この前の休日の夜、犬くん(名前でよんでって言われたので仕方がなく)と六道さんからメールがきた。来た瞬間、思わず携帯を投げようとしてしまったがなんとか自分をおさえてそれは阻止した。自分偉いなって褒めてあげたくなったのはおいていて、なんで私のアドレスを知ってるんだよ?私、自分のアドレス教えた覚えなんてこれっぽっちもないんだけど。そう思いながら、ふと来たメールを見てみたら、そのメールは千種くんからだった。メールにはただ一言「ごめん」と書かれていた。
あぁ、千種くんも大変だな・・・・
そんなこんなで最近携帯のメモリには美形な人のアドレスが結構増えているんですけどね。何故か、いつの間にか獄寺とかのアドレスも入ってるし。あれ、なんで?私いつ獄寺とアドレス交換したっけ?なんて疑問は募るばかりだけど、もうこの際気にしないことにした。
とりあえず、この携帯売ったらいくらかなって考えてしまった自分が無性に悲しくなった。
「(だけど、六道さんのアドレスとか特に高く売れそうだよなぁ・・・・)」
はぁ、と私は一つ深いため息をつきながら開いていた携帯を閉じて(もう、この携帯捨てたいかも)ケーキを買うために人通りの少ない道を歩く。そんな人の少ない中で、私は遠くにとても綺麗な金髪を見つけた。思わずその綺麗な金髪に目が奪われる。こんなところにも外国人なんて来るんだと、感心していれば、その金髪の人がだんだんと近付いてきて、こけた(うわっ、派手なこけ方!)私はあまりの良いこけっぷりに思わず拍手を送ろうとしてしまった。
「だ、大丈夫ですか?!」
しかし、さすがに拍手を送るわけにはいかず(人として最悪だからね)しばらく呆然と見ているだけだったけど、こけたままの姿があまりにも居た堪れない空気になったので目の前で素晴らしいこけっぷりを見せてくれたお兄さんに声をかけた。
「あ、いや大丈夫だ」
や っ ぱ り 無 視 す れ ば よ か っ た な ★
私の声に顔をあげた金髪のお兄さんを見て私はそう思わずにはいられなかった。だって、顔をあげた金髪のお兄さんはとても綺麗な顔をしていたのだ。なんて自分は学習能力がないんだろう。前にツナを不良から助けた時(2話参照)だって、助けたせいで私はマフィアなんて物騒なものに関わってしまったのに(人を助けるなんて、良い事をしているつもりだったのに)立ち上がろうとしている、金髪お兄さんを見ながら私は、今からでも遅くないんじゃないかって思い体を方向転換しようとしていた。
「お前がだな?」
しかし、かけられた言葉に驚きつつ、金髪お兄さんの方を向きなおす。目の前の金髪お兄さんは金色の髪だけでなく、笑顔もキラキラと光っている(ま、眩しい・・・・!!)何故、この金髪お兄さんは私の名前を知っているのだろう、と嫌な予感をひしひしと感じながら私は口を開く。私の口端は僅かにピクピクと引きつっていた。
「な、なんで私の名前知ってるんですか?」
「だってお前、ツナのファミリーだろ?」
「え・・・?」
今、ツナのファミリーとか聞こえてきたんですけど。も、も、も、もしかして、この金髪さんもマフィア関係の人って言い出すんじゃありませんよね?!お願いだから違ってくださいと心の中で祈るも、それは神様には届かなかったらしい「オレはキャバッローネファミリー10代目ボス、ディーノだ。よろしくな!!」と、二カッと笑顔で答えるお兄さんに私は苦笑いでしか返す事ができなかった。
子供の時は友達が増えるのが嬉しくてたまらなかったのに、今はだんだんと増えていく知り合いに絶望するしかないってどうなのよ。(・・・・あ、うん、どうにもならないよね)
何故かあの後、私は目の前で優雅にコーヒーを手にするディーノさんに連れられて喫茶店へと来ていた。この喫茶店に来るまでに彼は10回つまづき、その内の2回は豪快にこけていた。本当にこんな人が、えっと、その、何とかファミリー(名前が長くて覚えにくいんだよ!別に私の記憶力がないわけじゃないんだからね!)のボスなんだろうか。だって、今だって優雅にコーヒーを口に含んだと思ったのに、それが思っていたよりも熱かったのかディーノさんは焦って少しコーヒーをこぼした。
「(・・・・・・・・)ディーノさんってボスでしたよね?」
「あぁ、そうだぜ」
「(なのにこんな不器用で良いの?)」
さも当たり前のように言うディーノさん。しかし、この人の不器用さは筋金入りだと感じられて、ボスなのにこんな感じで良いのだろうかと思ってしまう。いや、まぁそんな事言ったらツナもそうなんだろうけどさ。それでも、ちょっとこのディーノさんがボスをつとめる何とかファミリーの将来が気になるって言うか(でも、気になってる時点で自分もそっちの世界に仲間入りしたみたいで嫌だな・・・・)
「で、今日は何か御用なんですか?」
