昨日はまったくもってさんざんな目にあってしまった。いつもどおりに帰っていたはずなのに、変な男達に絡まれるは、助けてくれたのかと思った美形な(←ここ重要)学ラン少年にはトンファーで殺されそうになるわ、まったくもって最悪である。って言うか、今思えば並盛に学ランの学校なんてなかったと思うんだけど。それに、やっぱり美形に良い奴または普通の人は少ないらしい











あぁ、何で自分はこんなに不幸なのだろう










せめてもの救いは今日は水曜日で部活が休みだということだけ。これで今日も部活があったら、私は一人で家に帰れなかったかもしれない。部活があると言うことは、また帰りは遅くなってしまうことになる。

私は今日も暗い中とてもじゃないけど、またあんなめにあってしまうのではないかと思うと恐くて帰れる気がしない。それだけ私にとって、昨日の出来事は衝撃的だった(鞄も結局買いなおしたしね!)まぁ、あれは私じゃなくても怖いと思うか。








まだ明るい道を心なしか急いで帰りつつ、頭では晩御飯のメニューを考える










「す、すみませーん!!」








ふと聞こえてきたのは男の子の悲鳴にも似た声。思わず足を止めてそちらの方を見れば、男の子が数人の男に囲まれているのが遠目からでも分かった。私はハァと息をはき、その光景を眺める。男達に囲まれた中央にいる男の子はビクビクとしながら、一回り大きい男達を見上げ、今にも泣き出しそうな雰囲気をかもし出している。







まるで昨日の私みたいだ・・・






同情とも言える感情が自分の中で少しずつ湧き上がってくる。なんだか自分を見ているようでその男の子が可哀想になってしまった。まぁ、私は男達に囲まれてくても恐いなんて思いもしなかったけど。私にしたらあの男達よりもよっぽどあの学ランの少年の方が恐かったし。

しかし、男の子を可哀想だと思ってしまったらもう遅い。私の足は男のこの方に向っていった。あぁ、自分から面倒ごとにつっこんでるよ。いや、でもね、これは不可抗力だと思うんだ。だって、この男の子をほっておくようなことなんて出来るわけがないし、私以外に助けようとする人はこの場にはいない。だったら、私がいくしかないんだよ。この男の子を助けられるのは私しかいないんだと思ったんだ(それはただの、自己満足かもしれないけど)









「ほら、さっさと金出せよ!!」





「ひぃぃぃぃ!!」








近付いて、見れば見るほど自分と重ねてしまう。この男の子からはすごく苦労人ですって言うオールがにじみでている。なんて、可哀想な男の子なんだ。ホロリと、涙が出そうになるのをなんとか抑えつつ、私は男の子を見る。そして、その男の子を囲む男達に視線をうつし、思いっきり睨みつける。














「貴方達何やってるんですか」










何やってるかなんてもう分かっていたが、あえて聞いてみた。どうせ、かつあげだ(まったく、かつあげだなんてガキだ)声をかければ、一斉に私のほうを見る男達があまりに間抜けな顔だったので笑い出しそうだった(もちろん笑ってない私だって場の空気ぐらいよめる)


しかし、一瞬で間抜けな顔から、キッと私を睨みつけるような目つきに変わった。ま、それでも笑い出しそうになっているのだけど。あはは、もう本当この顔は生まれてきたことを後悔するような顔だよね。










「誰だ、テメー?!」




「(やっべ、この男の顔笑いそう・・・・!!)」









一人の男が私を睨みながら歩み寄ってきた顔があまりにも面白い顔で少しだけ顔をさげて、噴出してしまった。普段、自分の兄や私がマネージャーをしているテニス部の人たちと言った美形を見慣れてしまっているせいか、この男達の不細工さがさらに際立って見えるような気がする。私の目も随分都合の悪い目になってしまったらしい。でも、これは私のせいじゃない。











私の周りの美形が悪いんだ











そして周りの美形に普通の人が少ないのがいけないんだ。って、いまはこれぽっちもそんなこと関係なかった。今、重要なのはこの男達から、この男の子を逃がす事だ。私は、未だ笑い出してしまいそうなのをなんとか抑えて、顔をあげる。そして、男達を睨みつけながら、私は言った。











「貴方達に名乗るほどの人間じゃありませんよ」










私は今にも泣きそうな男の子の腕を掴むと一目散に逃げ出した(え、これって普通逆なんじゃないの?なんてツッコミはなしだ!)








