昨日の夜、初めて山本から電話が来た(あれー、私いつ電話番号山本に教えたっけ?)私にプライバシーなんてないんだと改めて感じながら、聞いていれば山本はいつもと調子が違い少しだけ焦ったようすで「ツナが入院した」と言う事を私に言った。流石に、その言葉に私は驚きを隠せなかった。だって、まさかツナが入院なんて思いもしなかったし。山本の話によれば怪我は大した事ないらしいんだけどやっぱり心配になった私は土曜日でも普通にあった部活が終わった後にツナが入院していると聞いた病院前まで来ていた。受付で、看護師さんに部屋の番号を聞いて、その部屋へと向う。












ドアの横にある名前をしっかりと確かめればそこには確かに「沢田綱吉」とあった








ドアをコンコンとノックすれば、中からツナの声で「はーい?」って聞こえてきた。聞こえてきた声は元気そうだと思い、少しだけ安心してドアと開けてみれば片足を包帯でグルグル巻きにしたツナがベッドの上にいた。これのどこが大した事ないんだろうと思ったけど、ツナことだ。周りに心配をかけないようにそういったんだと思う(本当に優しいよな・・・!!だけどあんな奴らに気を使う必要はないと思うよ!!








?!ど、どうしてここに」








私の突然の訪問にビックリしているらしいツナは驚きの声をあげる。「山本から聞いた」と言えば、あぁ、山本からねなんて言って納得したような顔になっていた。私はとりあえずドアを閉めてベッドの近くにあった椅子に腰をおろす。改めてツナの怪我の状態を見れば、本当に生きているのが不思議に思えるくらいの怪我だった。この怪我の原因を少しだけ考えて見れば、周りの奴らのせいなんだろうということは容易に分かった。だって、ツナが自らこんな怪我をするようなことをするとはとてもじゃないけど思えない。












「で、なんでそんな怪我してるわけ?」





「それは・・・」










分かりきっていることだけど、あえて聞いたのは少ない可能性にかけてのことだったのだ。しかし、かえって来た言葉はやっぱり思ったとおりの言葉だった(これも悲しい現実だ・・・)ツナの話によればディーノさんとの特訓で亀(なんで亀?)が襲ってきて、その場には結構人がいたのにツナだけ怪我したらしい。あまりにもツナが哀れで泣きそうになったのは私だけじゃないだろう。それにしても、ディーノさんとツナって結構仲が良かったんだね。まぁ、前回の話で弟分なんていってたから、仲が良いとは思っていなかったわけでもないんだけど、











ツナも大変だね・・・










私が自嘲地味に言えばツナも、あははと少しだけ笑い、私達は顔を合わせるとはぁ、と二人同時にため息をついた(私も、ツナも本当についていない人間だ)少しの間、私はツナとの会話を楽しんだ。私の本心としてはもっとここにいてツナと話していたいとも思ったけれど、このままツナのところに居たら何か面倒くさい嫌な予感もしないこともないので帰ることにした。そんな酷いことを考えていた私をツナは笑顔で見送ってくれて、さすがの私も良心がいたんで心の中で謝っておいた。










ごめんね、ツナ。
でも私も部活で疲れてるから厄介なことに巻き込まれたくないんだよ









あまりに身勝手な思いかもしれないけど、それでも私は自分が一番可愛い(顔じゃないよ。自分の身のことだからね!)ツナの病室をでて病院内を歩けば、病院の中は思っていたよりも活気に溢れていた。って言うか看護師さんがそわそわしていて病院内を駆け巡っているのである。看護師さんたちがどこに向っているか分からないけれど、みんな同じ方向に向っているようで少し怖かった(そう、あれは獲物を狙うような目だ)それに、その看護師さんは全員、私とすれ違い私が先ほど出てきたツナの病室の方へと向っていってたのである。









「・・・・(いや、そんなツナの病室に行ってるわけじゃないよね?)」










だけど、看護師さんたちの姿にますます嫌な予感が募った。そんな慌しい病院からいち早く逃げ出したいと思った私は、少しだけ急ぎ足で病院の外へと出た。外にでれば思っていたよりも暑い日差しが私を照りつけ、私は思わず目を細める。少し歩きながらふとツナがいたと思われる病室を見上げる(ツナ、大丈夫かな・・・・)しかし、その瞬間、その近くの窓から何かが投げ出された。ちなみに両目の視力はどちらとも1.5。それでも何が投げ出されたのか特定できずに、何が投げ出されたんだろうと疑問に思ば、ドンッ!!と言う大きな音が響いた。そして、大きな爆風が私を襲った。













ギャー!!!




