平凡な日々


〜非一般論的な花見の考え・3〜
















「お、終わった・・・」









時刻は12時ちょっとすぎ







私の目の前には遂に完成されたお弁当。私の使命はこれにて終わりだと思うと肩の荷がおりた

もし、日吉と忍足先輩が手伝ってくれなかったら、作り終わっていなかったと思う。









その点では日吉と、感謝したくないけど忍足先輩に感謝だ












「じゃあ、これ持って行こか」




「そうですね」








それぞれお弁当を持って、跡部部長が待っていると思われる先ほどの部屋に向う

あぁ、これを渡せば私ははれて自由のみだと思うと、すがすがしい気持ちになった








「ほら、できたでー」










ドアを開ければ、まだまだゲームに熱中しているようすの人たち。
こいつら私がどんだけ苦労して作ったと思ってんだよ

なんて少し殺意を覚えながら、近くのテーブルにお弁当を置くとレギュラー陣はそれに気付いてお弁当の周りに寄ってきた












「うわ、すごいCー!!」







「俺も手伝ったんやで」







「え、これ食えるのかよ」





「がっくん、しばくで?」








「うそうそ、すっげーうまそうじゃん!!」







何がそんなに珍しいのかお弁当を見て騒ぎ出すレギュラー陣。けれど、このお弁当はどこで食べるんだろうか?

もしどこかの公園なんて言われたら、この美形たちの中で私は1人でお弁当を食べなければならない













そんな事になったら私はお花見客の女性に
・・・いや、中には男性もいるかもしれないけど










嫉妬の目で見られ、もしかしたら殺されてしまうかもしれない












「・・・・で、で、では、私の使命はこれで終わったので帰られていただきますね!!」









殺されるなんてまっぴらゴメンだ。高級な食材で作ったお弁当は私にとってもとても魅力的なものだけど

やっぱり自分の命の方が、何倍も私にとっては大切なものに変わりはない











焦って部屋から出て行こうとした。しかしそれは、とても爽やかな声によって止められてしまった













「あ、ごめん。何ていったか聞こえなかったからもう一回言ってもらえるかな?」










声の持ち主の方を見ればそこにはニッコリと微笑む鳳

あれだけ大きい声で言った言葉が聞こえなかったわけが無いと思うんですけど









「だから、えっと「それ以上言ったら命の保障は出来ないけどね?」・・・・・」











さっきと言ってる事ちがう・・・・!!






もう一回言えっていたのは鳳なのに、なんなんだよ、すっごく理不尽じゃないですか!!

当の本人の鳳は我気にせずと言った感じで、宍戸先輩の話しているから、私は何も言えず、睨むしかできない















それに、やっぱり私はまだ死にたくないんだもの














「で、このお弁当どこで食べるんですか・・・?」












恐る恐る聞いてみた。もし、どこかの公園だったらそこに着く前に逃げよう






もう何が何でも、鳳の呪いからも逃げ切ってやりますと私は新たな決意を胸に掲げていたのに

返ってきた言葉は私が思っても見なかった言葉だった












「何言ってんだよ、。ここに決まってんだろ?」











さも当然と言う風に岳人先輩は言ったけれど、私そんなこと聞いてないんだから知るわけないんですよね

それもここって言う事は跡部部長の家で食べるってことで花見ではないと思うんだけど










「準備はもうしてある」










跡部部長のその一言に疑問を抱えた私達は跡部部長の部屋を後にした




































跡部部長についていった先には、とてつもなく広い庭

確かに大きな家だと思っていたけれど、まさかここまで大きいとは、まったく持って世の中は不公平だ

性格がどんなのでも一応美形でこんなに金持ちなんて神様は跡部部長を贔屓してるんじゃないだろうか



















もうあれだ、世の中の不細工男に謝ってください跡部部長


だってこんなの世の中の不細工が可哀想すぎるとおもうんですよ













そんな事を考えながら跡部部長について行くとピンク色をした花びらが私の目の前を舞った

何かと思って視線を前に移せば、その先には満開に咲く桜が数本
















「着いたぜ」





「今年も綺麗に咲いたんだな」





「今年もって、宍戸さん来た事あるんですか?」





「あぁ、去年も俺達で花見したんだぜ」












先輩達の話に少しだけ耳を傾けながら、私の意識は綺麗に咲いた桜へとうつっていた

目の前にそびえたつ桜の花を見ていると、なんだか今日はここに来て良かったと思えた










!!」







「あ、ジロー先輩」






「あとべん家の桜は綺麗でしょ?滝もこれたら良かったのにね」









「そうですね。滝先輩は花が良く似合いますから、すっごく綺麗だったと思いますよ」











確かに私は美形はあんまり好きじゃないけれど、綺麗な人は嫌いになれないみたいだ。
むしろ好きだ

滝先輩に対してもマネージャーになる前は憧れていたような気がする。今となってはそんな事、少しも思っていないけれど














「おい、ー、ジロー!!弁当食べようぜ!!」











私とジロー先輩は岳人先輩に呼ばれて桜の木のしたに敷かれたレジャーシートの方へと向った












「じゃあ、いっただきまーす!!」













岳人先輩の声を先頭に、みんなそれぞれいただきますなんて言いながらお弁当に手をつけていく

跡部部長も小さい声で「いただきます」なんて言うから、少し可笑しかった(跡部部長ってあまり言わなさそうだからね!!









「おいC〜!!」





「うわぁ、美味しいですね。宍戸さん!!」





「あぁ」





「ふん。思ったよりはやるじゃなぇか、なぁ、樺地?」






「ウス」













そりゃ、良い食材使ってんだから不味いわけないでしょ






なんて卑屈な事を思ったけれど、みんなの評判は思ったよりも好評なようで私は誰にも気付かれないようにホッと息をはいた

それに、自分で作った料理を褒められるのは心なしか気分が良いというか正直嬉しかった



















































空が茜色にそまる中、私は再び自分の家の前へと降り立った。








お母さん、お父さん、私は無事悪魔達の晩餐会から帰ってくることが出来ました

私が家へと帰ることが出来た感動に浸りながら家の中に入ると吾郎がリビングから走ってきた









それもあまりにも嬉しそうな顔をしながら来るもんだから、寒気が私の体を駆け巡る

そんな私を無視して吾郎は口を開いた















〜、お花見行かない?」












あぁ、私の休日はとことんついていないらしい










  









(2007・07・04)