私は結局ツナ達についていくことができずに家への帰路を辿っていた。本当はついていきたい、と思った。ついていかなくちゃ、と思った。でも、ついていった先にある真実を受け止めるのが恐かった。先ほどから聞こえてくる周りの声は並中生が襲われた事件の事ばかりで私は頭が痛い。だけど、周りの声が止む事はない「さっき、黒曜生と並中生が喧嘩してたらしいよ」「並中生が襲われてるらしいよ」
私の中では、らしい、なんて曖昧なものではない。それはどちらも、私にとっては紛れもない事実、なのだ。痛い頭を抱え、私はゆっくりと足を動かす。そして、ふと考える。私はこのまま家に帰りツナ達が帰ってくるのを待っているだけ良いんだろうか(この疑問はツナ達と分かれてから何回考えただろうか)
もし、ツナ達が無事に帰ってきたとき、六道骸たちはどうなるの?
もし、ツナ達が帰ってこなかったとき、ツナ達はどうなっているの?
どちらも私にとっては最悪な答えだ。いや、一番最悪なのはどちらも失ってしまう場合だろう。六道骸が間違った事をしてるのは事実、だ。なら、私はツナ達を応援する。
でも、相手が骸さんだったら、私はそれでもツナ達を応援できる?……それが分からない。自分でもツナ達を応援できるかどうかが分からないのだ。だから、私はこうして待つことしかできずに、帰路に着いているんだ。それにツナ達に着いていったとして私に何ができる?ちょっとかじったぐらいの護身術で敵う相手とはとても思えない。私はあのメンバーの中じゃただのお荷物でしかない。なら、着いていかない方がツナや、私の為になるんじゃないかとも思う。
「(なんて、そう思うことでここで待つ理由が欲しいだけ)」
自分が六道骸を倒しに行かないて良い理由が欲しい。それがどんなくだらない理由であってもかまわないんだ。でも、待っているだけで、私の大切な人たちがみんな無事でいる、と言う確証はない。むしろ、どちらかは絶対に無事ではすまないと言うことは、いくら私でも本当は分かっている。
それでも、私は何もしようとせずに、行くか。行かないか。まだ私は悩んでる。でも悩んでも悩んでも結局答えなんてでるわけもなくて、どんどん家は近付いてきて、時間は無情にも過ぎていく。自分がどうしたいのかさえ、もう見失ってしまっている。
今頃、ツナ達は黒曜センターについたん、だろうか。骸さんたちと知り合って何度も行ったことのある場所。とても、と言うわけじゃないけど、思い入れがないわけじゃない。あの場所で、骸さんや千種くんや犬くんとよく話した……それもついこの前まで。なのに、その場所で今から争いが起きるかもしれない。
私達が笑い合った、あの場所で。それって凄く悲しいことだ。獄寺が倒れていた場所を思い出せば、あの場所も、血の色に染まるかもしれない、ということも考えられる。無性に泣きたくなった。止めたい、と思っているにも何もできずにこうして自分は無関心を装い家に帰ろうとする自分の弱さに。頭で悩んだってこの事件が解決する訳じゃない。
動かなければ、変わらないんだ。
足を止めて、記憶を呼び起こす。つい、先ほどの記憶。
獄寺はあんな大怪我して、それなのにツナ達を一緒に向った……それに、千種くんだって血だらけで、とてもじゃないけど、無事、とは思えない。なのに、もう既に血だらけにも関わらず、また血を流すようなことをきっとする(私はそれを家でただ待っているだけで良いの?)雲雀さんからはいまだに連絡の一つもない。フゥ太くんの安否も分からない。私は、何もできない。いや、できないわけじゃないんだ。私はなにもしようとしていない。だから、何もできない、と思い込んでいる。でも、それじゃあ、駄目だ
私は何をするべき?
私に何ができる?
今、傷ついているのは私にとって大切な人ばかりで。これから、傷つくかもしれないのは私にとって大切な人なのに、私は何もする事ができない。そして、何もしようとしてない。
だけど、だけど、だけど、「そんなのいやだ」足を止めて、ボソリと呟く。大切な誰かが傷つくところなんて私はみたくない。大切な誰かが誰かを傷つけるところなんて私はみたくない。大切な人には笑っていて欲しい。なら、今、私がするべきことは?そんなの決まってる、黒曜ランドに行く事だ。もし、骸さんたちが犯人だったら、私は三人に向って、「やめて」と叫ぼう。もし、誰かがもう傷ついているなら、私は、その人の治療をしよう。そんな小さい事しかできない、けど。でも、しないよりはずっと良いはず。
よし、じゃあ、行かないと。さぁ、行かん無限の彼方に……って、無限の彼方に行ってどうするんだよ。これは某おもちゃの台詞だろ?!(え、いや、さぁ、行こう!だったけ?って、どっちでも良いし!!今はそんな事考えている場合じゃないし!)よし、じゃあ、さぁ、行かん黒曜センター!(なんか、語呂悪くない……?)と思い、走り出そうとした瞬間に「あれ、何やってんだ?」と知っている人の声が聞こえてきて、私の足はとまる。声のした方を見れば、そこには吾郎が立っていた。まだ学校が終わっているとはとても思えない時間。どうして、ここにこいつはいるんだろうか。
「ご、吾郎?!吾郎も何してんの?学校は・・・・・・?」
「あぁ、なんか並中生が襲われてるからってことで、早めに終わったんだよ」
それで、お前はなんでここにいるんだ?と言われ私は思わず答えにつまる。私は今日は学校に行ってない。それも連絡もしてないから、無断欠席だ(だけど、笹川さんの事心配だったんだよ!)まぁ、とりあえず、今はそんなことは気にしないでおこう。今はそんな事よりも黒曜センターに行く方が先、だ「悪いんだけど、ごめん、私急いでるからー!」結局、私はなんでここにいるのか吾郎には言わないまま走り出していた。行ったらきっと心配する。もしかしたら止められてしまうかもしれない。
「あ、晩飯までには帰って来いよー!!」
後ろから聞こえてくる吾郎の声。私は、その言葉に、ちゃんと自分が帰って来られるのか不安になった。だって、六道骸って、リボーンの話を聞く限りマフィアを追放されるほどの凄い奴なんだ。そんな奴を相手にするんじゃ一筋縄に行くとはとても思えない。
だけど、それでも行くと決めたのは自分なんだ。大切な人と、守りたいと思ったのも自分。なら、頑張らないと行けない。自分のできることなんて未だ分かりはしないけど、でも、私は、大切な人を守る為に、何かをしたい。
走れ、友のいる場所へ!
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(2008・03・11)
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