私はただいま並盛中の目の前に来ています。いえ、ちょっと間違えました。正しく言うと並盛中の正門近くの電信柱に隠れています。
かなり少し怪しいですが、これには理由があるんです(そして、その理由は何ともくだらない)はぁ、と自分は何でこんなところに来ているんだろうなんて思っても、もう並中の正門まで来てしまったのだから後悔するのもいささか遅い気がする。
〜〜♪〜♪
「もしもし?」
『お前いつまで十代目を待たせるつもりなんだ!!』
『ご、獄寺くん!!』
電話の向こうで獄寺とツナの声が聞こえる。獄寺叫びすぎだ。私の耳が痛い。まったく耳が悪くなったらどうするんだと思いながら、私は電話の向こうの声に耳をすませた。ちなみにツナとはあの後(思い出したくもない不幸な夜)、ツッコミ担当同士と言うか、はっきり言ってしまえば苦労人同士で意気投合し名前で呼び合っていたりする(ツナはやっぱり良い子だった・・・・!)
『で、今どこなんだよ?』
「並盛中のまん前」
『なら、さっさと来ねぇか!!』
獄寺の質問に正直に答えたのに、何故怒鳴られなければならないんだと思いながらそれは口にしなかった。それに獄寺は、未だ自分が言ってる事がおかしいと言う事に気付いてはいない。だって他校生である私がいるのに並盛中を待ち合わせ場所にすることが間違っている。それなのに、早く来ないかと怒鳴らるなんて筋違いと言ったものだろう。それも並中の屋上って・・・
いけるわけないじゃないか
「無理」
『なんだと、テメー?!』
「いやいや、よく考えよう。まず他校生の私が堂々と並中に入れるわけないじゃん?それにね、正門のところに時代間違っちゃったよ★みたいなリーゼントに学ランの人たちがいるのよ。はっきり言って怖いって言うか、意味が分からないって言うか。そもそもここの制服ってブレザーじゃなかったの?ってそんなことはどうでも良いんだけど、その学ランの人たちみんな顔がおっかないし、そんな中他校の私が通れると思う?はっきり言って無理なんだよ!!」
私はノンブレスで言いきった(少しだけ息がきつい)一回もかまなかった自分を褒めてやりたいぐらいだ。向こうから獄寺の反論する声が聞こえてこないところを見ると納得したらしい。納得するのが遅い気がするけど、まぁ、獄寺は馬鹿だから仕方がない。気付いたならそれはそれで良い方だろう・・・・と思っていたのに
『じゃあ、並中の制服着れば良いんじゃねぇの?』
「(こ の 鬼 畜 山 本 は ! !)」
そんなのコスプレになるじゃないか。私は自分の兄である吾郎とは違ってそんな趣味は無い。
「絶対、嫌だ」
『・・・・・そっか、なら裏から入れると思うから裏に回ってみろよ』
「分かった」
なんで裏から回り込んでまで並中に侵入しないといけないか本気で疑問だけど私は裏門のほうまで回りこんでいた。(結局、私は並中に侵入するしか道は残されていないらしい)裏門のほうは正門に比べて人が少なく明らかに時代錯誤な人は居ないみたいだった。私はホッと安心して息を吐きながら裏門に手をかける。ガシャンと言う音がその場に響く。いくら引っぱっても、押してもその裏門はびくともしない。
「開いてない・・・?」
うん、山本ふざけんなよ?これはもう並中が私の侵入を阻止しているとしか思えないんですけど。って言うか、ほら私が並中に入れないように誰かが手を回してるんだよ。並中が私には入って欲しくないって言ってるんだよ。でも行かないと行かないで獄寺が煩いし(・・・・もう帰りたい)私は裏門に手をかけたまま、辺りを見渡す。先ほどまでちらほらといた人たちは、誰一人といなくなっている。少し見上げて確かめれば、学校の周りを囲う塀は結構低く私でも上れそうな高さである。
私はもう一度辺りを見渡し、塀に手をかけた
先ほど校舎内への侵入に成功した私は生徒の居なくなった校舎内を1人歩いている。待ち合わせ場所は屋上。誰か獄寺に正しい待ち合わせ場所と言う事を教えてやって欲しい。
イタリアでは(先日ツナから獄寺が帰国子女だと言う、どうしようもなくいらない情報を貰った)屋上で待ち合わせをするのが普通なのだろうか?・・・・いやいや、そんな馬鹿な。万国共通で屋上が待ち合わせとなるのは可笑しいだろう。そりゃ、同じ学校ならありえるかもしれない。特に青春中のカップルなんて。だけど、私は他校生で、青春なんてしてもないのに。
あぁ、もう本当獄寺の馬鹿・・・・!
