平凡な日々
〜ご褒美な休日・5〜
ゆっくりと流れる時間は、とても心地が良いものだった。そう、これだよ、私が求めてたのは
氷帝のマネージャーとしてこき使われたり、折角の休みだって言うのに立海の人たちに囲まれたり(それも、私が一番好きな二人が居ない状態で)
そんな事があってさ、忘れてたけど、私が一番欲していたのはこういうゆっくりとした時間なんだよ
・・・・・・本気でルドルフへの転校考えようかな
「、紅茶のおかわりはいかがですか?」
「あっ、はい!頂きます!!」
それに、観月さんの入れた紅茶って本当に美味しすぎて大好きなんだよ。
これ飲むためだけにルドルフに転校しても良いって思えるぐらいだしな
いやいや、だけどさー、こうね、部員にかこまれてのんびりってあの部活じゃほとんど味わえない極楽だよな。
うーん、まぁ、でも、あの部活にも良いところあるからな・・・・・・・、ってあるか?
だって、部室で座ってたりしたら、跡部部長に仕事しろと罵られて、
仕方なく仕事しようと思って部誌を書いてたら、忍足先輩にうざったく話しかけられて、
あまりにうざくて無視してたら、忍足先輩が日吉に話しかけて、
日吉から「お前が忍足先輩にかまわないから俺にふられるんじゃないか」と、少しだけ睨まれて
それを無視する日吉に、岳人先輩が何か言って、そして日吉からさりげなく可哀想な子扱いを受けて、
なんだかまるで日吉と岳人先輩がコントしてるみたいだな、なんて思いつつ、
ジロー先輩が眠いーなんて言ってるのが可愛くて、むしろ私も仕事しないで睡眠を貪りたいなーなんて思えば、
滝先輩が綺麗な笑顔をうかべて「ほら、仕事は良いの?」って言ってくるから、
その綺麗な笑顔の裏に何を考えているんだろうな、なんて考えつつ部誌を書いていれば
宍戸先輩に大丈夫か、と声をかけてもらえて、あぁ、もう宍戸先輩私の兄になってくれませんか?
なんて思っていれば、「には吾郎さんがいるでしょ」って何故か声に出していないのに鳳が言ってきて、
だけど何もいえない私に樺地が「頑張って・・・・・ください」って声をかけてくれて
私きっと樺地がいるからあの部活で頑張れてるんだろうな・・・・・・!
「んふっ、本当にはおいしそうに紅茶を飲んでくれますから入れた甲斐がありますよ。」
「それに、ケーキも上手そうに食うからこっちも美味しく感じるんだよなー」
ほら、見てよこの優しい雰囲気。本気でルドルフに来ても良いんじゃないかって思えるのはしかたがない話だよ。
紅茶を飲んで、ケーキを食べて、他愛のない会話を楽しんできっと、氷帝じゃ一生味わえないものだろう。
「いやぁ、ルドルフは良いですねー!本気で転校を考えたいぐらいですよ!」
「クスクス、そんな事考えるぐらい氷帝は大変なの?」
「もう大変とか問題じゃないですよ。まず、部長が可笑しい時点で終わってる部活だと思いますよ」
「・・・・・俺、跡部さんのことこんな風に言う女子初めて見ました」
「えぇ、僕もですよ裕太くん」
引きつった笑みを浮かべる裕太と観月さん。だけど、私としてはあんな人をかっこ良いと思えるほうが何倍も不思議だ。
だって、試合前のあのコール。氷帝の恥さらしにもほどがある。あれのせいで、嫌でも目立ってしまうこっちの身にもなって欲しい
それに「俺様の美技に酔いな」だよ?むしろ、自分自身が酔ってるじゃないですかって感じだし、だけどそれ言ったら怒られる事間違いないし・・・・!
あぁ、もう本当にストレスの溜まる部活だな、あの部活は!(いや、この場合むしろ跡部部長に溜まってるのか?)
「まっ、跡部が部長だからしかたがないだーね!」
「それはそうなんですけど、他の部員も可笑しすぎて、」
「じゃあ、なんでマネージャーやってんだよ?」
「裕太・・・・・・それは私が一番聞きたいよ」
この質問、丸井さんにもされたなー。あ、そういえば今思い出したけど、
私があの部活のマネージャーすることになったのって、飛び蹴りが原因だったけ
はは、さすがにこの人たちに飛び蹴りしているところ見られてマネージャーにさせられました、なんて言えないよね。
絶対に引かれること間違いなしだし、むしろ、飛び蹴りで私をマネージャーにしたなんて
氷帝が可笑しい奴の集団だと思われること間違いないよね!
「しかし、マネージャーならここルドルフのマネージャーをしてもらいたかったものですよ」
「いやいや、私なんかじゃ務まりませんから!」
「そんなことないだーね。と話していると楽しいだーね」
「クスクス、そうだね。色々、と」
「(何だか真っ黒な言葉に聞こえるんですけどー!!)」
木更津さん、やっぱり侮りがたい人かもしれない。きっと私の予感は外れていない。この人、絶対にアッチ属性の人に違いない
この人には気をつけないとなー、と思いつつ時計を見れば時刻は既に5時を過ぎていた。どうやら、思った以上にこの場所が居心地が良すぎて
長居をしてしまったらしい。はは、絶対に氷帝や立海メンバー相手じゃ考えられない事だな・・・・!