「えっ?!(今の声って、)」











大きな爆風の中聞こえてきた声に、私は少しだけ血の気が引く。いや、だって、今の声、ま、まさかとは思うけれどツナの悲鳴も聞こえたような気がしないこともないんだけど。私の考えでいけば、多分というか今の爆発音は絶対ツナに関係があると思う(って言うか、確実に関係がある!)ツナが心配なんだけど、私としては面倒くさいことには巻き込まれたくない。だけど、今のツナって怪我してたしこれ以上怪我が悪化してしまったらどうしようと不安になりいつの間にか私の足は先ほどの叫び声がしたと思われるほうに向っていた。










途中看護師さんに注意されたけれど、そんなことは気にもせず走る







いくつかの階段をのぼり、先ほど何かが投げ出された窓を目指す。曲がり角を曲がった瞬間、倒れているツナが目に入った。乱れる息を整えながらツナにかけより、声をかける。「おーい、ツナー?大丈夫・・・?」当たり前かもしれないが、返ってくる言葉は一言もない。それにしても、倒れているツナボロボロで、ただでさえ怪我をしていてボロボロだった姿には、また怪我が増えていた。一体どうしてこんな目にあっているんだろうと思っていたけれど、その謎はすぐに解けた












「ひ、雲雀さん(なんでこんなところに雲雀さんが・・・?!)」











開いたドアに顔をあげれば、私の目の前にあらわれたのは黒いパジャマを着た雲雀さんだった。なんでこんなところにいるんだよと思いながら、ツナのほうにもう一度視線をもどす(これはもしかしなくても雲雀さんにやられたんだろうか・・・・?)もし、このボロボロのツナが雲雀さんのせいだとしたら、やばい。今すぐここから立ち去らないと私が第二の被害者になってしまう可能性も十分にある。しかし、こんなボロボロのツナを置いていくなんて事私にはできるのか?













「・・・・・(あ、うん、普通に出来る気がする)」












ツナには本当に申し訳ない気持ちで一杯なのだけど、やっぱり自分の身が一番可愛い。よし、そうと決まれば逃げる準備をしなければと心に決めるて、立ち上がろうとするも、雲雀さんの一言で私は動けなくなってしまった「今、退屈なんだけど、僕とゲームをしないかい?」 その言葉に、私の顔は一気にひきつる。この男、一体何を言い出すんだ!しかし、相手は雲雀さんで、私は何も言いかえすことができない。やっと出た声は、言い返すことには程遠い言葉だった。












「ゲ、ゲームですか?(ゲームなんて、雲雀さんに似合わないのに・・・・!)」


「そう。音を立てたら君の負け」











「(あぁ、やっぱり普通のゲームじゃないんですね)」











雲雀さんが普通のゲームをするわけがないとは思っていたけど、このゲームはあきらかに理不尽だ。だって、音を立てたら負けだなんて、こっちあきらかに不利じゃないか。それにこれはもしかしなくても、私の負け=殺される?という方程式が成り立つ事は目の前で横たわるボロボロなツナを見ればすぐに分かる。私はそんなゲームに参加するなんて絶対嫌だ。ここはなんとかして断らなくては(私のこれからの未来の為にも・・・・!)それにツナは未だ倒れたままだし、ここに寝かせたままでは治るものも治らない。私はそう決意し、雲雀さんをまっすぐに見据えた。









「す、すみませんが、断らせて
はゲーム参加決定だぞ」





「(ち く し ょ ー)」 








声のしたほうを見れば、そこには思ったとおり、リボーンがいた。なんでここにリボーンがいるんだよ!!ツナがいるからなんとなくいる様な気はしてたけど、こんなタイミングで出てこなくてもいいのに!!
と思いつつ、リボーンと目があえば、リボーンはニヤリと口端をあげた。え、もしかしてわざとこのタイミングで登場したとかじゃないよね?それだったら、私ちょっと泣きそうなんだけど(まぁ、リボーンの事だからわざとこのタイミングで登場したことは分かりきっている)










「ほ、ほらでもツナをこのままにしてたら治るものも治らな
「俺が見ておくから気にするな」










リボーンが看たらもっとツナは悪くなるんじゃないかと思ったけれど、そんなこと私には言う事ができなかった。なぜなら、リボーンは言い終わらないうちに、ツナの首もとのえりを掴んでズルズルと連れて行ってしまったから。シーンと静まり返る廊下に、私は自分の頬を一筋の汗が流れるのを感じた。これは、多分冷や汗なんだろう。その場に残される私。









「じゃあ、ゲーム開始」








雲雀さんは楽しそうに言うと、再び病室の中に戻って行った。開いたままのドアを見ると、これは私も入れって事なんだと思うけど・・・・(正直はいりたくねぇ!!)しかし、入らないわけにもいかず、私は病室に足を踏み入れる。病室の中は普通の病室よりも全然広くて、テーブルやソファー、そしてテレビまであった。なんとなく病院と雲雀さんの関係が垣間見えたような気がして悲しくなる。










