平凡な日々

〜ご褒美な休日・小話〜

切原視点










ベッドに横になりにメールを打ちながら、俺は今日の出来事を思い返していた。




まさか先日まで嫌いだと思っていた女に、俺からこうしてメールをしているなんてまったく可笑しな話だよな。

まったく自分のことながら、少しだけ笑えてきたのは自分があまりに馬鹿なことに気付いてしまったから、か







「お前だって悲しくないのかよ。吾郎先輩はあんなに美人なのに、自分はなんで不細工なんだって」






これを言ったときのあいつの顔が、忘れられない。




俺はこの時、どうにかしてこの目の前にいる女に嫌な思いをさせたいと思っていた

まるで俺を馬鹿にした態度。

今考えれば、俺が悪いことなんて分かりきった事なんだけど(先輩達が言いたかった事が今、分かった)







だけどあの時の俺はそんな事分からなかった。

だから、が悲しめば良いと思って、簡単な気持ちでこんな一言を言ってしまったんだ







「・・・で?」








と聞き返してきたあいつは、俺が望んでいたものではなくて、無表情だった。怒りも、悲しみも表していない無表情




俺はその顔を見て何も言えなかった。

何か言い返さなければと思っているのに、口からは何も言葉はでてこない。









「自分が吾郎なんかよりよっぽど劣っている事ぐらい子供のときから知ってる」




「な、何言って・・・」




「小さい頃からたくさんの人に言われたし、今さらそんな事言われても悲しくも悔しくも感じないから」








そうははっきりと言い切った。瞳の奥が冷め切っているように感じたのは俺だけじゃないんだろう。

丸井先輩も仁王先輩も少し驚いているように見えた。この時、俺は思ったんだ。






なんて、俺は馬鹿なことをしてしまったんだろう、と






ただ俺の目的は目の前の女を悲しませたいと思っただけ、の行動だった。

だけど、その行動はきっとにとったら最悪の行動だったと思う




だって、俺は馬鹿だからあんまり分からないけど、小さい頃から、俺が言った言葉をたくさん言われてきたなんて、どれだけ嫌なことだったんだろうか






彼女の目に見えたのは、きっと諦め。

比べられるのは、にとったら、もう慣れてしまったこと。







そんなことに慣れるなんてどんなに悲しい事なんだろうな







はぁ、とため息をして自分の未熟さに呆れる。そして、彼女はそんな馬鹿な俺を許した。まさか許して貰えるとは思わなかった。

あの時、あいつやけに焦ってたけど、何かあったのか?と、ふと考える





俺を許してくれた時、青い顔で周りの様子を伺っているようにも見えた










―――プルル







携帯から音楽が聞こえてきて俺は、手を伸ばす。









「もしも
お前、今度絶対ぶっ殺すから覚悟しておけよ







とても女の声とは思えないぐらいの声。その声に俺は背筋にゾクゾクと冷たいものがきたような感じがした

しかし、聞こえてきたのはの声。



そんなこと、さほど気にするわけでもなく、俺は電話をかけて来てくれたことに嬉しさを感じながら、声をだした








「あー、じゃん!!なんだよ、早速電話かけてき
『あんた、他の人たちに私の個人情報ながしたでしょ?』



「あぁ、先輩達が教えてくれっていうからな!・・・・・・それに、幸村部長が笑顔で言ってきたし、」



うわ、それは恐いな・・・・・・・いやいや、ここで負けたら駄目だよ私。お前、だからって教えないでよね!そんなんだから、お前馬鹿なんだよ!




「て、テメーに馬鹿なんて言われたくねぇよ!」




『いや、絶対私の方が頭良いから!あんた、どうせテストでも赤点とかとったことあるんでしょ?!』




「お前、それ誰から聞いたんだよ!も、もしかして、柳先輩から聞いたのか?!」











『って、本当に赤点取ったことあるのかよ!』








だ、騙したなお前!






『・・・・・・・はぁ、もう良いや。切原みたいな馬鹿に何言っても無駄だ』





「なっ、お前
だけど、次はないからね。覚悟しておいてよ











そう告げられると一方的に電話が切られた。

少しだけ舌打ちしたい気分に見舞われたが、俺は舌打ちをせずにただ携帯を見た。




本当にただの女なのに、何故コイツが氷帝のマネージャーをしているんだろう。

いや、ただの女と言うのは違うか。初対面で俺を投げ飛ばすような女、ただの女のわけがねぇ・・・・・!(一瞬、死んだじいちゃんが見えたからな)



それにも可哀想なのかもしれない。あの先輩達に気に入られるなんて、な







幸村部長と仁王先輩、なんか無駄に良い笑顔だったし。柳先輩も、ノート片手に少し嬉しそうだった






「ま、面白いならそれで良いか」





今度、でも誘ってゲーセンでも行くかな。コイツ絶対、負けず嫌いっぽいからきっと上手くなるだろうな

そう思いながら、メールのチェックをしていれば幸村部長からメールが来ていた。



急いでそれを確認すれば







『明日の部活、遅刻したらちょっと東京まで走って貰うから』






青ざめた俺は急いで目覚まし時計の準備をした。
絶対に、絶対に、遅刻するわけにはいかねぇ・・・・!!

って言うか、ちょっと東京って!東京まで行くのにどこがちょっとなんッスか!と抗議の声をあげようにも

幸村部長相手にそんなことできるわけもない。





俺はいつもならゲームをして夜更かしをするものだけど、今日は早く寝ようとゲームをせずに早々と眠りについた














次の日なんとか遅刻せずにすんだ俺を仁王先輩は「面白くないのぉ」と言いながら、不服そうな顔で見ていた

丸井先輩やジャッカル先輩も珍しいものを見るような目で俺を見てきたし、

柳生先輩までもが「おや、切原くん。今日は珍しいですね」なんて言ってくるし、真田部長や柳先輩は

さも当たり前だ、と言う顔で見てくるし。







いや、何だかんだ言って、最後のこの人が一番、俺には衝撃的だった







「なんだ、赤也遅れずに来たんだ?・・・・・折角、パワーアンクル用意してたのに」




「(ひ、酷ぇ・・・・・!)」







なぁ、。俺も氷帝に転校しても良いか、な?


少しだけ立海でやっていける気がしなくなった、ある日のできごと。













 





(2008・01・22)

グダグダだ!