平凡な日々
〜お届けモノを届けましょう・2〜
地図があったおかげかなんとか迷わずに立海までやってくることが出来ました。
さすが自分と褒めたのは内緒ですが、問題はここからです
テニスコートまでの地図はないし、
実際こんなにでかい学校とは思ってもみなかった私はテニスコートまでの道はわかりません。
電話で誰かに聞こうと思うけどもなんだか恥ずかしいというか、あの人たちのことだから絶対からかわれるに決まってる
さすがにそれは嫌だと思った私は何も出来ずにその場に立ち尽くしていた
このまま帰ってしまおうかという考えを何とか抑える。しかし他校に制服でいるのは恥ずかしいもので
はぁ、というため息しかでてこない
「どうかなされましたか?」
「えっ?」
なにやら後ろから話しかけられたと思って見てみると眼鏡の奥が見えない人が立ってた
まるで乾先輩みたいな眼鏡なのに、乾先輩と違って全然普通の人に見えるのはなんでなんだろう
その人の服装を見る限りどこかの部活に所属していると思われた。
オレンジのジャージがとても印象的だというか、目立つ
「いえ、何か困っているようだったのですが、違いましたか?」
私はここまで優しい人を今まで見たことがありません
子供の時、知らない人にはついて行ってはいけないと散々言われてきましたが
この人ならついて行って良いと思います
「えっと、テニスコートまで行きたいんですけど、テニスコートの場所が分からなくて」
「そうだったのですか。もし良かったら私が案内いたしましょうか」
「そ、そんな悪いですから!!教えてもらったら一人で行けますよ」
「気にしないで下さい。私もテニスコートに向う途中でしたから」
立 海 最 高 ! !
その4文字が私の頭をかすめる。だって、こんなよい人氷帝ではいませんでしたよ?
よい人と信じてた滝先輩も実際は魔王だったし
今となっては良い人だった滝先輩が良い思い出だと思います
その後私は丁寧にテニスコートまで案内してもらえた
この心優しい人は柳生さんと言って、テニス部らしい。
見た目では全然テニス部に見えなかったのでその事実には少し驚いたが、それ以上に驚いたのは女子の視線である。
殺気に満ちた眼で私を見ているのはただの勘違いですよね?
確かに、柳生さんはカッコよいし優しいからモテるとは思ったけれど
ここまで殺意をもって睨まれるとは思っていませんでした
さすがに女子の視線に顔が青ざめているた私に柳生さんは心優しい声をかけてくれたりしました
けれども、こんなよい人にあなたのファンらしき人たちに呪われそうですなんて言えないです
「いえ、何もないです」
「それなら良いのですが・・・」
心配してくれた柳生さんになんだか悪いことをしてしまった。
なんでこんな所に来てまで女子の視線に苦しまなくちゃならないんだろう。
まだ氷帝なら鳳や滝先輩が色々してくれるんですけどね
さすがにここまでは呪いの力は届かないのか、私が耐えるしかこの視線から逃れるすべがない
「さぁ、着きましたよ」
柳生さんが指差した先には氷帝よりは少ないけれど女子に囲まれたテニスコート
こんな光景を見ると、やはりここでもテニス部員は美形が多いのだろうかと考えてしまう
まぁ、それでも書類を渡せばすぐに帰れば良いだけだ
そんな事を考えつつ柳生さんの後ろに続いてテニスコートの中に入ると後ろから女子の声が聞こえる
「何、あの子。他校生のくせに」
「不細工が調子にのってんじゃないわよ」
貴 方 達 自 分 の 顔 鏡 で 見 た こ と あ り ま す か ?
思わず出そうになる一言をおさえて前を見すえる。女子の歓声の中たくさんの部員が練習に励んでいる様子は圧巻だった。
さすが強豪校と言われるだけあって練習も厳しそうだ・・・・・・って、アレ?
青学の制服を来た子がいるぞ?
思わず見間違いかと思って、目をこすって確かめるがテニスコートの奥に青学の制服を着た子は確かにいる
3人の部員の影になってあまり見えないけれど、なんとなく嫌な予感がする。もう、これは柳生さんに書類をまかせて帰ってしまおう
幸いなことに向こうの人たちは私の存在に気付いてないようだし、と思って私は柳生さんを呼び止めようとした
「あ、あの柳生さ「ー!!」」
なんで気づくんだよ・・・!!
なんとか涙が出そうになるのをおさえつつ隣を見ると、柳生さんが不思議そうな顔で私と声の持ち主を見ているのを見ていた
声の持ち主はこちらに向ってきているようだったので私はなるべくそちらの方を見ないようにした
「お知り合いですか?」
ここで否定できたらどんなに良かっただろうか
けれども、吾郎はもうすぐ傍まで来ていてその後ろには先ほど吾郎を囲んでいたと思われる3人組までもがこちらに向っている
逃げ場がないというのはこういう事を言うのだろう
私が柳生さんの質問に答えられずにオロオロしていると、吾郎が私と柳生さんの目の前まで来ていた
吾郎はニッコリと笑うと少し乱れた髪の毛を直しつつ、
「あら、偶然ね」
本当に偶然なのだろうかと思ったけれどあえて口には出さなかった。
吾郎はあきらかに女の子を演じている様子で、絶対コイツ楽しんでるよと思ったけれど
私は巻き込まれないうちにに早く帰りたい
書類を渡してしまおうと再び柳生さんに声をかけようとした
しかし、それは走ってきた少年の1人によって阻まれる
「先輩!!どうしたんッスか、急に?」
息をきらせながら吾郎に近付くワカメ少年(命名)。吾郎のことを先輩呼びなところを聞くと私の同い年だとおもう
その後ろには、外国人らしき人と、赤い髪の少年がいた
ワカメ少年の質問に吾郎は微笑みながら答える
「うふふ、この子私の妹なの」
吾郎が言った瞬間、驚いた様子で4人が見てきた。私と吾郎が姉妹・・・じゃなくて、
兄弟なんてだれも思っていなかったんだろう
特にワカメ少年は信じられないといった顔で私を見てきて、その視線が他の3人よりキツくて思わず殴りたくなった
だが流石に初対面の人を殴る勇気を私は持ち合せていない
「本当ッスか?」
そう言ってさらにジロジロと私を見てくるワカメ少年。なんだか感じが悪い。殴っちゃ駄目かな?
「全然似てないッスね」
まるで馬鹿にするように言うワカメに私は頭に血が上るのは自分でも分かった。
確かに、自分でも吾郎とは天と地の違いだってことは分かっているが
自分で思うのと、他人に言われるのではわけが違う。
それも会って間もないこんなワカメ野郎に笑いながら言われるなんて
「切原君、失礼ですよ」
「だって本当の事じゃないですか?」
「おい、赤也!!」
外国人の人がワカメの肩に手を乗せて止めようとするがコイツの口はとまらない
「そんな事言ってジャッカル先輩も先輩の方が可愛いって思いません?」
もう、我慢できるわけがない。私はそれほど心は広くないんだ
「・・・・の、」
「何?なんか言いたいことでもあるわけ?」
「このワカメ野郎がっ!!」
私はワカメの襟元を掴むとそのまま投げた
「「うわっ!!」」
近くにいた外国人少年も巻き添えに少しはなれたところまで飛ぶ
その瞬間テニスコートを沈黙がつつんだ
柳生さんの眼鏡は僅かに傾き、赤い髪少年の膨らましていたガムはパンッと音を立てて割れる
そんな中、私は未だ倒れたままのワカメを睨みつけたままだった
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(2007・05・09)