それにどこから屋上に上れば良いかなんて他校生である私が分かるはずがないのだ。とりあえずは上に上っていったらいつか運が良ければ屋上につくことができるだろうとは思って階段を上っているけれど。静かな学校のなかで他校生であるはずの私の足音だけが響いていた
「やぁ」
階段を上がる途中、ふと、私の背後から声が聞こえてきた。それもこの声の人物は私の中で要注意人物、関わりたくないランキング1位の人物のようだ。振り向くべきなのか、このまま無視するべきなのか。もしかしたら私にかけた声ではないのかもしれない。つい先ほどまで私の足音しか響いてなかったとしても(そう言えば、この声の持ち主は足音なんて一切なかった)とりあえずは立ち止まっているけれど、後ろを見て誰かなんて確認する勇気は私は残念ながら持ち合わせてはいない。
「僕に挨拶もないの?咬み殺すよ」
「どうもこんにちは!!(・・・なんて自分は弱い生き物なんだ!)」
予想通りの人物の声に私は振りかえり、急いで挨拶をする。ついでに言うなら、冷や汗たっぷりの笑顔も貼り付けてだ。だって、今挨拶をしなかったら確実に私の命日は今日になっていたはず。階段の下のほうを見ればこちらを見上げる、トンファー男の姿があった。
「なんで他校生である君がこんなところにいるの?」
「えっと、リボーンに呼ばれたんで・・・」
「ふーん、あの赤ん坊がね」
少しだけ考える仕草を見せる、トンファー男。この前の事を思い出し、背筋に嫌な汗が一筋流れるのを感じた。また、ここで殴りかかられたら私は確実に無事ではすまない(・・・恐い!)できる事なら早くこの嫌な空気から解放してください。そして、無事な姿のまま家に帰られてくださいと、心の中で必死に唱える。吸う息が少し、深くなる。あぁ、呼吸困難になりそうな感じだ。いや、むしろもうなっている気がする。
「まぁ、良いや。じゃあ、僕はもう行くよ」
「(神様ありがとうございます!!)」
思わず心の中でガッツポーズを決める。だって、私はこの人はすごく苦手だ。それに、恐い。あと、あの初日の出来事が忘れられないのだ(この人のせいで鞄が・・・!!)あぁ、思い出しただけで少し泣きそうだ。
トンファー男が踵を返したのを見て私はばれないように息を吐いた。先ほどまでの嫌な汗も消えていた。良かったと思いながら、私も階段を上ろうと体勢を元に戻そうとする。しかし、急にトンファー男がこちらを向いた。思わず体が強張る。ジッとトンファー男と視線があう。
「君、名前は?」
「はっ?」
「だから名前を聞いてるんだよ。そんなことも分からないの?」
なんでこの人はこんなにムカつくんだろう。ちょっと私もカチンと来ちゃうよ?それに、いきなり口を開いたと思ったら名前を聞かれるなんて、私は別にこのトンファー男に名前を教えなければならないと言うこともない。はっきりと言ってしまえば、私はコイツに名前なんか教えたくはない。
「ですけど」
ま、ムカついても何も出来ないのが私なんですけどね!!これ以上、鞄潰されたらさすがに困りますし、と泣く泣く私は自分の名前を口に出す。まぁ、これから関わることなんて一切ないはずだから彼の中でこの名前と言うのは何の価値もないものになるはずだ。少し時間が経てば、彼は私の名前はおろか私のことなんてすぐに忘れてくれるだろう。正直、私の顔には特徴と言って良い特徴なんてまったくない。そこらへんにいそうな、普通の平凡な少女だ。
「そう。今日は赤ん坊に免じて見逃してあげるけど、次校内で見かけたら容赦なく咬み殺すからね」
絶対もうこの学校の半径1キロ以内は近付かないことにしよう。そう、校内おろか周辺にも近付かないようにする。一気に顔が青ざめる私を一瞥して、それだけを言い残すとトンファー男は私の視界からいなくなった。構図的には私が上から見下ろしているはずなのに、気分はまるで私の方が見下ろされている気分だった。(自分のチキンハートに乾杯!)
