逃げていると言われても
私はここにはいたくないんだ
あせない想い.4
昼休みになる頃には私の気分は最高に悪かった。
なぜなら、テニス部の連中が休み時間ごとに用もないはずなのにクラスに尋ねて来ているからだ。
確かにこのクラスにもテニス部の人は何人かいるが今までにこんな経験はない。
それに、クラスの女子もたかがテニス部のレギュラーが来る度に騒ぐのは止めて欲しい
そして、昼休みは鳳と日吉がクラスを訪れた。日吉がこのクラスにくるなんて2年になって初めてのこと
このことに私は思いっきり動揺してしまったのか食べ始めたばかりのお弁当を床に落としてしまった
やってしまった・・・・
一瞬でクラスが静かになる。周りの目がとても痛い
もしかしたら日吉に見られているかと思ったらこの場を離れたくなった
でも、みんな直ぐに自分たちの会話を楽しみだした。
とりあえず中身をすべて拾い集めた私はりりんに売店に行くことを伝え教室をでた。
りりんはついてきてくれると言ってくれたけど、なんだか悪い気がして断った。
私は教室をでて階段を下りずに上へとのぼる
屋上のドアを開けると少し肌寒い風が頬をなぜた。
さっきまでの気分の悪さはいつの間にかなくなっていた
「う・・・ん、今何時・・・・?」
あのまま日吉のいる教室に戻りたくなかった私はチャイムがなっても屋上にいたがいつの間にか寝てしまっていたらしい。
「・・・ん、何これ?」
まるで私が風邪をひかないようにとジャージがかぶせられていた。私はこれに見覚えがあった。
一年前のあの日、日吉が着ていた物と全く同じジャージだった。
日吉のもののわけがない―――――――
そうは思っても私は少し涙目になっていたと思う。
時間を確認しようと携帯を見たがぼやけて見えにくくなっていた。
それでも何とか見えた時刻は四時になっていた。私は誰のものともわからないジャージを持って教室も早足で戻った。
教室には誰もいない
今日は水曜日。テニス部が休みの日だからか女子たちの応援のあの騒がしい声も聞こえてこない。
しかし、今日部活がないからといってこのジャージをいつまでももっている訳にはいかない。
ガラッ
私は思わず音のした方を見た。
「あ、さん」
音は手鷲さんがドアを開けた音だった。
私の額には何故だか分からないけど冷や汗がうかぶ。
「さん、午後から具合が悪かったんでしょう?大丈夫?」
手鷲さんが心配そうに聞いてきたけど私には覚えがない。
あぁ、りりんが教室に戻らない私のためにうまく誤魔化してくれたんだろう。
「あ、うん。もう全然大丈夫だよ!!」
「そっか・・・昨日私のことを庇ってくれたでしょ?だから呼び出されたんじゃないかと思って・・・良かった」
なんて良い子なんだろう、と思った。私なんかを心配してくれて、
日吉が惚れていてもおかしくない子。
「それって・・・テニス部のジャージ?」
手鷲さんに聞かれて、私は右手に持っているジャージの存在を思い出した。
「えっと、誰のか分からないんだけど落し物みたいなんだ」
あはは、と笑いながら言えば手鷲さんは納得したみたいな顔で微笑んでいた。
「誰が落としたんだろうね?そうだ、良かったら私が渡しておくよ?」
「えっ?!良いよ、私が渡しておくよ!!」
私はなぜか手鷲さんの申し出を断っていた。
自分でも何故断ったのか分からないけど、頭で思うよりも声が先に出ていた。
「そっか、分かった」
手鷲さんになんだか悪いことをしてしまった。
時刻はそろそろ五時になる。私は鞄をもって帰ろうと手鷲さんの近くに行った。
「じゃあね、手鷲さん!!」
「あ、ちょっと待って!」
呼び止められた私は何事かと立ち止まった。
「昨日のこと、若君には言わないでくれる・・・・?」
私 の 中 で 何 か が 崩 れ た 気 が し た
← →
ブラウザを閉じてお戻り下さい
(2007・04・04)