今日の部活はいつもより早く終わって、家へとウキウキしながら帰っていた。本当にあのテニス部にしては珍しい事だ(あぁ、すごく嬉しいよ!)最近ついていないと思っていたけれど、今日はとても良い日になるかもかもしれない。まぁ、とは言ってももう5時を過ぎるくらいの時刻だし、一日も後半にさしかかっているから、良い日になるかもしれないというのは可笑しな表現だとは思う。

いや、この際そんなくだらない事気にしない。早く帰れるなら、ついでにいつもならもう閉まっているケーキ屋さんにも寄って久しぶりにケーキでも買っていこう。そう思っていた、











な の に ! ! 











何故か私の行く手を阻むかのように、目の前には昨日の男の子とその男の子の後ろになにやらカッコ良い男の子が2人。しかも、何やら1人はすごく私のほうを睨んでくる(え、え、なんで私睨まれてんの?)片方は何も考えてないのかずっと笑顔を崩さない。とても爽やかな笑顔だ。そして、突然の事に驚きを隠しきれない私に、昨日の男の子もとい沢田くん(確かこんな名前だったと思うけど)は困った顔で笑いながら口を開いた













「昨日はごめんなさい!!さんも急なことでビックリしましたよね?!」











やっぱりこの男の子は良い子らしい(うん、分かっていたよ。昨日の態度と言い、悪い子にはとても見えなかったから)それにこんな風に笑っている顔も可愛いと思ってしまう。しかし、ここで隙をみせてはいけないと本能が告げている。

いままで美形に会って得したことはあったか?と自分に問いてみれば、残念ながらそんな事ありません、隊長!!と言う答えが返ってきた。自分で自分を隊長とかいってる時点で危ない人と思われるかもしれないがここの所は許して欲しい。いつもの私ならもっと落ち着いて考えるが、今は落ち着いて考えられないぐらい私は焦っているのだ。








なぜなら沢田君の後ろには美形が2人もいるから












「10代目!!コイツが昨日リボーンさんが言ってた奴ですか?!」













いきなり先ほどから私を睨んでいた奴に指をさされながら、言われた台詞に思わずカチンとくる。初めて会った人に対してコイツだなんて、なんて失礼なな奴だなぁとか思いつつ、「10代目」という単語がひっかかった。

うん、ここはスルーすることにしちゃうよ!
いや、ね、人間スルーを覚えないと生きていけないと思うんだよね。それに、小さい頃から無視はしてはいけないよ、とか親や先生から言われてきたけど、最近はTPO(時・場所・場合)と相手によってはスルーしても良いんじゃないかって言う事が分かってきたんだよ。そして、コイツはスルーしても良い相手だと私の中で今この瞬間に決めた。











「俺、並盛中2年の山本武。よろしくな!!」











私が少しだけ睨んできたやつに睨み返していると、とても爽やかな少年が手を出しながら言った。(うわ、眩しい・・・!)まるで彼の後ろから光が放たれているかのような幻覚さえも起こしそうなぐらい、爽やかな笑顔だ。私は思わず目を細めて、その男を見る。しかし、さっきの奴と違ってこちらの人は良い人オーラがすごく出ていて、思わず私も自己紹介してしまった。










「あ、です。同じく氷帝学園中等部2年です」







「え、さんって同い年だったの?!」











私 っ て そ ん な 老 け て 見 え ま す か ? ! 






沢田(呼び捨て決定)・・・・さすがの私もその言葉にはショックなんだけど。これは年上に見られていたのか、それとも年下に見られていたのか分からないけれど、私はよっぽど年相応の顔をしているつもりだ。身長だってこの年にしては、平均の身長をしているし、体重だって・・・・まぁ、そこそこと言ったところなのだ。それなのに、この男・・・!!と思い、思わず沢田をキッと睨みつければ、沢田は焦ったかのような顔をして、口をひらいた。











「別に老けてるとか思ってないからね!!」







「(フォローがすごく切ないんですけど・・・!!)で、今日は何か御用ですか?」











自分に負けるな、と励ましつつ、私は首をかしげながら言えば沢田の顔はは焦った顔から困った顔にかわった。その様子に、更に私はどうしたんだろうと疑問がうかんでくる。わざわざ昨日会ったばかりの人に何故、私はこのように待ち伏せをされなければならないのだろうか。











「あ、えっと、言いにくいんだけどね・・・・」






「10代目はお前もボンゴレファミリーに入れてやるって言ってんだよ!!」







「ちょっと、獄寺くん!!」















入れてやるって別に私は入れて欲しいって言った覚えはこれっぽっちもない。うん、それに私ちゃんと昨日断った気がするんだけど。そう思い昨日の会話を思い出してみれば、「すみません、私用事があるんで失礼させていただきませね」と確かに言った覚えがある。まぁ、これだけなら、断ったうちには入らないのかもしれない。

実際、入らないとは言ってないわけだし、この言葉は昨日のあの場から逃げ出すためだけの言葉だったのだから。いや、だけどあの時の私の様子を見れば嫌がっていたことなんて一目瞭然だと思うのだけど(それぐらい分かって欲しかったな!)
















