今日はなんと、部活が休みという素晴らしい日!最近めっきり休日はツナ達と特訓と言う名のリボーンからのいじめにあっていたから、私にとって部活が休みでツナ達からの連絡が何一つない日、今日は最高の日だと感じていた。放課後は少し今時の女子学生らしく、女の子な会話を弾ませ(とは、言っても私の友達であるりりんは異端児で、嬉しそうに男同士の恋愛について語ってくれた。あれ、私そんな趣味無いのにな・・・・?)しかし、そんなりりんも部活に行き、暇になった私は帰って家でゆっくりしようと思い、鞄を持って学校をでた。
「・・・・(なんか、あんな人どこかで見たことがあるような)」
靴を履き替え、人通りの少なくなった校門を一人でくぐれば、学ランを着たリーゼントの男が立っている姿が見える。うーん、ここ最近であんな男を見たような気がするんだけどなぁ。まぁ、思い出せないし、私にはあんな知り合いなんていないから、別に思い出せなくても気にしなくても良いか、と思い、私は帰る足を速める。段々と、男と私との距離は縮まっていき、私は男の目の前を通った瞬間かけられた言葉に私は驚きを隠せなくなった「お前が、か」・・・・・・あれ、今この人私の名前呼んだ?えっ、そんなまさかー!!と思いつつも、男は私の目の前にたち、もう一度私に聞いた。
「お前が、だな」
「・・・・」
いや、確かに私はですけど、貴女は?私、知り合いにはそんな時代錯誤なリーゼントにしている人なんて一人もいないんですけど(確かに悲しい事に知り合いには変人は多いけどな!)何か思い出そうとして、私は目の前に立つ男の顔をジッと見つめる。そして、一つだけ思い出した。そうだ、私見たことがある。この人ではないけれど、この人と似た人を、並盛中の校門の前でたくさん。しかし、この人が仮に並盛生としても、一体私に何の用事があったのだろうか。
「委員長が学校で待っておられる」
「(い、委員長?)」
委員長って誰だよ、と思ってみればある一人の人物がすぐに浮かんできた。いやいや、でもそんなまさかその思い浮かんだ人に、私は呼ばれる理由も、ここで待たれる理由も何一つないはずである(そうだよ、そんなありえるわけないよ!)自分でも馬鹿なことを思い浮かべてしまったと、思い頭を横に振る。けれど、私が思い浮かべている、あの人ではないという確証が欲しい。私は勇気をだして、目の前の人に聞く。
「あの、委員長って言うのは・・・・・?」
恐る恐る、といった様子で私は聞いた。お願い。お願いだからあの人の名前だけは出さないで下さい、と心の中で願う。しかし、そんな願い誰にも聞き入られる事もなく、あっさりと音を立てて崩れ去ってしまった。
「雲雀だ「あ、すみません。私、用事を思い出してしまいましたので失礼させてもらいますっ!!」」
このままバックれてしまおうと、私は急いでその場を後にしようとする。だって、まさか本当にあの人の名前がでてくるなんて誰に想像ができただろうか!(私ははっきり言ってありえるわけが無いと油断していた)きっと、誰にも想像できなかったはずである。逃げようとする私の邪魔をするかのように、目の前の男は私の丁度帰る方を立ち塞ぎ、ある一枚のメモ紙をサッと差し出してきた。これはなんだ、と思い私は足をとめて、メモ紙を受け取って、見る。
『逃げたら咬み殺す』
・・・・・あぁ、この人本当に何者なんだ。私が逃げようとすることまで想定していたなんて、予知能力でも持っているんだろうか。メモ紙を見た私は、渋々逃げずにこのリーゼントで時代錯誤な少年についていくことを決めた。どうか、咬み殺されませんように。ただただ、願うことしかできずに、私はハァとため息を一つはいた。(それにしても、一体何の用事があるんだろう・・・・)
「草壁さんは風紀委員なんですか?」
「あぁ」
