平凡な日々


〜非一般論的な花見の考え・小話〜











滝視点











どこも騒がしくなる昼休み。けれど、ここ図書室はまるで別世界の様に静かな空間が広がっている

人もまばらで、仕事と言う仕事がない俺は暇をもてあましていた

近くにあった本を手にとって数ページ読んでみるけれど、そこまで面白いと感じずにすぐにそれを元の場所に戻した











窓の外を見れば、桜は散り始めていて、桃色と言うよりも新緑の色の方が目立ってきている















(・・・・そういえば)














先日、跡部の家で花見をしたらしい。次の日の部活でみんな口々にの料理を褒めていた。

あの舌の肥えたはずの跡部でさえ褒めたんだから、本当になかなかの腕前なんだろう












残念ながら俺はその時用事があって行けなかったけれど














少し食べてみたかったなと思う。

まぁ、別にこれから一生食べれないわけじゃないんだけどね。の事だから頼めば作ってくれるだろう。そう、頼めば














「滝先輩!!」





呼ばれた名前に誰かと思えば、図書室の入り口にはが立っていた

走ってきたのか少し息切れをしているようにも見える










「・・・・・、ここがどこか分かってるの?」













俺が微笑んで言えばはすぐに青ざめた顔で頭を下げた


どんなに人が少ないからと言ってここは図書館。それも図書委員である俺達が騒ぐのはさすがにまずいだろう















「す、すいません!!」






「・・・今日はどうしたの?当番じゃないでしょ?」







「えっと、滝先輩にこれを渡そうと思いまして」














そう言って取り出されたのは綺麗にラッピングされたもの


中に何が入っているかは分からないけれど、目の前につき出されたので思わず手にとってしまった












「なんだい、これ?」









「この前、滝先輩お花見来れなかったんで、作ってきました」















まさか、がここまで気遣いのできる人間だとは思っていなかった


確かにマネージャーとしては今までのマネージャーと比べられないくらい良くやってくれている
















俺達と話すときも全然態度は変わらないし(むしろ、嫌そうだけど)部員一人ひとり平等に扱ってくれる


















「他の人には秘密ですからね。あの人たちにバレたら、うるさくて相手にするの面倒くさいですから」















・・・・すごい言われようだね


確かに向日やらジローあたりはうるさくなりそうだけど。うん、あと忍足がうざくなるだろうね











「ふふ、ありがとう」









「いえ。この前、滝先輩来れなかったから後で何かされるのも嫌だし「何か言ったかな?」














「あはは、お口に合わなかったらゴミ箱に捨ててもかまいませんから!!では、また放課後!!」
















は最後まで言い終わらないうちに走って図書室から出て行った












あんなに図書室では静かにっていったはずなのにね?








時計を見ればそろそろ5時間目が始まる時間。図書室にいた人たちもさっきよりも少なくなっていた

俺も教室に戻らないと次の授業に間に合わない









内緒なんて言われたけど、多分このお菓子を貰った事を俺は誰かに言うだろう



















だって、その方が面白そうだしね













   







(2007・07・07)