平凡な日々
〜お届けモノを届けましょう・3〜
さすがに外国人少年には悪いことをしてしまったと思った私はワカメには目もくれず、外国人少年のほうに近付いた
打ったところをさすりながら立ちあがる外国人少年に私は頭をさげる
「巻き込むつもりはなかったんですがすいませんでした」
恐る恐る頭を上げれば、外国人少年は特に怒った様子は見られなかった
怒られると思っていた私は驚いて少し目を見開くと外国人少年は苦笑じみに言った
「いや、気にするな」
「・・・・・・」
なんて優しい人なんだろう・・・・!!
巻き添えをくらったと言うのにこんな簡単に許してくれるなんてこんな人、現在の世の中じゃ探してでてくるもんじゃない
そんな人を私は巻き添えにしてしまうなんて!!
自分は本当に巻き添えにしてはいけない人を巻き添えにしてしまったらしい
そう例えるなら、宍戸先輩を巻き込んでしまうような感じである
テニスコートを見渡せばはさっきよりは沈黙がなくなった
けれど聞こえてくる言葉はほとんど私を罵倒するものばかりで特に気になるわけではないけれど、気分が良くなるものでもない
あぁ、さっさと帰りたいな・・・(遠い目
三回目のチャレンジだ!!と書類を柳生さんに渡して早く帰ろうと思い、歩き出そうとした。
もちろん外国人少年に頭を下げることも忘れない
外国人少年の爽やか笑顔を見届け振り返って歩き出した瞬間、後ろから呼び止められた
「待てよ」
誰の声なんて聞くまでもないけれど、その声の人物はかなりご立腹のようだ
立ち止まりワカメのほうを向けば、立ち上がって私の方を思いっきり睨んでいた
どんなに睨まれてもちっとも怖いなんて感じない
「なんですか」
私は眉をひそめながら、ワカメの目をはっきりと見る
そんな私の態度に更にムカついたのかワカメの睨みが強くなって、再びテニスコートが静かになる
他の部員もこちらが気になるのか、動いていた手を止めてこちらに注目しているようだった。
見てないで、お前ら練習しろよ
「テメー、謝る相手が違うだろ」
謝る相手が違う?こいつは何を言っているんだろう
私がワカメに謝ってもらうことはあるかもしれないけれど、私がワカメに謝ることなんて一つもない
柳生さんも外国人少年も本当に良い人なのに、同じ立海でこうも違うものなんて、
「いえ、全然間違ってませんよ」
思いっきり笑顔で言ってやればワカメの顔が歪んだのが分かった
ワカメが何か言おうとしたがそれは、ある人の登場によって遮られる
「そうじゃの、悪いのは赤也じゃ」
いきなり後ろから聞こえてきた独特の話し方の声。私は驚いて、後ろを振り向いた
今さっきまでいなかった銀髪を後ろで結んだ少年がそこにはいて
銀髪少年は少しずつ私に近付き、何をするかと思えば私の肩に手を置いた
その瞬間、テニスコートからの罵声が強まったのは言うまでもないですよね?(激笑顔
「俺はこの子の方が全然可愛いと思うぜよ」
何 言 っ て ん だ 、 こ の 人 ?
私の耳がおかしいのかと思ったが、ワカメも同様驚いた顔をしていたので多分聞き間違いではないと思う
それに周りの罵声も一層大きなものになって、聞き間違いであって欲しいと切実に思った
「何言ってるんッスか、仁王先輩」
まったくもって、ワカメの言うとおりですよ。
ワカメと同じ気持ちというのはとても気に入らないが、ここは同感だ。と言うか、
この場にいるほとんどの人が同じ事を思っているんじゃないかと思う
私が吾郎より可愛いなんて事、絶対にありえる訳がないんだから
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ワカメの言葉に銀髪少年は口端を上げた
「俺にはそんな趣味ないからのぉ」
「そんな趣味?・・・どういう意味ッスか?」
ワカメ少年は銀髪少年の言葉の意味が分からなかったのか首をかしげる
もちろん私にも銀髪少年の言葉の意味が分からない
「やはり仁王も分かっていたんだな」
これまた美形さんの登場ですか?