「うわっ?!」





「おい逃がすな!!」





「追いかけるぞ!!」











男達が後ろから追ってきているが私はここの狭い路地を知り尽くしているつもりだ

。そりゃ、地元の並中には通っていないけど生まれた時から並盛町に住んでいるし、昔はよくここで吾郎とおいかけっこをしたものだ。あの頃はまだ私も吾郎にも可愛げがあったな、なんて思いながら走り続ければ「え、もう無理!走れなっ!」と言う男の子の声が私の耳に入ってきた。だけど、どんなに無理でも、走れないとしてもあの男達が逃げる為にはもう少し先まで行かないと安心はできない。だから、男の子の声が聞こえるが今はかまっていられない。















前方に公園が見えてきた。後ろから男たちの気配はもうしない。私はその男の子の手を引っぱったまま公園内のベンチのところまで連れて行った。私が走るのを止めて、男の子の掴んでいた手を離せば、男の子はかなり苦しそうな顔で座り込んだ。私も自分の額にうかんだ汗を、手でぬぐう。






「だ、大丈夫?」




「ゼェ、あり、ゼェ、が、ゼェ、と、ゼェ「うん、呼吸が整ってから話しましょう」・・・ハイ」









しばらく休憩すると、大分呼吸もととのったのか男の子が立ち上がり、私と目があうといきなり頭をさげ。










「ありがとうございました!!」





「(な、なんて礼儀正しい子なんだろう・・・!)」










ちょっと私感動しちゃったよ。最近こんな礼儀正しい子に会ってなかった気がする。やっぱりこれが普通なんだよね。良かった、久しぶりに普通の人と出会えて。って言うか、久しぶりにってどれだけ私普通の人に飢えていたんだろうか。
しかし、昨日であった学ラン少年の事を考えると私は確かに普通の人に飢えているのかもしれないと納得せざるをえなかった。うん、私やっぱり普通の人に飢えてるんだな。少しだけ、目頭があつくなって、私はそこに手をあてた(はは、私どれだけ損した人生送ってるんだろ。)









「あ、あのどうかしました?!」









焦ったようにいう目の前の男の子に私は更なる感動を覚えた。だけど、あなたとの出会いの感動していました、なんてとてもいえる訳がない(そんなこと言ったら私まで変人と思われてしまうじゃないか!)私は、うっすらとした笑みを浮かべながら目の前の男の子を見る。












「ううん。なんでもない・・・?」












私が言い終わらないうちに、男の子は驚いた顔をして私を見ていた。え、私変なこと言ったけと思ったけど違うらしい。彼が見たのは私ではない。私の後ろだ。急いで後ろを振り返れば、男が丁度私に殴りかかろうとしているところだった。











「あ、危な「私の感動を邪魔するな!!」












男の子の台詞を思わず遮ってしまった私は、殴られる前に思いっきり男の横腹を蹴っていた。だって、私は今、この男の子に生きていて初めてってくらいの感動を貰っている最中なのに邪魔されてはたまったものじゃない。

私が蹴り飛ばした男の体は私が思っていたよりも軽やかに宙を舞い草の中に吹っ飛んでしまった。草の上だからそれなりに大丈夫だとは思ったけど、男はどうやら気絶してしまったらしく立ち上がることはなかった(うわ、やりすぎちゃったかも!)それを見ていた男の仲間たちは我先にと一目散に逃げ出していったのは言うまでもない。










「フン。馬鹿が」





「あ、あの・・・」












私の感動を邪魔するからこういう事になるんだと思い知ればいいと逃げていく男達の背中を眺めながら心の中で呟いた。ふと男の子の声で呼ばれたことに気付いて男の子のほうを振り向けば、そこには先ほどまでいなかった赤ん坊がいた。年齢と反して黒いスーツを見にまとい、真っ黒な大きい帽子をかぶった赤ん坊。














