平凡な日々


〜平凡な部活初日・4〜









「へぇ、にこんなことするなんてどこのどいつなの?」








あれ、笑顔が黒いですよ鳳君?

それにどこのどいつって聞かれても、ここにいるわけ・・・・











あ、いたわ


テニスコートの外からものすっごく睨んできています

でも私はあの人たちのことをテニス部に話すつもりはない

私を呼び出すぐらいだから本気でこの変人テニス部のことが好きなんだろう










人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえってよく言うし

私としてはまだ死にたくない。ついでに言うと平穏な毎日を取り戻したい











これはもう辞めさせてもらうしかありませんよね!!(激笑顔












「もうイジメには耐え切れないので
「却下」・・・・・まだ最後まで言い切ってませんよ、滝先輩」




「でも、イジメがなくなればは辞めなくても良いでしょ?」









いや、確かにそうなんですけど









「うん、じゃあ決定!!」







何 が で す か ?







滝先輩1人でどんどん話を進められて私はどうしようもないんですけど

それに他の人たちも神妙な顔をしていて話かけづらいし。吾郎は吾郎で何か考え込んでるし












鳳は鳳ですごい笑顔でニコニコしてるし・・・・










本気で怖いんですけど

あの子達もこの現実を見たほうが良いと思います。いや、むしろ











現実を見ろ(命令形












これは私からのお願いと言うか、アドバイスです

聞いていて損は絶対にありません。うん、あるわけがありませんよ!!

このままこんな変人テニス部に恋をしていても良いことがあるとは思えないんです










私がテニスコートの外にいる女子を見ていると、今まで黙って下を向いていた岳人先輩が顔を上げた









それに気付いて私がテニス部の方に顔を戻せば、岳人先輩の顔は少し怒っているように見える

他の人たちも同様にこちらを見ているが、その人たちも岳人先輩のような顔をしていた





「クソクソ、も女子に呼び出されたんなら俺達に言えよな!!」




「そうやで。岳人のいうとおりや」




「まったく、激ダサだな」




ちゃんが痛い思いするのは嫌だC〜」









先輩達の言葉にちょっとした罪悪感がつのる

まだマネージャーになって初日なのにこんなに心配されるとは思っても見なかった








「俺も・・・嫌です」






「樺 地?!いやでも、樺地のせいじゃないから気にしないで!!」









私が呼び出されたのはほとんど樺地以外のレギュラーのファンらしい

りりんが樺地のファンはみんな大人しい子ばかりだから呼び出しなんかしないって言ってたし










でもレギュラー陣にも非がないことは分かってる

ただファンの人たちが勝手に私を呼び出しただけでレギュラー陣には何の関係も無い












まぁ、ジロー先輩の場合はあきらかにファンの人を煽っているように思えませんけどね!!










に手を出すなんて・・・・
俺潰してくる




「ちょっと待て」




吾郎がポキポキッと指を鳴らしながら、テニスコートの外にいる女子の方へと歩き出していた

この様子を見ると、かなりご立腹の様子である。こうなった吾郎は手に負えないというか、面倒だ






以前、吾郎目当てで近付いた
私が呼び出されたとき吾郎は相手の男を病院送りにしたことがあるのだ









まったくもって思い出すだけでも恐ろしい










「吾郎って言ったか。これは部活の問題だ。お前は手を出すな」








跡部部長が吾郎の肩を掴む。掴まれた瞬間、吾郎は跡部部長を睨みつけるが

特に何もせずに言われた通り大人しく自分の元いた場所に戻っていた








跡部部長、今初めてあなたに感謝したかもしれません






しかし、あの女子達を黙らせる方法なんてあるのだろうか







私には到底あるとは思えないんですけど・・・・








それだけ恋する乙女は怖いんです。だって、あの血走った目を見たら誰だって怖い

実際レギュラー陣は黙ったまま、何やら考え込んでいる様子だし










「跡部さんはちゃんとお前のことを考えてるから、心配するな」








いつの間にか日吉が私の横にまで来ていた。まったくもってこの部活は気配を消すのがうまい奴が多すぎる

日吉の言葉のあと私は少し考え込んで、再び日吉の顔を見る









「分かってるよ。っていうか、自分の敵は自分で潰すことにする」








その言葉に日吉の顔が少し青ざめた様な気がするけど、ここは勘違いだということにしておこう









別にテニス部の人に迷惑をかけないようにとか思っての言葉じゃない








辞めたくてもテニス部を辞めれないと思うし、それなら全力で部員のサポートをしようと思っただけ

マネージャーの癖に部員の練習する時間を減らすなんて駄目マネージャーのお手本だ

不本意になったマネージャーだったとしてもそんなの私の気持ちが許さないし


あと、








少しだけ、本当に少しだけなんだけどこの部活にはいって良かったかも知れないと思ってしまったから











私は近くにあった本当は部長が指示を出すときに使う拡声器を手に取る

みんな何事だと思って私の方を見てくるが、その中で吾郎だけは嬉しそうに笑っているのが見えた





その顔がとてもムカついたのはここだけの話である









「どーも、今日からテニス部マネージャーに嫌々なった2年のです。


私がテニス部のマネージャーになったことに文句のある人はどうぞ言ってきてください。


し か し、文句を言った後何があっても責任は持てませので、そこんところはよろしくお願いします。」












この言葉は私がこれからマネージャーをしていく覚悟のようなもの







テニスコートの外から私を罵倒するような声が聞こえてきたけど、全然気にならなかった

私は言い切ると拡声器を元の場所に置き驚いた顔のテニス部員の方に向きなおすと、頭を下げた











「これからよろしくお願いします」








顔を上げると宍戸先輩におでこを叩かれた。ペシッと軽く音がなる






「あぁ、こちらこそよろしく頼むぜ」






叩かれたおでこを抑えていると、跡部部長が何やら考え込んだ後大きく声をだした






「良く聞け!!今後、テニス部に手を出した奴はどうなるか分かってるんだろうなぁ?