リーゼント男もとい、草壁さんは本当にあの雲雀さんお部下なのかと思うほど良い人だった(良い人すぎて涙がでそうだよ・・・!)なんで、こんな人があんな極悪非道な男の下で働いているんだろう。
あ、でもこの前、私雲雀さんからケーキ頂いたんだよなー。いや、それでも私咬み殺されそうになったし、極悪非道には変わりは無いか!はは、雲雀さんに初めてあった日のことは今でも忘れられないぜ・・・!それにしても、草壁さんって雲雀さんから何か弱みでも握られてるんだろうか?そう思って草壁さんの話を聞いていても、「委員長は本当に尊敬すべき方だ」とか言って、弱みを握られているようには聞こえない。どうやら、草壁さんは心の底から雲雀さんを崇拝と言うか、尊敬しているようで、人間ってやっぱり何を考えているのか分からないものだ。
「(あぁ、もう並中が見えてきちゃったよ・・・・)」
段々と見えてきた並中の校舎に思わずため息が漏れる。どうして私こんなところにいるんだろ・・・・?自分の運命を若干悔やみながら、私はあることを思い出した。そういえば、私、この前並中の校舎に入る事を禁止されていたような気がするんだけど?「そう。今日は赤ん坊に免じて見逃してあげるけど、次校内で見かけたら容赦なく咬み殺すからね」うん、私は確かに雲雀さんからそう言われた。なのに、なんで私は今、雲雀さんに呼び出されて並中に向っているんだろう(ふと、思った疑問)
「草壁さん、私なんで雲雀さんに呼ばれたんですか?」
「俺は何も聞かされてないぞ。ただ、委員長にお前を連れてくるように言われただけだ」
どうやら草壁さんもしらないらしい。いきなり行って、咬み殺される事なんてない、とは思いたい。だけど、あの雲雀さんのことだからそれもありえないことではない。あはは・・・・・って、全然笑えないから!咬み殺されたりなんかしたら、私死んじゃうから!(あぁ、少しだけパニックになってきた!)そんな事を考えながら草壁さんと話していれば、私はいつの間にか並中に足を踏み入れていた。
流石に、そこまで人は残っていないけれど。部活動生が残っている中で、学ランを着た風紀委員の草壁さんと他校の制服を着た私は注目の的だった。これは断じて自意識過剰なわけではなく、実際に私は何度も部活動生と目があい、その度にすぐに目を逸らされたのだ。
そして、その目はみんな同じように私を同情するかのような可哀想なものを見るようなめだった(あれ、これって泣いてよいの?)校内に入れば風紀と書かれた腕章をつけた草壁さんのような学ランの男達を何人も見かけた。草壁さんは風紀委員の中でも上位に位置しているのか、同じようなリーゼント男達が私達に会うたびに礼をしていく。
「さぁ、ここだ、」
「・・・・(帰りたい)」
応接室と書かれたプレートのあるドアの前で草壁さんは足を止めた。なぜ、応接室なんだ。たかが、委員会がなぜ、応接室と言う普通ならお客様を通すような部屋を使っているんだ。いや、そんな事考えても無駄だ。相手はあの、雲雀さん。彼に常識が通用するわけがない・・・・・「委員長、連れて参りました」青ざめる私を他所に、応接室のドアをノックする草壁さんが、少しだけ、ほんの少しだけ憎らしい(あぁ、そうさ!良い人だから、そこまで憎めないんだよ・・・!)
「入って良いよ」
中から聞こえてきた声は、スッと透き通るような、だけど、どこか一声で人を黙らせられるような威圧感のある声だった。私はこの声を何回か聞いた事がある。この声は、そうだ、「ずいぶん遅かったようだけど」ドアの開いた応接室のなかには、黒い学ランを肩から提げた雲雀さんが夕日をバックに立っていた。あぁぁぁぁ、もう嫌だ!!帰らせて!!と心の中で、私は必死に願う。本当にこの人何者なんだ。応接室を使える生徒。きっと、彼にとっては先生なんて敵じゃないんだろう。それが校長先生であっても(ようするに、学校内では一番彼が偉い、のか?・・・・・・・み、認めたくない!)
