輩の言葉にみんな考え込んでいる様子だった。私も考えつつ、次のページに手を伸ばす。そして、私達は全員次のページを開いた瞬間、息をのんだ。
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない
「恐ぇぇぇぇぇ!!!」
「岳人、うるさいで」
「だって、これ気持ち悪ぃだろ!」
「血文字ではないようですけどね」
「日吉、冷静に分析しないでよ」
私も思わず固まる。確かに日吉の言うとおり、ただの赤いペンで書かれているようだけど、それでもこんなにノート一面に赤い文字で書かれると恐い。
「それにしても何を許さないんだよ?」
「・・・・を許さない」
「は・・・って、私ですか?!ちょ、私ジロー先輩に何かしました?!」
急にジロー先輩が私を許さないなんていうから、今までジロー先輩に何かしてしまったのかと考える。いや、しかし私の記憶ではジロー先輩に何かした覚えはまったくもってない。むしろ、私に謝って欲しい事なら星の数くらいあるんですけど・・・って、今はそんな事考えてる場合じゃなかったよね。それにしても、私ジロー先輩に何かしたっけ?
「、違う。ここにお前の名前があるんだ」
「日吉、何言ってんの、私の名前なんてあるわけ・・・・・って、あるし!!」
日吉に指差されたところを見るとそこにはしっかりと赤い文字で書かれ、その後には許さないの文字があった。だけど、私はこの日記帳を書く人物に覚えはないし、おかしい。なんでここに私の名前があるんだろう。
「私、こんな人、知らないですよ?!」
「本当かよ?何か覚えとかねぇの?」
「だから、ありませんよ!!」
私が半ば焦って言えば、隣にいた日吉がため息をついて、岳人先輩の方を向いていった。
「向日さん、がいじめをするような人間だと思ってるんですか?」
日吉がそう言うと、岳人先輩は
「あっ、それもそうだな」
思った以上に簡単に、頷いた。
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(2007・08・15)
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