 もちろんマネージャーもだからな









その声にテニスコートの外から叫び声や声とは思えない声が聞こえてきたけれど、跡部部長はそんな言葉に耳を貸さずに

満足そうにしていた。これで本当に呼び出しがなくなるかは分からないけど、不覚にも嬉しいと思ってしまった








!!呼び出されたら俺に言ってね」






鳳が私の目の前でこれまた爽やかな笑顔で言い放った

多分、これから先私は呼び出されることは絶対にないだろう・・・・











ご愁傷様です、女子の皆様。





















気がつけばそろそろ部活が終わる時間になっていた。マネージャー初日なのにあまり仕事をしなかったような気がする

これもすべて吾郎のせいなのだけれど





「あ、じゃあ俺帰るな!!」






「うん、帰れ」






酷っ!!まぁ、帰りにお前の好きなケーキでも買って帰っておくから楽しみにしとけ」








吾郎の言葉に思わず、笑みがこぼれる。私は、というか女の子はほとんどそうだと思うがケーキが大好きなものだ

今日はお風呂に入った後ケーキを食べながらゆっくりと疲れをとろう



私はそう思いながらドリンクのボトルを洗っていなかったことを思い出して、自然とスキップになりそうになるのを抑えながら水場に向った










その場に吾郎を残したまま








「じゃあ、俺も帰ろうっと!!氷帝のみなさん、をよろしく頼むぜ!」



「クソクソ言われなくても分かってるよ!!」



「任せて置いてください」









向日と鳳が吾郎に向って言うのを、吾郎は嬉しそうに見ていた

がここでどう変わっていくかを想像すると嬉しくもあり少し寂しいかもしれない





吾郎は踵を返してテニスコートから出て行こうとする

しかし、こちらに再び顔を向け直すとそこらへんの女子と男子を悩殺するような笑顔で一言だけ言い放った










「あ、でもに手を出したらぶっ飛ばすからね」











そんな笑顔で言うなよ、とそこにいたレギュラー陣は全員(一部除く)思ったらしい























*****









今は部活も終わり着替え終わった私とレギュラー陣は部室にいた

滝先輩が私の手に残る青い痣に湿布を貼って包帯までしてくれている









「あの別にここまで厳重にしなくても良いと思うんですけど」






「女の子なんやから傷が出来たら困るやろ」









隣で私の腕に包帯が巻かれていくのを見ていた忍足先輩が言った









「そうだぜ。親が見たら心配するだろ!!」











「うち親いませんから」








私の言葉に忍足先輩と岳人先輩が固まった。いや、周りにいた人達も気まずそうに顔を伏せている





「がっくん、ちゃんと考えて言わなあかんやろ!!」



「どうします?明らかに今の言葉で傷ついたんじゃないですか」



「忍足も長太郎もあんまり岳人をせめんなよ」



「二人とも向日も悪気があったわけじゃないんだろうし」



「そうだC〜。今はこんなところで言い合いしてる場合じゃないよ!!」



「芥川さんの言うとおりですよ」



「とりあえず、ここは素直に謝っとけ」








しばらくこちらをチラチラ見ながら話していたが、岳人先輩がその中から出てくると私と向かい合った









ゴメンな・・・・俺そんなつもりなくて」









あ、もしかしてうちの親死んだことになってる?









「俺達にできることがあったら何でも言っていいからな」








宍戸先輩は私の頭をポンポンと叩きながら言う。頭を叩かれたことは嫌じゃなくてむしろ心地が良かったのだけれど

なんだか目が優しいと感じるのは私の勘違いではないですか?










「先に言っておきますけど、私の親死んでませんからね」








「「「えっ?!」」」








みんなが驚いた顔をして一斉にこちらを見る。

全員、私の親が死んでいると思ったらしい。
お願いですから、うちの親を勝手に殺さないで下さい








「なんや。てっきりちゃんの言い方からして亡くなっとるかと思うたわ」




「私、一回もうちの親が死んでるなんて言ってませんけど」




「お前の言い方は意味深だったんだよ!!」




「俺ら激ダサだな・・・」









さっきまでの暗い雰囲気はいつの間にかなくなって、明るい雰囲気が戻ってきた

やっぱりこの人たちに暗い雰囲気は合わないと思う









「家には私と吾郎二人だけしかいつもいませんから」




「お前の親はどこ行ってんだ?」



「外国に出張中ですよ、跡部部長」



「じゃあ、家事とかどうしてんだよ」
















「吾郎がすると思いますか?」










私の言葉にみんな一瞬考え込むがすぐに納得したような顔になった



もしも吾郎が料理を作るようなことがあれば破壊的な味を生み出し、掃除をすれば確実に何かを壊す

そんな奴に私が家事を任せられるわけがない









「じゃあ、今度お弁当作ってきてー」








「何でそういうことになるんですか?」










ジロー先輩は欠伸をしながら、言ってきた。

私がジロー先輩にお弁当を作るなんて、なんでそんな面倒くさいことしなくちゃいけないんですか?







「ジローだけずりぃよ!!、俺にもよろしくな?!」






「え、いや、まだ作るとか言ってな・・・・」














の作るお弁当か・・・美味しそうだね」



「うん、俺も楽しみしてるよ。頑張ってね、









この2人から言われたらNOとか言えませんよね★(激笑顔



はぁ、と私のため息は誰にも聞かれることなくこの騒がしい部室の中で消えていった
















さっき少しでもこの部活に入ってよかったなんて思った私を殴り飛ばしてやりたくなった














  










ブラスザを閉じてお戻り下さい
(2007・04・29)