さて、誰もが浮かれる夏休み。そんな浮かれる夏休みを過ごしている人たちがうらやましいと思うのは私だけ?だって、どうせ夏休みは部活ばっかりだし、部活が無いときはやりたくもないのに風紀委員の手伝いをさせられて(そして、草壁さんに癒されて)、リボーンの特訓に付き合わされて(そして、ツナに癒されて)、たまにディーノさんがケーキをお土産にもってきてくれたりして(そして、ロマーリオさんに癒されて)・・・・・あれ、結構自分の夏休みが充実してるかも知れない。
「(それに骸さん達と会ったら会ったで、千種くんに癒されてるしなー!)」
制服で学校からの帰り道を、あまりに暑い日差しの中、流れる汗を拭いながら、歩く。汗のせいか、制服が体に張り付くような感覚がして、さらに暑さに気がめいった。もうこれは、アイスを食べるしか私は回復できるすべはない!と思い、コンビニへと向う。今の私にとってはどんな癒しよりも、アイスが一番の癒しだ(ふふ、何を食べようかなー!)アイスの事を考えて少しだけ、足取りがかるくなる。そして、もうコンビニはすぐそこ、という場所で、骸さんを見つけた。
見つけた骸さんに、私は眉をひそめた。骸さんのとなりには見たこともない女の人が一人。あはは、骸さんやるねーなんて思いつつ、こういうときは話しかけてはいけないだろうと思い私はそのまま骸さんを無視していこうと決めて、歩き出せば、骸さんと目があった。その瞬間に、骸さんが笑った(あれー、嫌な予感がするんですけどー!!)うわわぁぁ、これはなんだか嫌な感じだぞ!普通、彼女と居る時に他の女に微笑みかけることなんてするか。いや、するわけがない。そう思いながら、骸さんの様子を伺えば「」と私の名前を呼んだ。
「む、骸さん、こ、こ、こんにちは」
「えぇ、こんにちは」
普通に挨拶する私と骸さんを彼女らしき人がジッと見ている。なんて、私の方を見るときは睨んでるんですけどねー!(こ、恐いよ・・・・!美人な人が睨むとより一層恐いのに!)彼女が居る時に話しかけてくるなよな、骸さん!と思いつつ、何も言えずにいれば、骸さんが女の人のほうをみてニッコリと笑った。その瞬間の女の人の顔は完全にノックアウトされた時の顔だった。
「すいませんが、僕はこの子と約束がありますので」
「え、えぇ、骸さ、・・・ムグッ!(手で口塞がれたー!!)」
「そ、そうなの。なら、連絡先でも」
あぁ、どうやらこの美人な女の人は骸さんの彼女じゃなかったらしい。しかし、知り合いでもなさそうな雰囲気。一体この女の人は誰なんだろうと、骸さんに口を塞がれたままぼぉっと二人のやり取りを見ていれば、骸さんの視線が一気に厳しいものになった。その目があまりに、鋭くて恐い、と思ってしまった。私の背筋にゾクッと冷たいものがきて、先ほどまで流れていた汗が、ひく。女の人も骸さんの雰囲気がかわったのを感じたのか、少し怯えているように見えた。
「しつこい女性はあまり好きではありませんから」
はっきりと伝える骸さん。女の人はその言葉を聞くと顔を真っ赤にさせて「もう、結構よ!」と怒鳴ってどこかに行ってしまった。カツンコツンとハイヒールの音が遠ざかっていくのが聞こえる。あんな美人な女の人にもなびかないなんて骸さんは男として大丈夫なんだろうか。そして、女の人のハイヒールの音が聞こえなくなったと思えば骸さんがやっと私の口から手をのけてくれた。
「いきなり何するんですか!」
「クフフ、すみません。あの女性があまりにしつこくてを利用させていただきました」
利用させていただいた、と言う言葉に私は嫌な感じを受けた。人を利用する、何て言う言葉私は嫌いだ。しかし、今そんな事骸さんに言ってもどうしようもないと思い私は何も言わずに骸さんを睨んだ。
「そんなに睨まないで下さい。には本当に感謝してますから」
「・・・・・それでさっきの美人な女の人は誰なんですか?」
「さぁ?急に話しかけられたので。・・・・・・まぁ、俗に言う逆ナンですね」
「うわー、骸さん凄いですね。さっすが、顔だけは良いことはありますね!」
「それ褒めてるんですか?褒めてないですよね。むしろ、僕の良い所は顔だけしかないって言ってますよね?」
「他に骸さんに良いところなんてありましたっけ?」
「ひ、酷すぎます・・・・!」
暑い時に骸さんの相手をするのも、なんだか更に暑くなってしまう感じがしてしまう(それだけ骸さんがウザいということだろうか)もう正直骸さんの相手をする暇もありません。と言うかアイスを私は買いたいんですと思い、骸さんに「じゃあ、私はこれで」と言えば引き止められた。本当にこの男、私にアイスを買わせないつもりなのだろうか。クソッ、すぐそこのコンビニでガリガリ君が私を待っていると言うのに!!しかし、ここは頼まれたら断れない日本人。私は踏み出そうとした足をとめて、その場に踏みとどまった。