「(一体、この人はどこまで勢力を伸ばしているんだろう)」









病室の入り口付近で立ち尽くす私を気にもせず、ベッドの中に入る雲雀さん。これならゲームも楽勝なんじゃないかと、ホッと息を吐くが、それは雲雀さんの一言で見事に打ち崩されてしまう。









「僕は寝るから静かにしておいて。あと、僕は葉の落ちる音でも起きるから」







どんだけ静かにしておけば良いんだよ!!と、つっこもうとしても既に雲雀さんは寝る体勢に入っていて私はため息をすることも許されなかった。とりあえずベッドの横にある椅子に腰をおろし頭を抱える。なんで私ここに来たんだろうなんて今さら思ってももう遅い。それに、私はツナのお見舞いにきたつもりだったのに、まさか雲雀さんが入院しているなんて思いもしなかった(本当、なんでこの人なんでこんなところにいるんだよ・・・・!)見る限り、怪我はないし、何か病気なんだろうか。そう言えば、この前会った時、確かに顔色は真っ青だったような気しないこともない。










「(いや、でも雲雀さんに勝てる菌なんてあるんだなぁ)」








雲雀さんでも病気はするのかと、思い私は自分の今の状況を見て、少し泣きそうになった。こんな理不尽なゲームの参加。それに、音を立てるわけにも行かず座ったままただただ時がたつのを待っているのはすごく暇だった。何もすることがないと言うか、何も出来ないと言った方が正しい私は目を閉じている雲雀さんの顔をジッと見て観察する。改めて見るとやっぱり綺麗な顔つきをしていて顔だけならかなりの人にモテると思う。うん、まぁ、顔だけならね。










だけど、性格がアレだから好きになった人も大変なんだろうなぁ










はは、好きな人からなら殴られても良いとか思えるのかな。私にはそんな趣味がないから全然分からないけどさ!私だったら、もっと普通な人を好きになりたい。見た目だって美形じゃなくて、全然普通の人でかまわないから(私だって普通の顔だし人のこと言えないからなぁ)ふとそんな事を思いながら顔を上げて窓の外を見れば、澄み切った青い空。その大きな青空にツナの事を思い出した。今頃、ツナはちゃんと治療をうけて大人しく眠ることが出来ているのか。心配がないわけじゃない。だけど大丈夫だと信じておこう。と言うか、そうじゃないとツナのために犠牲になった私が可哀想すぎる(結局、私は自分のことだけ・・・・・)











「(なんか、眠たくなってきたかも)」








考えて見れば今日も朝から部活だったし、昨晩は借りていた本を読んでいたせいで寝た時間はかなり遅かった。それに、まさかこんな事に巻き込まれるとは思っていなかったし。寝ちゃいけないと自分に言い聞かせるも、瞼はだんだんと下におりてきて。まどろむ視界に、何も考えられなくなった私はいつの間にか寝いってしまっていた。雲雀さんに、咬み殺されてしまうと分かっていても、この眠気には勝てはしなかった。



























目を開けると、雲雀さんが寝ていてた場所はものけのからで病室は赤く染まっていた。はて、私は一体なんでここにいるんだろうと考えてみればすぐに答えがでてきて、さぁと血の気が遠のいていくのが分かる恐る恐る人の気配のする窓際を見れば、雲雀さんが夕焼けをバックに立っていた。その姿はすごく絵になるなぁなんて感心してしまったけれど、思い出せ自分(ここはどこだ?そして私は何をしていた)あぁ、これって普通にヤヴァイ。私、殺されるかもしれない。ダラダラと流れる冷や汗をぬぐうことも叶わず、体も動かない










「・・・よく寝れるよね」




「(あれ?)」











思ったよりも優しい雲雀さんの声で肩の力が降りる(雲雀さんってこんな声もだせるんだ、)顔を上げて、もう一度雲雀さんを見れば、呆れたような顔をして私を見ていた。これはもしかして殺されずにすむんだろうかと言う考えが頭に浮かぶ。少しだけそんな期待をしながら、私は雲雀さんが言葉をつむぐのをまった。










「まぁ、音は立てなかったから別に良いんだけど」




「(よ く や っ た 自 分 ・ ・ ・ ・ !)」









寝言を言わなかった自分に乾杯、と心の中で自分に拍手を送る。本当によくやった自分。やったよ、自分。と、とにかく自分を自画自賛していると雲雀さんは私から視線をはずして、テーブルにのった白い箱を見つめた。私もその視線の先を見つめる。私がこの病室に入ったときにはそんな箱はなかったはずなのに、いつの間にかその白い箱は存在していた「それ、食べて良いよ」雲雀さんの言葉に、私はもう一度雲雀さんを見る。












