夏休みも中盤に入り、いつもの様に部活で流した汗をシャワーをあびてさっぱりとさせた私は私服へと着替えていた。思わずでそうになるため息をおさえて急いで準備をする(あぁ、でも何で私が・・・・・・!!)本来ならひっそりと本を読んだりテレビを見たり家で過ごそうと思っていたのに、なんて今さら思ってもどうにかなる問題じゃない。いや、だけど、本当どうにかなるんなら、何でもするよ、私!!と思うけれど、結局どうにもならずに私は玄関で靴に履き替える。











「じゃあ、出かけてくる」











玄関のドアをあけて、居間にいるであろう兄、吾郎に声をかければ吾郎が今からひょっこりと顔だけをだしてコチラを覗く。








「何処行くんだ?」




「ちょっと、並盛神社に、ね」




「・・・・・あぁ、そういえば今日お祭りだっけ?」





「うん。だから、ちょっと行ってくる」












そう、今日は先日骸さんとの話題にもあがった夏祭りの日だ。本当なら私は、この日をゆっくりと家で過ごすつもりだった(断じて、友達いない悲しい子というわけではないから!)まぁ、今となっては過去系だったりするんだけど。

あぁ、だけど行きたくないなぁ・・・・・本当、何で私が夏祭りとか行かないといけないんだよ!それも、











「な、俺も夏祭り連れてっ
「無理、嫌」・・・・・・酷っ!








「・・・・じゃあ、行ってくる」







「あっ、ちょっとまって、!!も、も、もしかして男と夏祭りに行くとか言わないよね!!」












吾郎の言葉に心底あきれた。そんな私に吾郎が心配するような、男の存在なんてあるわけがない(彼氏なんて私にいないからね・・・・・!)確かに男友達と言って良い人たちはいるけど、と思いながら自分の周りにいる男を考える。爆弾魔なH.Gに、パイナップルなM.Rさん。そして、喧嘩大好きK.Hさん・・・・・・私の周りって本当まともな男って少なすぎないかなっ?!

確かに、彼らは美形だとは思う。それに、あえて言うならそんな美形な彼らのほうがこんな平凡な私を相手にするわけがない(相手されてもすっごい、困るんだけどね!)はは、そんな人たちが彼氏なんて、ね。考えたくもないよ!!










「なっ、誰に誘われたんだよ?!」








私は自嘲的な笑いを吾郎に向けて答えた。














「赤ん坊」










ただ、その一言を言い残して私は、家を出た。まだまだ暑い夏の日差しが遠慮も知らずに私を照りつけてきて、家へと戻りたくなったが、神社で待っているであろう赤ん坊の存在がそれを許してはくれなかった(なんで、私は赤ん坊に怯えてるんだろ・・・・・・!)玄関のドアが閉まる寸前に中から吾郎の声で「あはは、なんだ、赤ん坊か!!・・・・・楽しんで来いよ!」と聞こえてきた。
確かに楽しめたらどれだけ良かっただろうか。だけど、これはリボーンからのお誘い。楽しめるわけがないことは、もう分かりきったことだった。









「・・・・・だけど、の奴。赤ん坊に誘われたって、どういうことだ?」




















****















神社に行けば、自分が思ったよりもたくさんの人でにぎわっていてうんざりした。あぁ、これなら骸さんが来たがらないのも頷ける。いや、まぁ、私だって夏祭りに来るつもりなんてまったくこれぽっちもなかったんだけどさ。昨日、リボーンから電話がかかってくるまでは。あぁ、思い出しただけでも涙が零れそうだよ。はは、本当なんであの時の私は電話に出てしまったんだろう、ね。まぁ、出ないのは出ないので殺される事は間違いが無かったと思うけど。












「明日、並盛神社に来い」



(最初から命令系かよ!)えっ、な、なんで、急に?!」



「明日は夏祭りがあるからな。そこで、ツナ達が屋台をやるから手伝え」



「なんで、私が!(・・・・・それも、中学生が屋台とかやってよいの?!)」



「そりゃ、ボンゴレファミリーだからな」



「(理由になってねー!)それも、なんで、屋台なの?!」



「この前、七夕の町内出し物で山本が公民館の壁を壊してな、その修繕費を稼ぐんだぞ」



「いやいや、稼ぐんだぞ、じゃないから!それに、それじゃあ、ツナとか全然関係ないんじゃ、」



「ファミリーの後始末をするのはボスとして当たり前だろ」






「(どんまい、ツナ!・・・・・・って言うか、一番私が関係ないと思うんですけどー!!)」






「じゃ、絶対来るんだぞ」













・・・・・・なんで、私こんな素直にここまで来ちゃったんだろう。いや、まぁ、ね理由は分かってるよ!どうせ、私は小心者さ!なんて、今さら後悔しても、と思った私はもうリボーンがムカつく、とかリボーンがムカつく、とか考えるのをやめて、ツナ達を探すことに専念した。
多くの人でにぎわう中でツナ達を見つけるのは一苦労。キョロキョロと周りを見渡し、私は息を飲んだ。