「えっと、そろそろ帰らないと、吾郎がうるさいんで帰りますね」
「あぁ、吾郎くん、ですか」
「・・・・・そうだよな、吾郎さんがうるさいよな」
「吾郎とは、一体誰なんだ?」
赤澤さんが首をかしげて、私に聞く。木更津さんも柳沢さんも吾郎を知らないらしく首を同じようにかしげた
良かった、吾郎を知らない人がいて!と少しだけ意気揚々と喜んでいれば、観月さんが苦笑いしながら「青学のマネージャーですよ」と、伝えた
その瞬間に驚く三人。そして、その様子を見ていればどうやら吾郎のことを知っているような感じだった。
おま、吾郎一体何処まで知られてんだよ・・・・・・!
「あぁ、あのマネージャーか。だけど、そいつとどう関係があるのさ?」
「・・・・・私の兄なんです」
「へぇ、兄妹だったのか・・・・・・・って、そんな本当だーね?!」
「えぇ、認めたくない事実です、が」
あぁ、もう本当に私なんであんなのと兄妹しているんだろう!そう思いながらはぁとため息を吐けば観月さんと裕太は
まるで同情するような目で私を見てきた。なんだか、同情されるって言うのも寂しいものがあるものだ。
「じゃあ、俺が送っててやるぜ?」
「あぁ、良いよ。裕太!まだ明るいし大丈夫だから、」
「しかし、女性の一人歩きは危険ですよ」
「いやいや、本当に大丈夫ですから。それに裕太に何かあって、不二先輩から何かされるのも嫌ですしね
(それに私なんかより、よっぽど観月さんが一人歩きしてたほうが危ないよなー。ズボンじゃなくてスカートだったら確実に女に見えるもん)」
不二先輩は裕太をかなり可愛がっているから、裕太に何かあったら私まで呪いの餌食となってしまいかねない。
そんな私はまだ呪いの餌食になんかなりたくもないし、外だってまだ全然暗くないのだから一人で帰れるに決まっている。
「じゃあ、とても楽しかったです!!では、また!」
「えぇ、さようなら」
「また今度ケーキ食いに行こうな!」
「気をつけて帰るんだぞ!」
「(赤澤さんがお兄さんと言うのも中々良いかもしれないなー・・・・・・叫ばれたら困るけど)」
「また遊びにくるだーね!」
「クスクス、いつでも待ってるから」
「あ、はい!」
こうして、私のご褒美の一日は終わりを告げた。本当にご褒美となったのはルドルフの人たちと紅茶を飲んだりしたときだけ
立海の人たちと一緒にいるときはむしろ罰ゲームとしか思えないぐらいだった(あぁ、もう本当に最悪だったよ!あの時間は!拷問かと思ったもん!)
そして家へと帰りつき、晩御飯を食べ終わり後片付けをしているとリビングの方から吾郎が私を呼ぶ声が聞こえた
一体何のようなんだと舌打ちを一つしながら、吾郎の言葉を待てばどうやらまともな用事だったらしい
「おーい、携帯がなってるぞー!」
「あ、うん」
吾郎に言われて、携帯をみればそこにはメールが何通か来ていた。なんだか嫌な予感がするな、と思いつつ携帯を開けば
そのメールはすべて立海の人たちからのメールだった。そんな、まさか、とは思いつつもそこにあるのはまぎれもなくあの人たちの名前
・・・・・・切原の奴、全員に教えたな。
今度万が一の可能性で立海の人たちに会った時は一目散に切原を殴り飛ばしたいと思う。
普通、人に人のアドレスを教えてはいけないなんてこと常識じゃないか
もしかしたら、仁王さんや丸井さんが教えたって言うのも考えられなくもないけど、一応年上の人だから、殴ったりするわけにはいかない
切原め、覚悟しておけと心の中で念じていれば、手の中にある携帯が鳴った。
着信を見てみれば、岳人先輩で私は迷わず着信ボタンを押す
「もしもし?」
『よ!、お前今日はどうだった?跡部から聞いたんだけど、一人だけ休みをもらったらしいな!』
「あぁ、午前中は最悪すぎて泣きそうでしたけど、午後は休みをエンジョイできましたよ」
『(ご、午前中何があったんだよ・・・・!)・・・そっか、それならよかったんだけどさー。今日一日大変だったんだぜ?』
岳人先輩の言葉に、私は首をかしげた。そんな私が一人いなくても別に大変な事なんてないだろう。
確かにマネージャーは私一人しかいないけど、
今日はかわりに一年生の部員の子達がマネージャーの仕事をかわりにやってくれたはず
そこまで困ることはなかったと言うか、むしろ私なんかよりよっぽど仕事をしてくれそうだと思うんだけど、
『ジローがさ、がいないとつまらないとか言って、どっかに昼寝しにいっちゃうしさ』
「ほ、本当ですか!(ジ、ジロー先輩・・・・・!すっごい嬉しいんだけど!)」
『あぁ、本当だぜ。それに侑士もちゃんがおらへんから、やる気がでらんわぁとか言うし』
「それは激しくどうでも良いです」
『そ、そっか(侑士無念・・・・!)』
「・・・・・まぁ、明日からはちゃんと行くんで頑張りますよ」
『おう、俺もがいないとツッコミが少なくなるから困るんだよな!』
「へ、へぇ(う、嬉しくないのはなんでかな!)」
『じゃあ、明日な!』
「はい、また明日。おやすみなさい」
通話が切れれば、私はその場でまたハァと息を吐いた。明日からまたあの部活でこき使われてしまうのか
それも、ツッコミもしなければならないなんて・・・・・もっと、この休みを充実したものにしたかったなぁと、少しだけ
いや、正直かなり後悔した(本当どこかに良いツッコミのできる人いないかな・・・・・私とマネージャー交代して貰いたいよ!)
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(2008・01・03)