アイスを買いに行くと決めた私は急いで防寒具に身をつつむ。吾郎は危ないから俺が買いにいくと煩かったが奴が買いにいくともっと面倒くさいことになるのは分かりきったことである。
吾郎であるなら痴漢にあう可能性は私よりも格段にはねあがるだろう。

中身云々の前にやはり痴漢というのは見た目を重視するだろうと思う。吾郎は平凡な容姿をした私の兄とは思えないくらいに、可愛い男の子であり見た目であればきっと痴漢の良いかもだ。例え吾郎が男であると分かっても、もしかしたら男でも良いから、なんて思う輩は出てくるかもしれない。




そして一番心配なのは痴漢を働いた相手の身でもある




我が兄ながら、私が護身術を習っていたようにそれなりに武術の心得はある。いや、本当見た目やら言動からはとても考えられないとは思うのだけど多分私よりも強いんじゃないだろうか。一対一で組合をしたことはないので分からないが、筋肉のつき方といい、きっと強い。
ついでに言うと相手にも容赦がないような性格をしているので痴漢を働いた輩を半殺し……とまではいかないにしても、それに近いくらいにまでボコボコにしてしまう。
だから、決して私が吾郎のことが心配である、ということはない。確かに吾郎が私の分のアイスを食べたのだから買いに行かせれば良いとは思うけども、お風呂からでたばっかりの吾郎の髪は半乾きであるし、コンビニだってここから遠いというわけでもない。

自分でさっさと行ってさっさと帰ってくるのが一番利口だと思ったわけだ。



「じゃあ、行ってきまーす」

「ちょ、。危ない人にはついて行ったら駄目だからね!あと、あと寒いから早く帰ってくるんだよ。っていうか、やっぱり俺が
「うんうん、分かった。早く帰ってくるから。じゃあ、留守番頼んだ」



吾郎の長くなるであろう言葉を遮りドアをあける。一気に冷たい風がふいてきて、思わず身震いしてしまったが、着こんだ防寒具のおかげがそこまで冷たくは感じない。
静かな夜道を一人歩くが、人っ子一人見つからずこれなら不良に絡まれる心配もないだろう、と一息ついた。とぼとぼと、一人くらい夜道を歩いてい。あまり恐いと感じないのはこの一年の経験のおかげか、きっと去年の私がここを歩いていたのなら多少なりとは恐いと感じていたことだろう。なんだか、自分がまた一歩女の子の道から遠ざかったような気がしないこともないが気にしないでおく。


不良よりも、痴漢よりも、恐いものは結構この世の中に存在することを知った一年だった。まぁ、その人たちとの出会いもまた大切なものだと思ってしまっている自分がいるのだからだいぶ重症だろう。


目の前は分かれ道。街頭に照らされた左右の道を交互に見やる。右にいけば、パイナップル味のアイスがあるコンビニが。左に行けばイチゴミルク味のアイスが売っているコンビニがある、

さてどちらに買いに行こう。


パイナップル味のアイスを買いに右の道へ
イチゴミルク味のアイスを買いに左の道へ