――一瞬だけ、本当に一瞬だけリーゼントが見えたような気がした。










いやいや、そんな見間違いに決まってるよね!うん、そうだ!幻覚!私は幻覚を見てしまっただよ。あー、私、きっと自分が思っている以上に疲れているんだろうなぁ。まさか、幻覚でリーゼントを見る日がくるとは思いもしなかったよ。うんうん、だって、まさか、こんな所に並中の風紀委員がいるわけ・・・・・・・って、ね、なんだかいるような気がしてならないよ。だって、夏祭りっていかにも風紀が乱れそうだし、なんと言うかこんなに人が群れているのに、あの委員長が何も言わないなんて考えられない。







まぁ、だけど、今のリーゼントは多分幻覚。絶対幻覚と、自分に言い聞かせる。このさい、もう見なかったことにしよう!(変なことには巻き込まれたくない・・・・・!)それに、今の私にはツナ達を探すほうが先だと思い、またせわしく頭を動かす。

無駄に顔だけは良いんだからすぐに見つけられるような気がするのに!と思っていれば、なにやら山本と獄寺らしき人がいる屋台を見つけた。その屋台の前を通る女の子達はその二人を見ながら頬を赤らめていた。はは、現実見たほうがよいぜ、女の子達よ!












「って、チョコバナナ・・・?」









それも屋台チョコバナナかよ。私は今の気分はチョコバナナより箸巻きとかたこ焼きとかぶっちゃけ、お腹すいてるから主食の方が良いんだけどね・・・・・って、そうだよね。食べにきたんじゃないんだよね、私。私、屋台手伝いに来たんだよね・・・・!(悲しい事実だね!)









「お、じゃん」





「お前来るの遅ぇんだ
「ねぇ、山本、ツナは?」





「あ、ツナならまだ来てないみたいだぜ?」




「へぇ、そうなんだー」






「・・・・・って、俺を無視してんじゃねぇよ!」












最近、やっと獄寺の扱い方が分かって来た気がする。ウザイ時は、無視。これ獄寺飼育法の一つ。言い返してもどうせ、喧嘩になることはもう分かりきった事(私も女の子にしては口が悪いからね・・・・・!)そして、もう一つ。獄寺を大人しくさせる方法がある。













「おい、聞いてんのか!」






「・・・・そんな騒いでないで早く準備しないと、ツナが、困ると思うけど?」











ツナの名前を出す。そうすれば、獄寺は何も言わずにチョコバナナの準備を始めた。あー、いや、本当、私も成長したなー!獄寺を黙らせるなんて私って結構凄いんじゃないかな?なんて、ツナの力があってこそ、獄寺を黙らせることができるんだけど、ね。そんな事を思いながら、私は早く帰りたい気持ちも手伝いつつチョコバナナの準備を始めた。私は屋台の奥でバナナの入った箱を開けたりして、中身を確かめてみる。あまりの多さに、はぁとため息をついた。

そして、早くも言い合いをはじめる、とは言っても獄寺が勝手に山本にいちゃもんをつけているだけなんだけど、その光景をチラリと見て、ツナが早く来てくれないか、と切実に願った。














「それはこっちのセリフだよ〜〜〜っ何してんの!?」











聞こえてきたツナの声に、立ち上がって振り返る。そこには今まさに早く来てくれないかと願っていたツナが、真っ青な顔でこちら、いや、正しくは獄寺と山本の方を見ていた(って、いつの間にかリボーンもいるし・・・・・!)どうやら、ツナも今日のことを今まで知らなかったらしい。なんとも悲運な星のもと生まれた少年だとつくづく思う。ツナは私の方に気付くと、小さく「ごめんね、」と呟いた。ちょ、ツナ悪くないのに!!ツナの優しさに、私は心底ツナが良い奴だとあらためて感じた。どうして、こんな良い奴が苦労しなくてはならないんだ、とその原因を作ったリボーンをキッと睨みつけた。しかし、私が睨んでもリボーンはニヤッと嫌な笑みをうかべるだけ(クソッ、む、むかつく!)