「なんですか、骸さん」
「はこれから何を?」
「アイスを買おうと思って、そしたら骸さんによって引き止められたんです。最悪です。アイスが恋しくてたまりません」
「・・・・・僕とアイスだったらどっちが大切なんで「アイスです」」
骸さんの質問に、私は間髪をいれずに答える。いや、正しくは質問の途中で私は答えてしまったんだけど、(だけど、そりゃアイスの方が大切に決まってるじゃないですか!)「つれませんね」と微笑む骸さんが正直うざったくて仕方がない。なぜ、こんなにウザイのに、まったく暑そうじゃないんだ!私はこうして汗がでて、今にも暑さに負けそうなのに骸さんは涼しそうな顔をして汗一つかいていない。まったくもって、うらやましい。
「僕もお供しますよ」
「・・・・・・・・・いやいや、別にお供して貰わなくてもかまいませんから」
「奢りますよ?」
奢る、と言う一言はとても大きなものだと思う。いや、確実に私にとっては奢ると言う言葉は魅力的な言葉だ。一瞬で先ほどまでちょっと暑いなか骸さんの相手はうざったいなーなんていう気持ちなくなってしまうぐらいの効果を持つ。凄い、凄いぞ、奢るという一言は。まさか。これだけの効果を持つとは・・・・・・!そして、私は大人しく骸さんと一緒にアイスを買いにコンビニへと向った。
骸さんにガリガリくんを買ってもらい、袋をあけて、一口ガリガリくんをかじれば、至福の風が通り抜けるような感覚をうけた。おう、これだよ!これ!やっぱり寒い時にアイスを食べるのも良いけど、アイスの良さが分かるのはこういう暑い夏の時だけ。それに奢ってもらったものというものは、自分で買うものよりも美味しく感じるから不思議だ。奢ってくれた骸さんに感謝しつつ、私はもう一度ガリガリくんをかじった。未だ空の高い所で太陽が私達を照らしている。
「クフフ、そう言えばもうすぐ夏祭りですね」
「あぁ、そう言えば・・・・・骸さんは誰かと行くんですか?」
「いえ、僕は人の多い所は苦手なので」
なんと言うか骸さんらしい答えだ。確かに骸さんは人の多い所は苦手そうだ(見た目だけは儚げな少年に見えないこともないしね!)しかし、夏祭りか、と私は考える。なんだか良くないことが起こりそうな予感がするのは私のただの考えすぎか。いや、でも人の多い所というものは事件だっておきやすい。それに、人の群れを嫌がるあのお方の存在もある。これは今年の夏祭りは大人しく家で過ごした方が良さそうだと考えていると、骸さんが私の名前を呼んだ。
「。きっと夏が終わればもっと楽しい事がまっていますよ」
「どう、いう意味ですか?」
意味ありげに微笑む骸さん。夏が終われば、一体どんな楽しい事がまっているんだろうか。だけど、本当にそれは楽しい事なんだろうか。微笑む骸さんの瞳はどこか冷たくて、いつもの微笑みとはどこか違っている雰囲気をかもし出していた(でも、もしかしたら私の勘違いかもしれない)私の言葉に骸さんは、更に微笑みを深くして「今は秘密です」・・・・・秘密なら言わなければ良いのに、と思いつつ今はということはいつか言ってくれるということだろう、と思いそれ以上は言及することはしなかった。いや、正しくは出来なかったのかもしれない。
「(骸さんの瞳が、恐い)」
恐いと感じたのは、あの日以来か。初めて骸さんを恐いと感じたあの日。その日以来に微笑む骸さんが恐くて、私は何も言えなくなってしまう。私はただただ微笑む骸さんを見るしかできなかった。しかし、それも少しの出来事で、すぐに骸さんはいつもの骸さんへと戻った。雰囲気も、柔らかく、恐い、何ていう感情はいとも簡単に消えてしまった。
「ほら、急いで食べないとアイスがとけてしまいますよ?」
「あぁ、私のガリガリくんが!」
骸さんに言われて急いでガリガリくんを食べていく。この暑い夏。きっと、去年までの夏とは一味違った夏になることは間違いない、と言うかもう既に去年までの夏とは全然違う(去年はマフィアなんてものに関わるなんてまったく思ってなかったし!)これから、一体何があるのだろうか、と思いながら私は骸さんが奢ってくれたガリガリくんを美味しく頂いた。きっと、今まで以上に振り回されることは間違いないだろう。そして、頭の片隅では骸さんの言葉が、頭から離れなかった。
いつもと違う夏がきた!
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(2008・01・22)
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