次に現れた美形さんは眼を閉じたまま話していました
世の中いろんな人がいるんだなって改めて思い知らされた気がします
「柳くん、どういう意味ですか?」
「俺らにも教えろよ」
先ほどまで固まっていた柳生さんと赤髪少年が柳と言われるひとに問いかける
柳さんは持っていたノートを開くと私の方を向いた。
なにやらその行動が乾先輩のようだったのは私の勘違いだと言うことにしておきたいと思う
「。氷帝学園中等部2年、男子テニス部マネージャー。
家族構成は母、父、兄の4人家族だが現在、両親は海外出張中のため兄と2人暮らし」
あ は は 、 勘 違 い じ ゃ な か っ た ら し い で す ね ★ (涙
日本には個人情報保護法っていう法律ありましたよね?あぁ、美形にはそんなもの通用しないんですか・・・・
固まる私をよそに肩に手を置いたままの銀髪少年は面白そうに周りを見ていた
「それがどうかしたんだよ?」
赤髪少年が首をかしげながら聞く。確かに私の個人情報から何が分かると言うのだろうか
「今ので気付かんからブンちゃんはお馬鹿さんなんじゃよ」
「ブンちゃんって呼ぶなって言ってるだろぃ?!」
「見てみんしゃい。柳生は気付いたみたいじゃ」
銀髪少年に言われて柳生さんを見れば、吾郎の方を驚いて見ていた。
口がパクパクしていて、その姿はまるで金魚のようだった
それにしても、何故柳生さんはあんな驚いた様子で吾郎の方を見ているんだろう
その理由は先ほどの柳さんの言葉をもう一度思い出してみれば、すぐにわかった
「家族構成は母、父、兄の4人家族だが現在、両親は海外出張中のため兄と2人暮らし」
柳さんは吾郎が男だと言うことを知っているんだ
そして柳生さんは今の言葉で私と吾郎が姉妹でないことに気付いたんだ
「どうしたんッスか、柳生先輩?先輩の方を見て」
まだ真実に気付かないワカメ
柳生さんはずれた眼鏡をかけ直しながら、まだ信じられないと言った顔をしていた
吾郎は自分がなんで驚いた顔で見られているのに気付いているらしく、柳さんのほうを見て口を開いた
「の事をそこまで知っているってことは俺のこともしってるんだろ?」
吾郎が面白そうに笑いながら言った
その様子にワカメや、赤髪少年、外国人少年は驚いた様子だった
確かに、先ほどまであれほど大人しい様子だった女の子が俺なんて言ったら誰でも驚くと思う
柳さんは吾郎の言葉に、違うページを開くと吾郎の方を見て言った
「吾郎。青春学園3年。男子テニス部マネージャー。趣味は・・・・・女装」
柳さんの一言にその場の空気が変わる。吾郎が男だと気付いていなかった3人が目を見開いて吾郎を見た
いや、その3人だけじゃない。テニスコートに居たすべての人が吾郎に注目している
「違うよ!!女装は趣味じゃなくて・・・・・似合うから着てるだけ」
そんな事誰も聞いてねぇよ!!
と、心の中でつっこむもアイツには何を言っても通じないのは分かっているのであえて口にはださない
周りを見渡せば何とも言えない空気に包まれていて、私は頭を抱えてうな垂れた
「先輩って、お、お、男だったんッスか?!」
今まで黙っていたワカメが叫ぶ。
その顔は本当に驚いている様子で、もしかしたらこのワカメは本当に吾郎のことを好きになっていたりしたんだろうか?
そうだとしたら吾郎の妹としてワカメに悪いことをしたような気がした。
好きになった女の子が実は男だったなんて、一生のトラウマになるに違いない
あ、でも、りりんだったら「愛に性別なんて関係ないわ!!」なんて言いそうだ
それだったらお詫びと言っては何だけど、協力しないこともないよ、ワカメ
ワカメに聞かれた吾郎は満面の笑みで答える。私はそれを呆れた様子で見ていた
「おー、俺は正真正銘男だぞ!!ここで脱いで「死ね」――――ガンッ!!
吾郎がセーラー服を本気でこんなところで脱ごうとしたので私は吾郎の腹に思いっきり蹴りを入れた
地面に崩れ落ちる吾郎を横目で見ながら、早くこの書類を渡してしまいたいのにとため息をついた
ワカメ、恋の相談ならのってあげない事もないよ・・・・
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(2007・05・22)