「すいません、委員長」
「草壁、君はもう良いよ。下がって」
「はい、失礼しました」
そう言うと草壁さんは頭を下げて歩きだそうとする。あぁ、行かないでください、草壁さん!!行ってしまいそうな草壁さんの腕を掴もうとしたけれど、その時には既に応接室のドアは閉まりかけていた。ぐっと、息を飲み込む。今は、この応接室に雲雀さんと二人きり。別の意味で心臓がドキドキする(オプションで冷や汗も一緒にでてくる)なかなか、雲雀さんのほうを向く決心は私にはできなかった。
「それで、遅かった理由は?」
私の後ろで雲雀さんの声が聞こえる。しかし、遅かった理由は、なんて聞かれても私はここまで来る予定なんてまったくもって先ほどまでなかったんだ。もともと、今日は家でゆっくりしようと心に決めておいたんだ。まぁ、結局は雲雀さんのせいで、夢に終わってしまったんだけどね・・・・!私にゆっくりできる時間なんてあたえられないのだろうか。
「・・・放課後、少しの間友達と話してたんです」
「ふーん、そう」
興味なさそうなに返事をする雲雀さん。自分から聞いておいてこの態度はないんじゃない?なんて思ったけれど、さすがにいえるわけがない。そもそも、私は何故、今日ここに呼ばれたんだろうか。一応並中侵入禁止令が出ているはずなのに。気になった私は雲雀さんのほうを向く。夕日をバックにする、雲雀さんは見た目だけならとても綺麗だ。そう、見た目だけならね!
「あの、一つだけ質問してよいですか?」
「何?」
「私、なんでここに呼ばれたんですか?」
「なんでって、仕事を手伝ってもらおうと思ったから」
さも、悪気がなさそうに淡々と告げる雲雀さん。私、そんなの初耳なんですけど。それもこれって拒否権なんて初めから用意されてないよね?私もそこまで馬鹿じゃないから分かるんだ・・・・・拒否イコール死を意味するという事を。「最近、忙しくて書類の処理がたまってるんだ」といいながら雲雀さんの視線は、ゆっくりと机の上に膨大に積み上げられていた紙の束の方にうつる。どうやら、私が家でテレビを見て過ごせるのはもっと、先になりそうだ。
「・・・・・(全然終わる気配が見られないんだけど)」
目の前の膨大に積み上げられた書類は未だ終わりが見えないかのように高く積み上げられたままだ。それなりに頑張ったから時間も経っているんではないかと、携帯を出してみてみれば、まだ30分も経っていない(まるで授業中の時計の進みにそっくりだな。すっごく時間が経つのがゆっくり感じるんだよね・・・・!)私はそのまま携帯を机の上において応接室にただ一つしかない机で仕事をしている雲雀さんにバレないように、ため息をついた。
「(あぁ、私なんでここにいて、仕事まで手伝っているんだろう・・・・)」
「ねぇ」
急にかけられた声に思わずビクッと肩が揺れる。静かな応接室で雲雀さんの声は思ったよりも、響いた。そして、雲雀さんの方を向けば、先ほどまで雲雀さんの目の前にあった書類は半分以上減っていた。私はまだ4分の1も終わってないと言うのに、私に頼む前に雲雀さんが自分ひとりでやった方が早いんじゃないかと思ってしまう。いや、実際に早いんだから私なんかに頼まないで、自分ひとりでやってくれ。(まっ、言えるわけ無いんですけどねー)
「自販機で飲み物買ってきてくれない?」
「えー、嫌ですよ。めんどくさい」
「はい、これお金ね。君の分も買ってきて良いから」
「(あれ、私の言葉無視ですか?)」
私には人権と言うものはないらし、い・・・・(自分で言って悲しくなってきちゃった)だけど、私は自分が思っていた以上に現金な人間みたいなようで、奢ってもらえるなんて行っても良いかなぁなんて考えている。私は雲雀さんから預かったお金を持って、携帯を机の上に置いたまま応接室を後にした。他校の廊下を一人で歩くと言うのは、何だかとても切ない気分になるものだった。本当に、私、こんなところを一人で歩いているんだろう。
まさか、パシリ決定?
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(2007・12・18)
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