平凡な日々
〜非凡な日常T・1〜
いつのものように部活が終わっても帰ろうとしない部員達にいささか(って言うかカナリだよ!)イライラが募っていた。
部活が終わったんなら早く帰ろよ、と言いたいのは山々なんだけど、
その中には宍戸先輩とか、岳人先輩とか、日吉とか………
その、うん、まぁ、他にも滝先輩とか、鳳とかもいるからさすがにそんな事は言えるわけも無い(特に最後の2人)
これが、忍足先輩だけだったらきっと言ってるに決まっているのに、と思えばため息が一つ零れた。
「そう言えば、もうすぐテストだな」
「がっくん、赤点とらんようにな」
「クソクソ、うるせーぞ、侑士!」
岳人先輩の一言に、私はもうすぐテストだったと言うことを思い出した。
確か、テニス部だけはテスト前は3日前からじゃないと休みにならないはず(うわ、憂鬱だ・・・・・)
他の部活は1週間前には休みになるのに、テストが始まる寸前までこき使われるなんて、
とてもじゃないけど、テストに対するやる気というものも自然となくなってしまうじゃないか。
「ふふ、それで皆テスト対策は大丈夫なの?」
微笑みながら滝先輩がみんなに聞く。
その質問に一番最初に答えたのは跡部部長だった(こういうときこの人、でしゃばりたがるよな)
「アーン、そんなの俺様には「別に跡部には聞いてないよ?」」
一刀両断・・・・・・!
微笑みながら跡部部長の台詞を遮った滝先輩。
きっと、これが他の人だったら跡部部長も何か言い返したに違いないだろう。
だけど相手は滝先輩。さすがの跡部部長も今回は、敵が悪かったようだ。
グッと唇を噛み締め、それ以上は何も言わなかった(跡部部長も少しは学んだらしい)(滝先輩には喧嘩を売ってはならないと言う事を)
少しだけ滝先輩に対して尊敬の念を覚えながら、私は周りを見渡した。
跡部部長は聞いた話によると学年一位らしいから、心配する必要なんて微塵もない。
むしろ、学年一位ということに対してなんだかうざったさを感じる。
樺地も全然心配はない。
忍足先輩は、まぁ、色々おかしい所があるが、大丈夫だろう。ほら、だって眼鏡だし(・・・・・・・いや、これは関係ないだろ)
鳳も日吉も心配はない。滝先輩だって、頭良いし・・・・・・と思いながら残る2名に視線をやった。
宍戸先輩と岳人先輩。この二人が心配なのは、私だけなんでしょうか。と思いきや、部員全員の視線が二人へと集まっている
あぁ、良かった。
みんなどうやら考える事は同じらしい。と言うか、私の考えは当たっていたらしい
「問題は、宍戸と岳人だね」
「そうやなぁ。二人とも赤点だけは勘弁してや」
「まったく今回はちゃんと勉強してくださいよ」
「アーン、赤点なんてレギュラーに許されるわけがねぇだろ。とったら、レギュラー降格だ」
「・・・跡部、それはねぇだろ」
「うるせぇ、宍戸。これは監督から命令だ」
「まぁ、二人とも赤点とらなければよいお話ですから、ね?」
「・・・・ウス」
「「・・・・」」
これはきつい。きついぞ、精神攻撃!
何気ない一言、一言のつみかさねは確実に二人のハートをえぐっていること間違いなし、だ!
なんだか可哀想だな、哀れだな、と言う視線を送っていたら岳人先輩と目があった
・・・・・・なんかすっごい嫌な予感がするんだけど、と思っていれば見事私の嫌な予感は大当たりしてしまい、
岳人先輩は口を開いた(あぁ、もうさっさと帰っておけば良かった!)
「だって、「言っておきますが、私そこまで頭悪くないですからね」」
「そ、そんな・・・・・!」
「いや、そんな・・・・・!じゃないですから。勝手に仲間意識持たないで下さいよ」
「、結構きついこと言うな・・・」
宍戸先輩、そんな事言ったって私は本当に頭は悪くないんですよ、と思いながら視線を滝先輩にうつせば
滝先輩が私の代わりに二人に私が頭が悪くない事を説明してくれた。
「本当には頭悪くないんだよ。むしろ、良いほうだから、については赤点の心配はいらないよ」
「へぇ、そうなんや」
感心そうに頷く忍足先輩。そんなに、私は頭が悪そうに見えるんだろう、か?確かに、凄く良いとは言わないけど
(むしろ自分でそんな事言う人が居たら見てみたい・・・・って、目の前にいたわ。
跡部部長はぶっちゃけそんな事思って、自分自身に酔ってそうだ!)
