なんで今日に限って近道をしようと思ったのか


今はそれだけが悔やまれる















今日も普段と変わらずにテニス部のマネージャーの仕事を終えて帰る途中だった。あの部活はマネージャーを労わるって事を知らないんじゃないかってぐらいたくさんの仕事のせいで、もう体はヘトヘトで、私の体は限界だった。それに今の時刻はいつもよりずっと遅い。このまま帰っていたら、家へと着く時間はかなり遅くなってしまうだろう。

明日も学校があるし、どうしてもそれは避けたいと思った私はよく考えもせずに近道をしようと公園を横切ろうと思い人気のない公園の中に入った。












それが間違いだったんだ











いつの間にか目の前には明らかにガラの悪い男達が私の前に立ちはだかっている。そう言えば、最近ここら辺というか並盛では事件が何かあるから危ないと吾郎が言っていたような気がする。全然そんな事忘れていたんだけど。

あー、近道のはずがとんだ遠回りになってしまったらしい。辺りを見回しても他に人の気配はまったくと言って良いほどしない。助けを求めようにも助けが呼べない(なんてお約束な展開なんだ!)まぁ、別に助けなんていなくても自分で何とかやるけど、











「こんな時間まで何してんの〜?」



「お兄さんたちと遊ばない?」








遊 ぶ わ け な い だ ろ ! !






と、心の中でつっこむも目の前の男達には伝わらない。いや、伝わったら伝わったらで少し怖い気がするんだけどね。それでも私はこの人たちとは遊ぶ気はない。むしろお願いだから早く家に帰らして欲しいと思っているんだ。それに、この人たちの遊ぶって言うのは意味が違う。あぁ、私はどうしてこうも誰かに絡まれやすいのだろうか?学校ではマネージャーをしているテニス部が人気があるために女子に絡まれ、校外ではこんな気持ち悪くて反吐がでそうになるぐらい変な人に絡まれ










あれ、ちょっと泣きそうだわ










てか、この人たちももう少し人を選べば良いのに、と思う。私より可愛い子なんてそこらへんいっぱいいるよ?私なんて可愛くないし、そこらへんにいるような普通な女の子なんだ。まぁ、こいつらみたいなのが可愛い子に話しかけたりしてたらぶっ飛ばしに行くけど・・・。
こんな気持ち悪い人たちに女の子が絡まれるなんて、可哀想だし。他の女の子なら、こんな暗いところでこんな気持ち悪い男にからまれたらトラウマになってしまうかもしれないのだから。













「この子怯えてんじゃ〜ん」




「俺たち優しいから大丈夫だって」











別に怯えてるつもりはないけど、私がこの男達のことを考え込んでいる様子をみてこの男達は勘違いしている(はっきり言ってこの男達は馬鹿だ)ニヤニヤしている顔がとても気持ちが悪くて、私の不快指数はあがる。本気で私の前から消えてほしいと思うのは私だけじゃないだろう。って言うか、消えろ











そのぐらいこの男達は気持ち悪いんだ。外見だけでなく中身も









「じゃあ、行くか」







「ほら、早く行こうぜ」











私はこの男達に絡まれてから行くなんて一言も言ってないのに、この男達にとっては私が行くことは決まっているらしい。この男達の頭の中身はどうなっているんだろう(確実に腐ってるに決まっているけどね)あぁ、まったくもって面倒くさいこの男達の相手をするのは。












本当に、勘違いもほどほどにしとけよ?












一人の男が私の腕をつかんで、引っぱっる。私は足に力を入れてどうにかその男達に反抗しようするが、それを男は無視するかのようにさらに強い力を手に込める。私は思わず顔をゆがめ、その男をキッと睨みつけるが、男達は私のそんな視線にも気付かない。つかまれた腕が少し痛い。それにすごく嫌だ。気持ち悪い。この男達、絶対殺す









私は男の腕を振り払い、思いっきり男を蹴ろうと足に力を入れる





















ガンッ






「うっ?!」




「(え・・・?)」









私の足が途中で止まる。私はまだ男を蹴っていないはずなのに、男のうめき声が聞こえてくるなんて絶対におかしい。男のうめき声が聞こえたほうを見れば、倒れた男の姿と月明かりの下で学ランを肩からかけた男が立っているのがなんとか見えた。

身長からして、同い年ぐらいだろうか(ここらへんに学ランの学校なんてあっただろうか?)