ガチャ、と屋上のドアを開くと爽やかな風が私の横をとおりぬけていった。その風はとても心地よくて私は一瞬自分がどこに来たのかを忘れさせてくれた。しかし、目の前にいる人物達がすぐに現実と言う悲しい事実をつきつけてくる
「おせーんだよ」
「よっ、」
「、大丈夫だった?!」
「(・・・・大丈夫じゃなかったよ)」
獄寺の言葉にカチンとくるが、コイツのしゃべり方はいつもこうなので気にしない。山本は山本で爽やかな風と同じような爽やかな笑顔をうかべ、ツナは心配そうに私の方を気遣ってくれた。
本当にツナって良いやつだ。だけど、全然私は大丈夫じゃなかったのが事実。だって、塀はのぼるはトンファー男に絡まれて大丈夫だと感じる人はこの世の中にいるわけがないと思う。まぁ前者だけなら大丈夫だったと思うけど、問題は後者だ。大丈夫なわけがない
「・・・今日は何か用?」
実は私は今日呼ばれた理由を知らない。昨日、ツナから電話があったと思ったら放課後ここに集合とリボーンに言われた。本当は行きたくなかったけど来ないと殺すぞって脅されたしね!!赤ん坊に脅されるなんて自分としてもおかしいと思うけれど、リボーンの場合は拳銃と言う武器を所有している(初めて見たときは正直、頭が痛くなったよ)それも、それが偽者ではないと言う事はしっかりと証明して見せてくれたのだ。彼は、私を殺す方法を持っている。逆らえるわけがない。
「今日はの入団テストをするぞ」
「うぉぉぉ?!いつの間にここに?!」
「さっきから居たぞ」
「うそですよね!!っていうか、入団テストってなに?!」
「獄寺のダイナマイトを避けろ」
「はっ?!・・・・・って、既に投げてるーー!!!」
いきなりのリボーンの登場と言葉に驚く私を他所に、既に獄寺は私に向ってダイナマイトを投げていた。目の前に広がる、たくさんのダイナマイトに私は再び嫌な汗が流れていくのを感じる。そもそも、私に拒否権ないのだろうか。それに入団テストと言うのが、一体何なのかさえもわからないまま、事が進んで行くなんて理不尽すぎる。言いたことはたくさんある。だけど、今はこの目の前にあるダイナマイトを避ける方が先だ。
「果てろ」
「くそ、絶対獄寺後で覚えてやがれ!!」
「獄寺くん、止めなよ!!」
獄寺はツナの静止の言葉も聞かずに私に向けてどんどんダイナマイトを投げてくる(お前、ツナの右腕ならしっかりツナの言う事くらい聞けよな!)私はなんとか飛んでくるダイナマイトをかわしていく。こんな時になって自分の運動神経が良い事に感謝する事になるとは思わなかった。本当にこんな風に生んでくれた親に感謝だ。(だけど、なんで私こんな事してんだろ・・・・?)
「、獄寺くんが投げるダイナマイト全部避けてる・・・」
「って、すごいのな。俺らも負けてらんねぇな!」
「やっぱり、俺の目に違いはなかったな。あいつは立派はマフィアになるぞ」
「リ、リボーン!!そんなこといってないで獄寺くんを止めてよ!!」
うん、本当早くこの馬鹿を止めてください。とリボーン達の方を向いてお願いをする。それに、人間死にそうになったらいつも以上の力を見せるものだと思う。今の私が、まさにそれだ。死にたくないから必死に獄寺からのダイナマイトを避けてるだけにすぎない。しかし、それだけでは私にこの男をとめる術はない。私はまだ死にたくないのに!