多分、上位に位置するんじゃないかと思う。うん、これでも、授業中はしっかりと先生の話は聞いてるから。
「えー、それなら俺たちに勉強教えてくれよー!」
「あなたには年上のプライドってものはないんですか」
「うるせぇよ日吉!」
「いや、岳人・・・・・俺もさすがにに聞くのは、な?」
「うわっ、宍戸まで何言ってんだよ!お前、俺を裏切るのかよ!」
「裏切るとかそういう問題じゃねぇだろ!」
確かに、後輩に教えてくれ、と頼むのは筋違いだと思いますよ、岳人先輩。
だって、そんな聞かれても勉強もしていないところがわかるわけがない
そんな事にも気づかないんだろうか岳人先輩は。
とりあえず、そんな事にも気づかない岳人先輩の成績が容易に推測できて心の中で合掌した。
「でもさ、宍戸よく考えろよ」
「はぁ?」
岳人先輩の言葉に、宍戸先輩は呆れたような声を漏らす。
よく考えたところで後輩に勉強を教えてもらおうとする先輩の気持ちなんて分かるわけがないのに、
「跡部は、すぐに怒鳴るだろ?それに侑士は……なんか気持ち悪ぃし、」
「えっ、ちょっ、がっくん?!それは酷すぎるやろ!」
「滝は笑顔でこれ解けないとどうなるか分かってるよね?なんて言ってくるしよー、ジローは、寝てるだけだし」
それだったら、に聞くのが一番じゃねぇか。と言う岳人先輩に納得してしまった。
このメンバーの中でまともに勉強教えてくれそうな人なんていない。
忍足先輩への理由は酷い、と思ったりもしたけど事実だからしょうがないし、
それに滝先輩から勉強教えて貰うなんて考えただけで恐い。
一番優しく教えてくれそうに見えて、一番スパルタそうだし、その、うん、あの笑顔が恐い
「って言う事で、勉強教えてくれよ!」
「だーかーら、習ってもいないのに教えられるわけもないでしょうが!!」
「そうだよ、それに、俺が特別に教えてあげるから」
にっこりと微笑みながら言う滝先輩。どうやら先ほどの岳人先輩の言葉に怒っているらしい。
岳人先輩の顔が一気に引きつる。
これはもうスパルタなんて問題じゃなく、きっと岳人先輩はテストを迎える前にご臨終を迎えてしまいそうな勢いだ
多分、と言うか、きっと、この部室にいる全員が岳人先輩に同情した瞬間だろう
「えっ・・・・!?いや、大丈夫だって滝!侑士が教えてくれるって言ってるし?!」
「なっ、一言も俺言ってないやん!!それもさっきがっくん酷い事言っ「アーン?忍足。教えるからには岳人が赤点とったときには覚えて置けよ」」
どんまい、忍足先輩と心の中で思っていないことを思いながら私は部室をあとにした。
騒がしい部室は私が出て行ったことに気づきもしない。部室の外まで聞こえてくる声に、私はハァと息を吐いた。
テスト、か。勉強はあまり好きじゃないけど、テスト勉強はちゃんとしておかないといけないよな……
そう思いながら暗くなった道を歩いていれば、プルルと携帯の音が私の携帯から響いた。
私は通話ボタンを押す。
『あっ!?!俺だけどさ、来週テストがあるんだけど英語教えてく――――ピッ
電話の途中であったけど私は電話を切った。
ごめん、切原。確かに頭の悪いお前は誰かの教えを乞わなければ、赤点は免れないだろう。
でも、私も自分のテストで一杯一杯なんだ。
いや、まぁ、正直な話をするとただ私が切原に勉強を教えるのが面倒くさいというのが本音なんだけど……
再び鳴り出す携帯の着信に私は、携帯の電源を切った。とりあえず、今日は何の教科の勉強をしよう。
晩御飯のメニューを考えながら、頭の片隅でそんな事を考えていた。
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(2008・03・21)
たまには日常の氷帝ホストテニス部で