「リボーンの奴がツナのファミリーに新しく入った奴がいるって言うから気になってな」
「(・・・・・気にしないでくださいよ。むしろ、無視してもらってかまいませんから)」
「それにしてもリボーンが言うからどんな奴かと思えば普通なんだな」
そう言って、満面の笑顔を浮かべるディーノさん。この笑顔で喫茶店の中の私以外の女の子は完璧におちた(と思われる)だけど、私は別にこんな笑顔にときめいたりはしない。いや、可愛いとか思ったりもしたけども。私はハァとため息を吐いて、ディーノさんを一瞥しケーキを口に運んだ。(えぇ、普通ですよ。だからマフィアなんてものから抜けさせてください)その言葉は声になることはなかった。
「言っておくけどはやらねぇからな」
「「リ、リボーン?!」」
私は思わずガタッと椅子から立ち上がる。しかし、周りの人があまりに不審そうに私のことを見たので急いで座りなおした(そんな目で見ないでよ・・・・!誰だって普通に驚くだろ?!)ディーノさんも少なからず驚いた様子でリボーンを見ていたのだけれど、リボーンはそんな私とディーノさんを気にもせず近くのウェイトレスにコーヒーを頼んでいた。どれだけ唯我独尊な赤ん坊なんだ。
「何言ってんだよ、リボーン。大事な弟分のファミリーをただ見に来ただけだぜ」
「こいつの力をみたらそんなこと言えないかもな」
「(・・・・・いや、そんなこと存分にいえると思うんだけど)」
普通に考えても分かる事だけど私は一般の人より逃げるのが少し早くて、体が丈夫なだけなごくごく普通の女の子だ。正直、私にはリボーンに誘われた理由も分からないし、私より強い女の子ならそこらへんにいくらでもいると思う。そうだ、なんで私なんだろう。ディーノさんとリボーンはまだ話し込んでいるようだけども、私は1人考え込んだ。だけど考えれば考えるほど私以外の女のこの方が良かったんじゃないだろうか?と思えてきて、
手に取った紅茶はいつのまにか冷めてしまっていた
「おい、」
「え、あ、はい?!」
私が考え込んでいると、いきなりディーノさんが話しかけてきたのでビックリして思わず返す言葉がどもってしまった・・・って、名前呼びかよ!!
しかし、ディーノさんはそんないことお構いなしに私の方をジッと見つけ、私はただただ呆然とディーノさんのほうを見ることしかできない(本当、無駄に良い顔してるよね!)しかし、ディーノさんは突然私の頭に手を伸ばしたと思ったら、そのままガシガシと頭をなでた。私はその行為に目を丸くした。ディーノさんは再びニカッと効果音がつきそうな顔で笑うと、撫でるのをやめて、私の頭の上に手をおいたまま口を開く。
「なんか嫌なことでもあったら俺に言いな」
「・・・・」
私は、思わず言葉を失う。まるで私が不安に思っていたことが分かっていたかのような言葉。そんなディーノさんの気遣いと思える一言に不覚にも泣きそうになってしまった。ディーノさんの今までを見る限り頼もしいところは一つもなかったけれど(だって、たくさんこけるし、コーヒーもろくに飲めてはいなかったのに)、とてもその言葉が嬉しかったのは事実だ。そして、とても頼りになる人に見えて、この人がボスだと言うのに納得ができた。
「ボス、そろそろ時間だぜ」
いつの間に現れたのか、なにやら渋いダンディーなおじ様がディーノさんに話しかけてきた。"ボス"と言っている辺りを聞くと、ディーノさんの部下なんだろう(こんなダンディーなおじ様が部下なんて、一体ディーノさんはいくつなんだよ?)それにしても部下と思われる人が来た瞬間に、ディーノさんの周りの空気が変わった気がした。先ほどまでの穏やかなディーノさんの雰囲気が一気にキリッ引き締まったものに変わったように感じたのだ。
「ロマーリオか。分かった、すぐ行く」
ディーノさんは部下の人に一言声をかける(あのダンディーなおじ様は、ロマーリオさんと言うのか。よし、覚えておこう)ディーノさんが一言かければ、部下の人は喫茶店から出て行ってしまった。私は少しの間ロマーリオさんの後ろ姿を見つめ、ディーノさんのほうを向いた。ディーノさんの顔を見れば、また穏やかな雰囲気に戻っていて少しだけバツが悪そうな顔をしていた。
「悪いな」
「あ、いえ気にしないでください!!」
私の方をみながらディーノさんは申し訳なさそうな顔で言った。時計を見れば結構な時間だったから私も帰ろうと外まで一緒に出ることにしたのだけど、なんと、結局ディーノさんは奢ってくれた上に御土産にと言ってケーキまで買ってくれた(なんて優しい人なんだろう・・・!!)この人はマフィアだと言われても、人としては良い人なんだろう。
べ、別にケーキを買ってもらったからこんな事言ってるわけではない。あの人の持つ雰囲気とか、人間味とかでそう思っただけのことだ。ディーノさんの黒塗りの車(すっごい、マフィアっぽいね!)を見送りつつ、まだその場にいたリボーンに話しかけた