「ちゃおっス」



「あ、こんにちは・・・・じゃなくって











いつの間にここに?!と私は咄嗟に目を見開いた。私がこの男の子から目を話したのはあの男を蹴り上げたほんの数秒のはずなのに、この赤ん坊はどこからか現れてた。すごいな、この赤ん坊・・・・って感心してる場合じゃない。赤ん坊がこんなことできるはずない。
それに気配も一切しなかった(いや、別にそこまで気配がわかるなんてことはないんだけどね。だって、私普通の女の子だし)赤ん坊がこんな立ったり、話したりすることができるんだろうか?いや、私の知っている限りそんな事できる赤ん坊なんていないはずなんだけど。












「お前、名前なんて言うんだ?」




「えっと、ですけど」










思わず答えてしまった。だけど、本当にこの赤ん坊・・・・めっちゃ可愛い。なんだこの愛らしさは。もしかしたら今日も厄日かと思っていたけれどそんなことないかもしれない。だって、こんな可愛い子なかなか会えたものではないし、色々本当はツッコミたいことは多々あるけれど、この可愛さの前ではそんなツッコミをすることもできないし、する気にもなれない。(女の子って可愛いものには弱いんだよ!私の場合は甘いものにも弱いけどね!!









「じゃあ。お前は今日からボンゴレファミリーの一員だ」




「・・・・・は?」




「おいリボーン!!何言ってんだよ!!」












「・・・・(どうやら、今日も厄日らしい)」








可愛い赤ん坊についつい舞い上がってしまっていたが、私がそう簡単に厄日から抜け出せるわけがなかったようだ。あぁ、先ほどまで天使の様に可愛いく見えた赤ん坊が今は私に不運を運んでくる悪魔の様に見えてしかたがない。



それに、とりあえずボンゴレファミリーって何なんだろう・・・・いや、だけど質問してしまったら後に戻れないような気がして聞くこともできない。てかこの男の子と赤ん坊は知り合いだったんですね。













「ちなみにツナはボンゴレファミリーのボスだからな」










ツナ・・・?もしかしてこの男の子のこと?そしてボスってなんだ?と私の頭の上にたくさんのクエスチョンマークが浮かんでくる。私には分からないことだらけで、だけど聞く事もできなくて、私はどうしようもない。目の前の男の子は少しだけ困ったように笑い、赤ん坊の方はニヤリと赤ん坊が絶対にしないようなイヤラシイ笑みを浮かべていた(うわ、すっごい嫌な予感がするんですけど!)そして、私が男の子と目があうと、男の子は口を開いた。












「あ、えっと俺沢田綱吉って言うんだ。で、コイツが
「ツナの家庭教師のリボーンだ」・・・・」











途中で話遮られるのってなんか切なくなるね。まぁ、私もよくやるけど。って言うか、さっき実際にこの男の子の話遮っちゃったんだっけ(・・・・ごめんね、少年)あぁ、だけど今はそんな事考えている場合ではない。私が考えるべきなのはこの目の前にいる摩訶不思議な赤ん坊の事だ。こんな赤ん坊が私と同じぐらいの男の子の家庭教師っておかしくないか?








うん、おかしいよね(自己解決できちゃったよ)












「ボンゴレって何・・・ですか?」





「イタリアでも有名なマフィアだ」





「こら、リボーン!!」










マフィア?マフィアって外国の犯罪組織のことだったよね?いや、だけどこの目の前にいる男の子がそのマフィアのボスと言うものな訳がないだろう。まさか、遊びか何かでこんな事を言っているのか?と思ってもしまうけれど、なんだか目の前の男の子が青い顔でこちらを見ているから信じてしまいそうになる。あぁ、怪しい人たちには見えなかったのに!!












「すみません、私用事があるんで失礼させていただきませね(逃げるが勝ちだ!)」




「あっ!!」











男の子が私の後ろで叫ぶのが聞こえたけれど、私は半ばそれを無視する形で走り出していた。その光景はまるで昨日の光景のようで、私はなぜいつも走って逃げているんだろうか。

本当にここ最近ついていないことばかりだ。情けは人の為ならずって言うことわざは本当に、存在するのかまで疑いたくなってしまう。だって、私の場合、今日はせっかく男の子を助けて良い事をしたと思っていたのに、最後は結局マフィアなんかに誘われてしまうし。自分に良いことがかえってくることなんてないのかもしれない。きっと私の場合は悪いものがかえってくるんだ。











そして、私は今日も走る
















   










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(2007・04・13)



加筆修正
(2007・10・14)