「僕の前で群れるなんて、いい度胸してるね・・・」














男の低い声が、まだ幼さを少しだけ残した声がその場に響く。少し、怖いと感じてしまった。今気付いたけど、男の手には少し血のついたトンファーがしっかりと握られている。多分、だけどトンファーについている血は先ほどのうめき声を上げた男の血には間違いないだろう。














「そんなに咬み殺されたいの?」












一瞬助けてくれたのかと思ったけれど、違う。この言葉には多分私も含まれている。私は別に群れたくて群れていたわけじゃない。むしろ、帰らして欲しいという気持ちで一杯だった。そんな私をこの男たちが勝手に取り囲んだだけの話だ。そこんところはちゃんと、分かっていて欲しい(とても言える雰囲気じゃないけど・・・・)






今すぐここから逃げ出さないといけない。面倒ごとはお断りである。














と、思ってたはずなのに・・・・!!!













数人いた男達はものの数秒でやられてしまった。もっと頑張って私が逃げる時間ぐらい稼いでくれよと思うも時既に遅し、私はただ唖然と立ちつくしかない。どうにか、足に動けと言う命令を出しているはずなのに、まるで足はその場に縫いつけられかのように動こうとはしない。恐い!ガタガタと少しだけ自分が身震いをしていることに気付いた。



私はただジッと、一人倒れた男達の中心に立つ学ランの男をみつめるしかできない。静かな暗闇の公園の中で返り血を浴びている男はひときわ異彩を放って、またそれが私の恐怖を引き立てる。袖を通していない学ランの袖が、風になびいた












「君も咬み殺されたいの?」







「っ?!」













疑問系のはずなのに疑問系に聞こえない(まったくもって聞いた意味がないじゃないか!)気付いた時は首元にトンファーを当てられていた。近くに来たせいか顔が良く見える。私が思っていたよりも幼い顔に僅かに驚く。それにとても綺麗な顔をしている。
だが、私を睨みつける眼にはまるで肉食動物のような獰猛さが見え隠れして、私はただそれにグッと息を飲んだ。













眼が本気だ












眼を見れば、本気で私を殴るつもりらしい。それに殺気さえ感じるのも分かる。しかし、私もこのまま黙って殴れらるわけにはいかない。今までのこの男が戦っている様子からしてどんなに私が護身術を習っていたとしても負けてしまうのは分かっている。だが、それは真っ向に勝負したばあいだ。それなら真っ向に勝負しなければ良いだけの話。自分の命がかかっているのに卑怯なんて考えていられない。













男のトンファーが、暗い中、ギラリと鈍い光をはっして上へと振り上げられる











私はそれを見て、サッと男がトンファーを振り下ろしたのを持っていた鞄で防ぐ。グッとくる衝撃は重く、私の体に衝撃を与えたが、耐えられないものではない(よく頑張ったな、私!)まさか私がトンファーの攻撃を防げるとは思っていなかったらしく男は一瞬、目を見開いて驚いているように見えた。













私はその一瞬を逃さず急いで家の方向に走り出した













それはもう脱兎のように、自分がスカートなんてことを気にせずに私は走った。先に言っておくけど、スカートのしたには短パンもしっかりはいている。いささかというか、かなり男に背中を見せるのは怖かったが、後ろから男が追って来る気配はしない。私はホッと安心して走りながら息を吐いた。


だから走り出した私の後ろ姿を見て男が口端をわずかにあげたなんて知るはずはなかった


















部活のせいで疲れきっている体に鞭を打って、なんとか無事に家まで帰ってこれた私は、家に着くと急いで玄関のドアを閉めてその場に座り込んだ。乱れた息のせいでうまく息が出来なくて「ゼェ、ゼェ」と荒い息を繰り返す。私より早く帰ってきていたらしい兄の吾郎が「おかえり〜」と言いながらやって来たけど、玄関に座り込んだ私を見て急いで駆け寄ってきた。吾郎が何があったのか聞いてくる。それに私は何も答えられない










あんな恐怖初めてだった










それに鞄がもう使い物にならないぐらいへこんでしまっている。どれだけあの男は強い力で殴ったんだよ!!けっこう高いものなのに、新しく買わなければいけないと思うと、先ほどの男への恐怖よりそちらの方が私には堪えた。どうして私はあの時、近道をしようと思ってしまったのだろう










夜道には気をつけろ!


















 







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(2007・04・13)

加筆修正
(2007・10・14)