平凡な日々

〜非凡な日常T・小話〜









なんだか、杏ちゃんのようすがおかしい今日この頃。

一体、どうしたんだろうか、なんて聞けるわけもなく俺は教室の端から女子と楽しそうに会話している杏ちゃんを見ていた。



別に元気がないとかそういうことではなく、

いつも以上にただ機嫌が良いようにみえるだけだから別に気にすることでもないのだろうけど、




やっぱり相手は好きな子のことだ。


気にするな、と言う方が無理な話があるだろう。




うんうん、だよな。普通気になるよな。


だから、俺はストーカーとかじゃ決してないよな。








「ストーカー」



「しんじ〜!!俺は別にそんなつもりじゃねぇ!」






「え、神尾自分で気づいてなかったの?さっきから、ずっと杏ちゃんの方見てたんだけど。

やだなー、俺ストーカーと友達なのか。みんなになんて言えば良いんだよ。

それもストーカーとか、根暗なやつと友達だったなんて自分で自分が信じられないよ。
まったく、本当嫌になっちゃうね。







俺は今、お前と友達なことを後悔してるところだ








ボソボソと呟く深司の言葉に俺はため息をついた。お前に俺の気持ちなんて分かんねぇだろうな!

俺がこんなに杏ちゃんのことで悩んでるって言うのに、ストーカーだなんて失礼な。




……まぁ、確かにずっと見ていたような気がしないこともないけど
、ってあれ、これをストーカーって言うのか?!







「どうしたの、アキラくん?」



「あ、あ、あ、あ、杏ちゃん?!」



「ストーカーの道を
「な、なんでもないよ!!(コラァ、深司テメー!)」




「そう、なら良かったんだけど」






そう言ってにっこりと微笑む杏ちゃん。

これはもしかしなくても心配してもらえた?!

と喜びに浸りながらもう少し杏ちゃんと話がしたいと思った俺は思いきって聞いてみることにした。





いや、会話したいっていうのも理由にあるけど、

半分くらいはただ単にここまで杏ちゃんが機嫌を良くする理由が気になったからだ。




……だけど、もしもここで彼氏ができたなんて言われたら俺ってどうすれば良いんだ?!



って、いやいや、まさか杏ちゃんに限って、な!ないよな?!ないよね?!できてたら、俺……!










「ねぇ、深司くん、アキラくんが何かどこか行ってる……漢字変換これであってる?



「いや、逝ってるのほうだと思う」




「えっと、じゃあ、逝ってるみたいなんだけど、どうしたの?」




「いつものこと」







こそこそと深司と杏ちゃんが話しているのを見て、俺はハッと我に戻った。

落ち着け、落ち着くんだ。今のはそうだ、少しリズムに乗りすぎて、酔ってしまったようなものなんだ。





とりあえず、リズムを落ち着かせて俺は杏ちゃんのほうを見て、呼吸を整える。








「杏ちゃん、最近機嫌良いよね?なんか、良いことでもあった……?」




「えっ?!アキラくんにも分かったの?」







・ ・ ・ ・ ・ 死 亡 確 定 







俺の言葉に杏ちゃんは少しだけ顔を赤らめると嬉しそうに笑った。




これはつまり、そういうことなんだろう。

きっと、杏ちゃんにはもう決まった人がいて、俺は、俺は、ただの邪魔者でしかないんだ……!









「ちょっと、神尾妄想するなら別のところでしてくれない?気持ち悪い上にうざったいんだけど。

それに、まだ確定的なこと言ったわけじゃないんだから、勝手に決め付けて勝手に落ち込むのやめたら。

あー、やだやだ、これだから被害妄想が酷い奴は嫌いなんだよ。自分を被害者に見立てて何が楽しんだか」






「お兄ちゃんにもバレちゃったのよね。最近機嫌が良いこと。そんなに私って顔にでやすいのかしら?」




「橘さんは、もう知ってるんだ」




「えぇ、だって一番最初に言ったんだから」







その橘さんが何も言わなかったということはそれだけの男なんだろう。絶対に、跡部のような奴らじゃないことは確かだ。

もう杏ちゃんは俺の手が届かないところに行ったんだ







「それで、何があったの?」



「ふふ、この前ねストテニ場で絡まれたときに助けてくれた人がいるんだけど、実はその人と今日会うの。」





「ふ〜ん。あぁ、また神尾勘違いして。ちゃんと最後まで話を聞かないから駄目なんだよなー。

まぁ、神尾の場合は最後まで聞くの前に最初から聞いてないんだろうけど。

それに今だってどうせ、変な勘違いしながら被害者ぶってるんだろうし。」






「そうだ。今日は部活もないし、深司くんもアキラくんも一緒に行かない?

お兄ちゃんにも言ったんだけど、お兄ちゃんも一緒に行くらしいから」






「うわー、面倒くさいけどでもストテニ場に行くんなら行っても良いかもな。それにしても橘さんも一緒にって「絶対行く!」」








そうだ、男神尾アキラ。まだ会ってもない相手に負けを認めることなんてできやしない。



これは自分の目で確かめてやらなくては!

……だけど、もし俺よりもかっこ良くて完璧な男だったらどうしようか、という気持ちも大いにある。





杏ちゃんは「じゃあ、放課後ね」という言葉を残し、女子達が集まっている中心へとかえっていった。






「……深司、俺どうすれば良いと思う?」



「ちゃんと話を聞くことから始めれば?」













 




(2008・05・28)


不動峰で日常な会話。ヒロインが出てこない時点で夢小説じゃない…OTL