私はそんなリボーンに何も言えずに、またしゃがみこんでチョコバナナの準備を始めた。このまま、無事に終わればよいんだけど、と思えば「お前らもショバ代用意しとけよ」と言う声に、顔だけをあげる。












「ここらを取り締まってる連中に金を払うのが並盛の伝説らしいっス。ここはスジを通して払うつもりっス」






「(いやいや、なにその伝説ー?!そんなの伝説にするなよっ!!)」











可笑しな並盛の伝説に私は頭を抱えた。なんか、ね、こう思い当たる人が一人いるんだよね!だって、あのお方以外の方がそんなショバ代とか要求してたらあの方が黙ってないと思うんですよ。ほら、僕の街で何やってんの?とか言って、絶対咬み殺そうな気がするんだよ。あぁぁぁ、いや、でも実際にショバ代を集めるのは彼の部下か、もしれないしね!!うん、大丈夫。彼がこんな人の多い所にくるわけがない。そう、ないに決まってる
「5万」・・・・・キタァァァ!あの方だぁぁぁぁ!!













「ヒバリさんー!!?」











ツナの叫び声で私は本当にあの方だ、と言うことが分かってしまった。私は頭をさげて、ただひたすらこのまま雲雀さんがどこかに行ってくれることを願った。
こんな群れていることがバレたら私は絶対に咬み殺される(あの人、絶対私だけ厳しい!)大丈夫、雲雀さんから見えるのは私の後ろ姿だけだし、ば、バレるわけがない。そうだ、この状態なんだ。ば、バレわけ
?」・・・・・・バレタァァァァ!!や、やばいぞ、と思いつつ中々ふりかえることができない。うわ、ちょ、冷や汗でてるんだけど!

だけど、このまま無視しようとしたら絶対に咬み殺されるに違いないと思った私はゆっくりと雲雀さんの方を振り返った。ツナが心配そうにこちらを見ている。獄寺はどうやら何か雲雀さんに文句を言ってるけど相手にされてないらし、い(・・・・・なんか獄寺可哀想!)山本にいたっては呑気に笑っている。あれ、なんか誰も私を助けてくれなさそうじゃない?










「こんなところで何やってるの?」





は俺達の手伝いを」





「君には聞いてないんだけど」











「(かなりご立腹だー!)」












折角ツナがフォローをいれてくれたにも関わらず雲雀さんは不機嫌そうにこちらを睨んでいる。や、やばいぞ、私!あわわぁぁ、もうだからこんなリボーンの手伝いなんて来たくなかったんだよ!そもそも、私なんも関係ないのにさ!その町内出し物にも参加してないしさ!な、な、なんで、そんな怒られなきゃいけないのさ!(あぁぁ、もうちょっと命の危機だ!)













「まったく、草食動物の手伝いをするくらいなら風紀の仕事手伝うとかできないわけ?」







「(別に自分から手伝ってるわけじゃないんですけどー!!ってか、風紀の仕事手伝うくらいならツナ達手伝いますからぁぁ!)」









そんな風紀の仕事ってどうせショバ代の回収なんでしょう!そんな仕事するくらいならチョコバナナ売ってたほうが何倍も何百倍も良いに決まってる!!
それに、今日は風紀の仕事があるなんて一切言われなかったし、むしろいつも嫌々風紀の仕事をやってるのを見てるんだから、私が自主的にやるなんて考えないでくださいよね!・・・・・なんて、まぁ、言えるわけもなく私はただただ、あはは、と苦笑いをうかべた(何も言い返せないのが悔しいっ!)










「まぁ、がいたところで役にたつとは思えないけどね」






「(カッチーン!なら言うなよな!)」











雲雀さんの理不尽な言葉にカッチーンと来たものの私は何も言うことはできなかった(小心者ですから)なんで、夏祭りなんてあるんだろう。夏祭りの存在理由さえ考えてしまうくらい、この夏祭りはとても私にとって憂鬱なものへとかわってしまった。もう、さ、夏祭りってなんなんだろう、ね!

チラリ、と視線のはしで風紀委員に潰される屋台を見ながら、私は深々とため息をついた。







夏祭り、来る?!



(むしろ、来ないで!)










 






(2008・02・07)