「リボーン。なんかディーノさんって部下がいる時といない時の雰囲気違うくない?」
私は疑問に思っていたことをリボーンに聞くとリボーンはニヤッと笑った。赤ん坊の時からこんな嫌な笑い方するなんて、ろくな大人になれないぞって思ったのはここだけの内緒だ。だって、言ったら絶対に殺されるに決まっている。赤ん坊相手に怯えてるなんて、中学生としてどうなのかとは思うけれど、私はまだ死にたくない。
「アイツは部下がいないと力をはっきできないんだ」
「・・・・・(部下がいないと、力が発揮できないなんて、そんな珍しいこともあるんだな)」
リボーンと分かれた後、ディーノさんに買ってもらったケーキを大切に持ちながら帰りの道を歩いていく。さっきよりも人は減ったけれど、まだまだ明るいからあまり怖くない(もう絶対、夜道を一人で歩かないぜ!)私は道の端を歩いているつもりだったのに人とすれ違う瞬間、肩がぶつかってしまった。いつもならすぐに謝るんだけど、今日はケーキを持っているのでケーキの方が心配で私は急いでケーキが崩れていないか確認してしまった(これが、いけなかったんだ)ケーキが崩れていないことをさっと確かめて、ぶつかった人の方を見る
「・・・・・・」
言葉を失うというのは、まさにこのことを言うんだろう。私が視線を向けた方向には、黒の学ランに風紀の文字の腕章をつけた男がこちらを睨みつけいた。その姿に冷や汗がダラダラと流れる(や、やっべぇ・・・・・!!)謝れ、早く謝れと自分に言い聞かせるが声がなかなか出てこない。
「ふーん、謝罪の言葉もなしなわけ?」
「(あはは、死亡決定・・・?)」
よし、もうこうなったらしょうがない逃げよう。この前とは違い、今日の私は一味違う。今日はこの前動いてくれなかった足も動いてくれそうだ。私はひきつった笑顔のまま走り出そうと足に力を入れ、ガッと体を方向転換して地面を思いっきり蹴った(逃げ切れ、私!!)
「ゲホッ!!」
ちょ、今普通に首が絞まりましたよ?!雲雀さんは私が逃げ出そうとした瞬間、襟元をつかんで私は自分で自分の首を絞めるような結果になってしまった。私はゲホゲホと咳き込みながら、涙目になって雲雀さんを睨みつける。
その顔にはうっすら笑みがうかんでいた(人の首絞めておいて、笑うなんて・・・・!!)私はその笑みに殺意が芽生えるのを覚えながら、言葉を発する。
「な、何するんですか?!」
「何って、僕謝ってもらってないんだけど」
「(それだけで人一人の命の灯を消すつもりかよ・・・・!!)」
私は雲雀さんに怒鳴りつけてやろうと、息をグッと飲む。しかし、よく考えてその言葉を口にする事はやめた。だって、これ以上何か言えば殴られてしまう事はわかりきっていることだ。あぁ、自分はなんて弱い生き物なんだろうと思えど、私はまだ死にたくないのも事実。(あのトンファーでなぐられたら確実に死ぬよ!!)
言葉の変わりに、ハァと一つだけため息をこぼして雲雀さんに向って頭を下げる。「・・・すいませんでした」嫌々ながら謝りの言葉を言う。本当、心にも思っていないことを言うのはなかなか大変なことだ
「謝れば許されると思ってるの?」
「(な ん だ こ の 野 郎 ! !)」
謝っても許してくれないなら、あんなこと言うなよ。なんて思ってても口にはだせない自分に腹がたつ。だけど、謝っても許す気がないのならあんなこと初めから言わないで欲しい。雲雀さんの言ったとおりに謝って殴られるなんてあまりに自分がかわいそうだ。そう思いながら頭をあげて黙ったまま、雲雀さんを見た。
「まぁ、今日は僕の機嫌が良いからゆるしてあげるよ」
機嫌が悪かったら私どうなってたんでしょう・・・って、あ、愚問ですよね!!とりあえず、雲雀さんの機嫌がよかったことは運が良かった事だといえるだろう(雲雀さんに会った事は運がなかったが、)雲雀さんの機嫌が良かった事を神に感謝しつつ、ほっと息をついた。
「で、では、雲雀さん。さようなら」
早くこの場を離れたかった私はなるべく雲雀さんを怒らせないように言う。もしかしたら、何か言われるんではないかとビクビクしていれば雲雀さんの小さい声で「うん」と言う声が聞こえてきた(あ、ありえないんですけど・・・!!)あまりに驚いた為か私はその場から動けずに少しの間、雲雀さんが立ち去った方を見つめた。雲雀さんの顔が心なしか赤みがなくて、まるで病人の顔色の様に見えたのは私の勘違いだろうか。うん、まぁ、雲雀さんが病原菌に負けるわけないしね。
不器用な君達!!
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(2007・05・19)
加筆修正
(2007・10・21)
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