平凡な日々
〜非一般的な花見の考え・1〜
鳥のさえずりが聞こえてくる、すがすがしい朝。いつもは騒がしい家も今日は静かであった
そんな静かな家の中、吾郎が朝から部活でいない幸せをかみ締めながら私はゆっくりと眠りについていた
は ず だ っ た ん で す ! !
〜♪〜♪
先ほどから聞こえてくる携帯の着メロ。今日は部活も休みだからアラームも設定していないはずである
だから自然と誰からかの電話がかかってきていることになるのだが、はっきりと言ってとりたくない
この着メロが吾郎でないのは確かなんだけれど、とてもじゃない、嫌な予感がする
最近のできごとのせいで、嫌な予感がした時には必ずと言ってよいほど的中している
それが分かっているのに、自分から携帯を手に取るほど私は馬鹿ではない
しかしさすがにここまで鳴っていて、りりんだったりした日には私に明日の命はない
そう思った私は重い体を起こし枕の上にある、未だになり続けている携帯を手に取りひらいた
画面を見た私はそこにある名前に固まる
着信:跡部部長
・・・・よーし、見なかったことにしよ★(激汗
携帯を再び枕の上に置けば着メロがやんだ。ホッと息をついたのもつかの間、今度は家の電話が鳴る
この流れで行くと跡部部長がかけてきている可能性が高いななんて考えていると、
〜♪〜♪
携帯の着メロがながれだした
手にとって見れば、忍足先輩からの着信で、私は迷わず電源ボタンを押して切ってやりました
出たくないという私の気持ちに気付かないのか、またも鳴り出す携帯
もう誰であろうとでないと心に決めて画面を見れば
着信:岳人先輩
ピッ
「はい、もしもしです」
『あっ、?』
さっきの覚悟はどこにやら、普通に携帯でちゃいましたよ!!
いや、でも跡部部長と忍足先輩はどうでも良い・・・なんてことありませんが、
岳人先輩からの電話はとらないといけないような気がするからしょうがない
なんてたってツッコミ担当だし、何気に私の中では美形なのに普通の人ランキングで上位に位置している
「今日は何かご用ですか?」
『テメー、俺様からの電話にはでねぇくせに向日からかかって来たら、即でやがったのはどういうことだ?』
『酷いやん、ちゃん!!俺ん時、電話切ったやろ?!』
「・・・・・」
岳人先輩、次会った時覚えておいて下さいね?
岳人先輩に対してわきあがる殺意をなんとかおさえながら近くにあった時計を見た。現在朝9時少しすぎ。
あんた達、朝の早くからなにやってるんですか
まさか、今日は実は練習日だったのかと思ったけれど昨日、確かに跡部部長は今日は休みだと言ったはず
なのにこんな朝早くからいつもと代わり映えしないメンバーの声が携帯の向こうから聞こえてくるのは何でなんでしょう?
やっぱり腐っていても仮にも氷帝テニス部レギュラー陣
自主練にでも励んでいるのかと期待してしまった私が馬鹿だった
「それで、今日はどういったご用件ですか?」
『今なみんなでって、滝はおらんのやけど花見をしようって事で跡部ん家におるんや』
「へぇー」
って、テニスやってる訳じゃないんですね
いや、分ってましたよ。この人たちが集まってるんだから大したことはしてないんだろうと思ってはいましたけどね!!
だけど期待してしまうのが人間ってものだと思うんですよ
『花見言うたら、弁当やろ?やけ、ちゃんに作ってもらおうと思ってな?』
「・・・はっ?」
あまりに突然すぎる忍足先輩の言葉に呆れた声しか出ない。なんで弁当=私なんだろうか
この人たち、本当に頭大丈夫なんでしょうか?と少し心配になってしまったのが分ったのか、ご丁寧に忍足先輩は説明をしてくれた
『この前、弁当作ってくれる言うたやん(平凡な部活初日・4話参照)。自分覚えてないんか?』
覚えてない以前の問題ですよ。私そんなこと一言も言ってませんから・・・!!(涙
この人たちの頭の中ではどれだけ都合の良いような変換がされているのかと思ったら悲しくなった
やっぱり私には美形の考えていることは分らないみたいですよ。まぁ、分りたくもないですけど
『迎えを10分後によこすから、それに乗って来い』
「えっ、ちょっと、私まだブチッ!! ツーツー
「切れてる・・・」
通話のきれた携帯を片手に自分の姿を見れば、着替えているはずもなくパジャマ姿のまま
迎えに来る人には事情を話して帰ってもらうことにしよう・・・・
だって、私行くとか一言も言ってませんしね!
****
10分前の私はこれからここに来るであろう人には帰ってもらおうと思っていたけれど
、あの跡部部長を相手にうまくいくのは思えなかったため
一応の準備だけはした。ってか、迎えをよこすって
あんたなんで私の家を知ってんだよ・・・・!!
やっぱり私にプライバシーってものはないんですね
あはは、と自嘲地味に笑っているとキキーと音を立てて黒塗りの車が止まった
後ろのドアが開いたと思ったら、そこから出てきたのは私服に身をつつんだ鳳
高そうな車に驚く私をよそに、鳳は朝から爽やかな笑みを浮かべている
「おはよう、」
「お・・は、よう」
「まさか本当に10分で準備するなんて、とても女の子とは思えないね」
あれ、これってキレても良いんでしょうか?
確かに女の子には朝の準備やら色々かかるとは思いますけど、そんな言い方しなくても良いと思うんですけど。
まぁ、相も変わらず笑顔でいる鳳にはそんな命知らずなこと言えませんけどね
「じゃあ、行こうか」
そう言って、手をさしだす鳳。その姿はまるで姫を迎えに来た王子様のようなんだけれど残念ながら私は姫というガラじゃないし、
それにここから連れていかれるところは華やかな舞踏会なんかじゃない
よく言って、悪魔達の晩餐会と言った所だろう
「悪魔って誰のこと?」
「・・・・・」
私は車の中から自分の家を見つめる。どうか戻ってこられますようにと祈らずにはいられなかった
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(2007・06・11)