平凡な日々
〜お届けモノを届けましょう・1〜
ただ今、私にとっては大切な時間の一つである昼休み。しかし私はお弁当も食べずに音楽室に来ていた
理由はただ一つ。この音楽室の責任者でもある榊監督に昼休みが始まってすぐ放送で呼び出されてしまったから
目の前で悠然とコーヒーを飲む榊監督にちょっとした殺意がめばえるのを何とか抑えつつ、榊監督がコーヒーから口を離すのを待った
「悪いんだが、今日の放課後はこの書類を立海に届けて欲しい」
そう言われて差し出された書類を受け取る。
「・・・・立海ってどこですか?」
「神奈川にある学校だ」
「監督、ここがどこか知っていますか?」
「氷帝学園中等部の音楽室だがそれがどうかしたか?」
いやいや、誰もそんな事聞いてませんよ
ここは東京で、この書類を届けるのは神奈川って
さすがにおつかいにしても遠すぎませんか?
確かにお隣の県ですが、隣といってもかなり距離があると思うんです
なのに私にいかせるなんて、無理といいますが
ぶっちゃけ面倒くさいといいますか
私には荷が大きすぎると思うんですよ
「お断りします」
神奈川に行ってまで書類を届けるぐらいなら、ここでマネージャーをやっている方が多分楽だと思う
・・・・多分だけど
私が断ると思っていなかったのか、榊監督は一瞬驚いた顔をしたけれどすぐにそれを元に戻した
とりあえず、もう教室に帰りたくてたまらなかった私は音楽室からでていこうとしたけれど、それは榊監督の一言で拒まれた
「行ってくれたら、今度休みをやろう」
「行ってきましょう」
思わず即答してしまった。
しかし、マネージャーになってからというもの休みという休みはとれていないし
人間誰だって休息は必要なものなんですよ!!
その言葉に満足したのか榊監督はいつものあのポーズで「行ってよし」と言っていた
何回アレをされても慣れないのはなんでなんだろうか・・・・
教室にもどるとまだお弁当を食べる時間があることに少しだけ感動しつつ、机について鞄からお弁当をだした
1人で食べるのはすこし寂しいけれど、みんなもう食べてしまったようなので仕方がない
私が今日の自信作であるエビフライに食らいつくと、本を読んでいた日吉が話しかけてきた
手に持っている本が今月新作の学校の怪談みたいなので、今度貸してもらおうと思う
「監督、何だったんだ?」
「放課後、立海ってとこまで書類を届けに行けって」
「それって、もしかしてあの立海?」
「あのってどの立海か知らないけど・・・・・って、りりんいつの間にぃぃぃ?!」
「良いな・・・立海」
「え、私のこと無視ですか?」
りりんが私を無視して何か想像しているようだった。いや、あのりりんの顔を見る限り妄想か
「じゃあ、今日の部活は来ないのか?」
「ううん。顔だけはだしておこうと思う」
「そうか」
しかし立海ってどんな学校なんだろうか。とりあえず美形がいないと良いんだけどな・・・・・
ここはやっぱり情報収集ということで日吉にでも聞いておいた方が良いのかもしれない
「ねぇ、日吉。立海ってどんな学校?」
「それには私が答えてあげるわ!!」
私の机の前で胸をはるりりん。私は日吉に聞いたはずなんだけど・・・
と思っても、口に出せないんですよね。私、まだ死にたくありませんから
「立海といえば、氷帝に負けず劣らずのイケメンがそろっている学校なのよ!!
ただのイケメンだけなら私もそこまで気にしなかったんだけど、こう自然とカップリン「りりんさん、もう結構です」」
確かに煩い教室だけれど、りりんがこれ以上言ったら絶対この教室は静かになっていたと思います
りりんが少し不満そうに私の顔を見ていたけれどすぐにチャイムがなってりりんは自分の席に戻って行った
「結局どんな学校なんだよ・・・・」
嘆いた私の言葉が聞こえたのか日吉が先生に聞こえない声で話し出した
「立海は去年の全国優勝校だ。青学とならんで氷帝の一番の敵と言ってもおかしくない」
私、そんなところに1人で乗り込まないといけないらしいです。
なんだか嫌な予感がするのは私だけなんですか?いや、私だけじゃないですよね
****
放課後、レギュラーが既に集まった部室で私はドリンクの準備をしていた
さすがに私がいなくてもドリンクはいるだろうし、少しでも手を抜くと跡部部長がうるさい
準備を終えると私は鞄と書類を持って、部室からでていこうと思い声をかける
「今日は部活私いないんで。ドリンクは冷蔵庫入ってるんで自分達で出して飲んでくださいねー」
「え、ちゃん今日おらんの?!」
「はい。立海に書類を届けに行って来るんで」
「マジで?!じゃあ俺も丸井くんに会いにいくC〜!!」
「悪いんですが、ただでさえ神奈川に行かないといけないのに、
ジロー先輩のお守りは私には無理だと思うんですよね。
そういう訳なのでジロー先輩はここで大人しく部活にでも励んでください」
「お前絶対悪いって思ってねぇだろ」
「そんなことないですよ、岳人先輩・・・・・・多分」
「多分なのかよ!!」
宍戸先輩も良いツッコミをするけれど、岳人先輩も良いツッコミをするなって思う
でも悲しいことにツッコミ担当の人はいつも苦労しているということだろうか
私の言葉にジロー先輩は不満そうな顔をしていたけれど跡部部長が睨みつけると元の場所に戻っていった
跡部部長はそれを見届けると、私のほうに顔を向けた
「お前、立海までいった事あるか」
「ある訳ないじゃないですか。でも地図も貰ったし、大丈夫ですよ」
「迷子になるなよ」
そういうと宍戸先輩は私の頭をガシガシと撫でた。この先輩はすぐ私を子ども扱いするところがあると思う。
けれど、兄がいたらこんな感じだったのかと思うと本気で宍戸先輩に兄になって欲しい
良いな、あんな兄欲しいな・・・・・
いや、私にだって戸籍上は兄がいるはずなんだけどアレを兄と言うのには抵抗があるから
「では、行って来ますね」
力なく声をかけて私は部室から出て行こうドアノブに手をかける
「言っておくが、氷帝の恥になるような事はするなよ」
むしろあなたの存在が恥じゃないんですか跡部部長?
なんて思っていても口には出せませんが
「知らん人に付いていったらあかんで!!」
私は忍足先輩の中で何歳なんでしょうか。言っておきますが、私はあなたみたいな兄は要りませんからね。
「頑張ってこいよ!!」
岳人先輩も忍足先輩の相手頑張ってください
「丸井くんに会ったらサイン貰っておいてね!」
ジロー先輩・・・・私にはそんな恥ずかしいことは出来ませんよ
「こっちのことは心配するなよ」
宍戸先輩、私の兄になってくれませんか?(本気
「来週、図書委員会あるからね」
あ、わかりました滝先輩・・・・って今、それ言わなくてもよくないですかね。
「気をつけてね」
え、なんかちょっと怖いんですけど鳳くん
「・・・・頑張って」
樺地の言葉のおかげで頑張れそうな気がするよ。
「さっさと行った方が良いんじゃないか」
日吉にそういわれて時計を見れば、結構時間が経っていた
ただでさえ神奈川なんて遠いところに行かなければならないのに、このままでは着いた頃には部活も終わってしまうかもしれない
「では、部活頑張ってください」
部室のドアを開けて出て行く。氷帝の門を出るとなぜかため息が漏れた
あぁ、今までの経験上無事に書類を届けられる気がしないのがとても悲しい
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(2007・05・04)