「じゃあ、ツナお前が止めて来い」
「えぇぇぇ?!無理だって!!・・・・・既に撃ってるしー!!」
なにやらツナ達のところが騒がしいと思って、横目でちらりと見てみれば、ツナがパンツ姿だった。思わず目を見開く(お 前 何 が あ っ た ん だ ! !)いや、別にパンツ姿なんて家で吾郎の見慣れてるからどうって事ないんですけど、まともだと思ってたツナがこんな学校の屋上でパンツ姿になるとは思ってなかったんだよ!!私はツナの予想外の姿に獄寺の投げたダイナマイトに気付かなかった。
「っ?!」
遠くで山本の声が聞こえたと思ったら私の目の前には今にも爆発しそうなダイナマイトが、この至近距離ではとても避けれそうにない。私は思わず目を閉じた。他校の屋上で死ぬなんてなんて変な死に方だろう。できれば、もう少し違うところで死にたかった。欲を言うのなら、まだ死にたくない。
「死ぬ気でを守る!!」
ツナの声がすぐ近くで聞こえたと思ったら、ツナがダイナマイトを違うところに投げ返していた。まるで先ほどまで泣きそうな顔になっていたツナとは大違いで、私はさらに目を見開く羽目になる。獄寺はツナが私を守るかのように私の目の前に居るからダイナマイトを投げれないらしい。疲れきった私はその場に座り込む。はぁ、とため息が漏れた。
「で、リボーンがツナに死ぬ気弾というのを撃ったからあーなったと?」
「そうだぞ」
あの後、ツナのパンツ姿の理由をリボーンから聞いた。ついでにボンゴレファミリーについてもだ。どうやら思ったよりもマフィアの世界と言うものはおくが深いらしい。そんな世界に私は足を踏み入れてしまったのかと思うと少しだけ嫌になった。死と、隣りあわせなんて。
普通、こんな大事な話はもっと事前に話しておくべきじゃないのだろうか。それに自分がまさか、そんな世界の住人になるなんて今まで考えた事さえなかった。私にとっての世界は、学校と家ぐらいで、それにマフィアと言う世界が加わるなんて夢にも思ってもいなかった。まぁ、誰だって思いたくはないだろ
「(・・・もうどうにでもしてくれ)あ、そういえば」
「どうした、?」
「ここの制服ってブレザーなのになんで学ランの人がいるの?」
この学校に来た時から気になっていた学ランの人たち。校門にいたときは逃げ出したくなったものだ。時代錯誤の格好はまだゆるせるが、みんな顔がいかついなんてなんのいじめかと思ったものだ。恐い、あの顔は恐すぎだ。
「あれは風紀委員だぞ」
「いやいや、アレが風紀委員とか言っちゃたらこの学校の風紀を本気で疑いますよ?」
「それが、・・・・本当なんだ」
ツナが青い顔をして呟いた。あまりにもツナが深刻そうな顔をして言うものだから私も信じざるを得なかった。そして、ふと一つの事に気付く。あのトンファー男の服装もブレザーではなくて、学ランだったはずだ。それに、学ランの袖には赤い腕章がついていたような気もする。そこまで注意して見てはいなかったから、何の腕章かは分からなかったけれど、これはもしかして。自分の考えた事に、恐ろしくなって私はグッと息を飲み込んだ。
「じゃあ、もしかして・・・・」
「ヒバリも風紀委員だぞ」
「それも。ヒバリさんは不良の頂点でありながら風紀委員長なんだよ」
ツナの顔がさらに青くなる。それに伴うかのように私の顔も一気に青ざめた。不良の頂点で委員長。あんな男がこの学校の風紀委員長だなんて、ありえなさ過ぎる。そもそも不良が風紀委員と言う事にもおかしいと感じているのに、さらに不良の頂点であるあの人が風紀委員長だなんておかしすぎる。私は雲雀という人間に関わらないように過ごしていこうとかたく心に決めた。
事実、それは真実
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ブラウザを閉じてお戻り下さい
(2007・04・28)
加筆修正
(2007・10・21)
ヒロインがノンブレスで言った所はわざとフォントを大きくしてます。
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