「(今、もしかして、食べて良いって言った?)」










雲雀さんの言葉の真意がつかめなくて、雲雀さんを見るけれど、雲雀さんは窓の外に視線を移してこちらを見ようとはしない。私はどうしようかと迷った挙句、テーブルまで歩いていってその箱をあけた。
白い箱の中に入っていたのは数々の色とりどりのケーキたちで、私は思わずそのケーキに目を奪われる(これはケーキは最近、噂のカフェの限定ケーキだ・・・!)私も幾度となく、このケーキを買うために奮闘したが今まで買えたためしがない。踊る気持ちをおさえつつ、雲雀さんのほうを見る。










「あの、これ食べて良いんですか・・・?」









何も言わない。と、言うことは食べて良いということだろうと自己解釈。白い箱の横にはお皿とフォークも都合よく置いてあって、私は一つのケーキを手に取ると、皿の上に置いた。一口大に切ったケーキを口の中にへといれる。口に入れた瞬間に、口いっぱいに生クリームの甘さが広がる。









「・・・・っ!!(美味しすぎるんですけど!)」






やっぱりなかなか手に入らないケーキだけあって、その味は本当に美味しい。あまりの美味しさに感動しつつ、雲雀さんを見れば、先ほどのまま外を見ていた。一体、外に何かあるのだろうか。「何?」私が見ていることに気付いたのか雲雀さんは私のほうに顔を向けた。窓から零れる、夕日の明かりが雲雀さんを照らして、その姿は幻想的だった(やっぱり、顔だけは良いんだよね。顔だけは、)









「えっと、雲雀さんは食べないんですか?」



「・・・後で食べるよ」









雲雀さんの言葉をきいて私は再び食べ始める(後で食べるってことは、甘いもの大丈夫なのかなぁ)この先、こんなケーキもしかしたら食べる機会がないかもしれないと思った私は、一口一口をかみ締めながら食べる。美味しいケーキを目の前に私の顔は自然と綻び笑顔になってしまう。ケーキを食べているだけなのに笑顔になっているなんて他人から見たら少し、気持ち悪いかもしれないが、この場には雲雀さんしかいないから大丈夫だろう(雲雀さんに気持ち悪いなんて思われても、別にどうってことないし)それにしても誰がこのケーキを買ってきたんだろうもしかして私が寝ている間にお見舞いの人が来て、置いていったのかと思って雲雀さんを見る










その瞬間、雲雀さんと目が合った










えっ、私なんか変な事したっけ?いやいや、美味しくケーキを頂いているだけだ。私はそう自分に言い聞かせてなんとか平常心を保ち、またケーキへと視線をうつす。さっき目が会った時の雲雀さんの瞳がいつも以上にっていうか、あんな顔初めてみたんですけどって言うぐらい優しくて、私は少し驚いた(あんな顔してたら、まさかトンファーなんて振り回す人に見えないのに)最後の一口を口に含めば幸せな気分がまた広がった。











「ご馳走様でした」




「別に。僕一人じゃ食べきれないから」









立ち上がって頭を下げる。理不尽なゲームには強制的に参加させられたが、結果的には良かった気がする。あんなケーキ滅多に食べれるものじゃないし。私は雲雀さんに別れの言葉を言いつつ、病室のドアに手をかける「ねぇ、」ドアにかけようとした手が止まり、声のするほうへと体を向ける。あぁ、初めて雲雀さんに名前を呼ばれた(まぁ、名字なんだけど)だけど、なんだか私自身を認められたような気がして、嬉しくなった。別に、雲雀さんに認められようと認められないでも、関係が無いはずなのに。









「・・・気をつけて帰りなよ」




「へっ?」









まさか雲雀さんからこんなこと言われるとは思ってもみなかった。って言うか、あんなゲームに参加させていたくせに気をつけてっておかしいと思うのだけど。だけど、心配してもらえていると言う事は、悪い気がしないもので、私は雲雀さんを見ると自然と笑顔になった。













「あ、はい。雲雀さんもお体には気をつけて」










しかし、病室からでてドアを閉めるとはぁ、と大きなため息が一つ。少し暗くなった窓の外を見つめながら、病院の廊下をあるけば先ほどより静かな廊下に、私は本来の目的だったはずのツナの事を思い出した。リボーンはツナをズルズルと引きずっていったけど、結局ツナはどこに連れていかれたのだろうか。













「ツナ、大丈夫かな」
















  













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(2007・05・27)

加筆修正

(2007・12・01)