「そ、そういうことだから一緒に
「お断りしますね」





「お前、十代目のお誘いを断るなんて調子のってんじゃねぇ!!」











調子にのってなんかいません。ただの本音なんです。と言う私の必死の心の叫びにも気付かないのか、真ん中わけ少年が何かをしだした。ガサゴソと何か探しているのだろうかと思っている私のほうに突然投げられたソレは綺麗に放物線をえがき、私の方へと向ってきている。少しだけ焦げ臭い匂いに、眉をひそめて、ソレを見る。一瞬何か分からなかったが、よく見てみるとそれはダイナマイトだった。












「果てろ!!」









えぇぇぇぇぇぇぇ?!





「獄寺くん?!」














どこにあんなの隠してたんだよ!!とかくだらない事を考えているうちにダイナマイトはどんどん私の方へと近付いてくる。目の前を覆うダイナマイトはかなりの量で咄嗟に私は踵を返して急いでその場から離れた。後ろではダイナマイトが爆発するような音と、爆風が感じらて、私はなんとか無事な自分をみて、ホッと息を吐いた。だけど、なんで私いつも走ってんだろう。後ろからは先ほどの少年達が追いかけてきていることが分かる足音と、声が聞こえる。











「クソッ、待て!!」





「なんだ〜、鬼ごっこかぁ?」








「(違うに決まってんだろ・・・・!!)」











山本(呼び捨て決定)の言うとおり、もし鬼ごっこだったとしても鬼が3人ってあきらかにおかしいじゃんかよ。あれか?女の子一人をよってたかって追いかけるのが楽しいのか?!爽やかな顔してとんだ鬼畜だな!!












「ごめん!!でもさんを捕まえないと俺がリボーンに殺されるんだ!!」












謝りながら追いかけてくる沢田があまりに哀れだったけど、だからと言って私を生贄にささげられては困る。私だってマフィア(本当に彼はマフィアと言うものなのだろうか・・・って言うか、マフィアって本当にあるの?)なんかと関わり合いになりたくないんだ。お願いだから平穏な生活を送らせてくれ。
そう願い、一生懸命走りながら後ろを振り返れば山本とダイナマイト少年が見えた。そしてその後ろに沢田君が着いてきている様だが、あの2人に比べてかなり疲れている様子だ。











「(・・・・あ、こけた)」













なんだか本当に沢田が可哀想だな。でも私を生贄にしようとする沢田には同情するつもりはない(私だって自分の身が一番可愛い)だけど、それにしても沢田以外の二人は結構早い。このままでは追いつかれてしまうかもしれない。


私は乱れる息ともつれそうになる足になんとか力を入れなおして、走る。きつい、けど今はそんなこと気にしてはいられない。なんとか振り切れないだろうかと思いかどを曲がろうとした瞬間、私は誰かにぶつかってしまった。














「ご、ごめんなさい!!」





「・・・・・・」










私は思わず尻餅をついてしまったけど、目の前の少年にはそこまで被害がなかったらしく、ぶつかっても立ったままだった。私は一応、自分が悪かったと言う事は十分承知しているので謝ってから、急いで立ち上がって走り出そうとする。立ち上がったところで足音がすぐそこまで迫ってきているのが分かった(ひぃぃぃ!!)心の中で思わず悲鳴をあげる。そして、もうやばいと思った瞬間、私はぶつかった少年に手を引っぱられそばにあったお店の中に突っ込まれていた。












一枚の壁をはさんでドタバタと複数の足音が過ぎ去っていくのが聞こえた














助かった!!とホッと息を吐き、私は助けてくれた人にお礼をしようと顔を見上げる。制服姿に帽子をかぶって眼鏡をかけた男の子(制服を着ているのに帽子をかぶるなんて珍しい・・・・)この制服は隣町の黒曜中の制服だったような気がする。
だけど黒曜中は確か不良の集まりらしく、今はほとんど学校としては成り立っていないと言う事を聞いた事があるのに、そんな学校にもこんな良い人がいたのか。これからは少しだけ黒曜中を見る目が変わりそうな気がする。(って言うか、変わった)














「ありがとうございました!!」




「別に・・・」











お礼を言ってかえってきた言葉は素っ気無いものだったけれど、私はそれ以上にこの少年に助けてもらえた事に感謝していたからそんな事は気にならなかった。それに、良く見るとこの男の子も美形と言われる部類に入るのだろう。帽子と眼鏡で分かりにくいけど、かっこ良い少年だと言う事が分かった。あぁ、美形の中にも普通の人はいたんだ!!と感動する。













「じゃあ、俺は行くから」






「あ、はい。本当に助かりました」



「・・・・はぁ、めんどい」










それだけを言い残して男の子はドアを開けて外に出て行った。私は当分、その場所で美形なのに普通な人に出会った感動を噛み締めていた。その後私は見つからないように、ビクビクしながら家に帰ったけれど、あまりにもそれが不審だったのか道行くひとに白い目で見られてしまった。











鬼ごっこはもう勘弁!



















   







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(2007・04・15)



加筆修正
(2007・10・14)