頼ってはいけないと分かっているのに

私はいつも人に頼ってばかりだ





あせない想い.6








4時間目終了のチャイムがなると同時に先生が教室から出て行った

いつもなら先生が出て行った瞬間お弁当をとりだすのに今はあまり食べる気がしない








〜?ご飯食べないの?」






りりんが私の前の机に座りながら言った







「あ、うん。ちょっと食欲なくて・・・保健室に行って来るね」



「大丈夫なの?」








りりんが心配そうに聞いてくるから私は「大丈夫」と言って笑って見せた







5時間目が始まるまで保健室で休ませてもらおう。そう思って立ち上がると机の横にかけた紙袋に目がいった

このジャージの持ち主が誰か分かったのは良いが私には直接渡す勇気はない



それに一度断ってしまった手鷲さんには頼みづらい・・・









そうだ、鳳に頼もう










鳳は優しいから私のお願いも聞いてくれると思う







私は日吉のジャージの入った紙袋を持って教室を出た






隣の教室をうかがえば教室の中には鳳らしき人は見られなかった

運がよければ保健室に行くまでに鳳と会うかもしれないと思った私は紙袋を持ったまま保健室に向かった
















保健室に向かうに連れて人が少なくなってきた

それに少し頭がぼーとしてきた。もしかしたら熱が上がってきたのかもしれない







さん」








名前を呼ばれ後ろを振り向けば数人の女子がいた

誰だ?と考え込んでいるうちに腕を引っぱられて校舎裏まで連れてこられた











あぁ、思い出した





この人たちは手鷲さんをいじめていた人たちだ

思い出したところで後の祭り。私はいつの間にか私は囲まれていた









「あんた自分が少し鳳君と仲がよいからって調子にのってるんじゃないわよ!!」







「この前はよくも邪魔してくれたわね!!」








女子たちの私を罵倒する声が聞こえる。でも何て言っているかなんてよく分からない


私はただただはっきりしない頭で大人しく女子たちの声を聞くしかなかった











一通り言い終わったのだろうか女子たちが言うのを止めた

頭を上げて女子たちの顔を見れば満足した様子で私のことを見ている











何も言わない私に勝ったとでも思っているのだろうか?







「もう調子にのらないことね」









調子にのった覚えはないのだけれど、そう言うと彼女たちはどこかに行ってしまった

彼女たちが行ってしまうのと同時に私は力が抜けその場に座り込む










心なしか呼吸も荒い気がするのは自分の勘違いではない




やばい今にも倒れそうだ・・・・








っ!!」








自分の名前が呼ばれたような気がした





それはとても懐かしい響きで私は涙が出そうになった



名前を呼んだ人が誰か気になったが薄れゆく意識がそれをさせてくれなかった
































目が覚めるといつのまにか保健室にいた

まだ覚醒しない頭で周りを見渡せばりりんが少し怒ったように立っていた





「あんたにとって保健室って校舎裏なわけ?」





少しじゃない、かなり怒ってる






「ご、ごめん」






私はただ謝ることしかできずにりりんの方を見る

そんな私を見てりりんは何を思ったのかにっと笑った





「別に怒ってるわけじゃないわよ」




「えっ?!」




「どうせこの前の子達に呼び出されたんでしょ?」








呆れたように笑うりりん。やっぱり隠し事できない





「ほら、鞄は持ってきてあげたから帰りなさい!!」





りりんが私の鞄をベッドにドサッと置いた






「ありがとう」




「じゃあそろそろ教室に戻るからね」









保健室にかけられた時計を見れば、5時間目がもう少しで終わるところだった

りりんはわざわざ鞄を持ってきてくれたのか







「ねぇ、りりん?」



「どうしたのよ?」



「何で私ここにいるの・・・?」








思えば私はさっきまで校舎の裏にいたはず



校舎裏で意識がなくなる寸前に自分の名前を呼ぶ声が聞こえて、気付いたら保健室に居た

りりんが運んできてくれたのかと思ったけど、りりんにはそんな事無理だと思うし






「それはじきに分かるわ」







苦笑交じりにりりんは言った


じきにってどういうことかなぁとか思ったけど、その時はあまり気にしなかった










「無理しちゃ駄目よ、





そう言うとりりんは保健室から出て行った

先生は少し今用事で出かけているらしく保健室には私一人






時計の動く音だけが部屋に響く
















さすがに先生がいないのに勝手に帰るのはどうかと思った私は先生が帰ってくるのを待っていた

5時間目が終わって先ほどの静けさからうって変わって教室の外からは生徒の騒ぐ声が聞こえる








もう、帰っちゃおうかなー








でも鞄の横に置いてある紙袋をこのまま持っていくわけにもいかない



どうすればコレを日吉に返せることができるだろうか












ガラッ




「ヒッ?!」



「?!」




急に開いたドアに思わずビックリしてしまった

ゆっくりと振り返ればそこには日吉が立っていた








「・・・もう熱は大丈夫なのか?」


「え、あ、うん」






急に話しかけられて驚いたけど普通に返せたと思う

なんで日吉が私が熱をだしていることを知っているんだろうとか思ったりはしたけど

鞄の横を見れば日吉のジャージの入った紙袋





もしかして神様は今これを渡せと言いたいのだろうか








「帰るぞ」



「はっ?!」





日吉が意味の分からないことを発した



ただ唖然と日吉を見る私にかまわず日吉は私の鞄を手に取った

今気付いたけど日吉はテニスバックと自分の鞄も持っている







「ほら、行くぞ」








そう言うと日吉は私の腕をつかんで歩き出してしまった




私は未だ何が起こったか分からない







「は、離して・・・!!」










思わず腕を払いのけてしまった

だけどなんで急に私を気遣う様になったかが分からない







私から離れていったのは日吉からなのに








「一人で帰れるから・・・」





そう言って鞄を日吉から奪うように取った







「これもありがとう。日吉君」







日吉のジャージの入った紙袋を日吉に押し付けるように渡す


これで私と日吉のつながりはまた無くなった









私は保健室のドアを開けて出て行こうとした















あぁ、この懐かしい響きは




さっき途切れていく意識の中で聞いたものと同じだ

あまりに久しぶりすぎて忘れていたけどあれは日吉の声だったんだ














泣きそうになる



もう日吉の前では泣かないと決めたはずなのに

日吉の方を振り返れば真っ直ぐと私のほうを見ていた

















再び日吉が私の名前を呼んだ














 一  生  呼  ん  で  も  ら  え  る  と   思  っ  て  な  か  っ  た  の  に













   




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(2007・04・08)