ホワイトデーと言えば女の子はお返しが貰える日であって、バレンタインとは違って、何かを準備する日ではない、と私は今までそう思って生きてきた(生きてきた、と言う言い方は少し大げさだけど)


でも、この前のバレンタインではディーノさんからはあんな大きい花束を貰ってしまったので、一応お礼を準備した。バレンタインの時はチョコレートを上げたので今回は、クッキーを作ってみたのだけど、まぁ、とてもじゃないけど、あんな花束の足元にも及ばないことは分かりきっている。特に、その、値段とか、さ!ディーノさんから直接花束の値段なんて聞いたわけじゃないけど(って言うか聞けるわけがない!)、絶対にあの花束が高いことは間違いない。いや、うん、本当、あんな……高いもの貰っても良かったのかな?なんて一ヶ月経った今でも思ってしまうぐらいだ。











!」



「あれ、ディーノさん?」










学校帰り、ツナの話によればディーノさんが日本に来ているということを聞いていたので、このさいツナに頼んでツナに渡して貰おうと思いながらツナの家に向っていれば、目の前から笑顔のディーノさんがやって来た。隣にはロマーリオさんもいる。良かった、とホッと息を吐いたのはもう反射的なもので、他意はない。ロマーリオさんがいないディーノさんが散々な目にあって来たのを知っているからこそ、の行動で、ほら、ね。ディーノさん部下いないと色々大変だからさ……!










「嬢ちゃん、元気にしてたか?」



「はい!お久しぶりです、ロマーリオさん!」









ロマーリオさんの笑顔は本当に癒し系だ。さっすが、私の中では草壁さんと並ぶくらいの癒し系ではある(癒し系でダンディーな人なんてなかなかいないよ!)「おいおい、俺を無視するなよ」と苦笑いしながらディーノさんが言えば「はは、ボス、嫉妬か?」なんて言うロマーリオさん。はは、それはないですって!と思いながらも微笑ましい二人の姿に私は自然と頬が緩んだ。いや、まぁ、だけど嫉妬はないですよ、ロマーリオさん。嫉妬するならもっと綺麗で色っぽい女の人とかがロマーリオさんに話しかけたりした時なら考えられるけど、こんな平凡な女の子が話しかけてもねー!あり得なさすぎて、笑えてくるってものですよ!










「ば、馬鹿!そんなんじゃねぇよ」




「ボスも若いねぇ〜」










ディーノさんの反応に、私もロマーリオさんのように「若いな」と感じた。私よりも、ディーノさんのほうが10歳も年上なのにも関わらずだ。あぁ、私一体何歳なんだよ。いや、確か、ツナ達と同じ年だったとは思うんだけどなー。はは、最近疲れることが多いから、なんか、もう気分は上司から嫌味を言われても何も言い返せずに家と会社の間で板ばさみ状態のサラリーマンなんだよね。あれ、私本当に女子中学生なのかな……!ディーノさんのほうが若いって感じる時点でなんかもう終わってるよな!ガッテム!



だけど、気分はサラリーマンと変わらないんだよなー。もちろん嫌味な上司って言うのは、雲雀さんのことなんだけどね!あの人、嫌味しか言えないんだ!!私の仕事にケチつけるしかできないんだ!・・・・・・って、やばいやばい。今はディーノさんとロマーリオさんとの会話に集中しないと。二人とも忙しいからたまにしか会えないんだから。










「ええっと、それでお二人ともどうしたんですか?」




「あぁ、俺達は、な「嬢ちゃんにお返しを渡しに来たんだぜ?」ロマーリオ!」











ディーノさんの台詞を遮るロマーリオさん。この人絶対にディーノさんをからかって楽しんでいる。可哀想にディーノさん。必死に何かをロマーリオさんに言っているディーノさんを見ていると、とてもじゃないけどマフィアのボスになんて見えない。でも、ディーノさんはボスなんだよね。それに、癒し系でダンディーなロマーリオさんもマフィア、なんだ。こんな二人でも、優しく私に接してくれる二人でも、人を殺したりしてるんだろうか(そんな事思いたくはないけど、でも、そうなんだろうな)










「嬢ちゃん、俺からはこれな」



「あ、ありがとうございます!」









急に現実に戻され、私はロマーリオさんからお返しと言われたそれを受け取る。包まれたそれが何なのか分からなくて首をかしげれば「さすがに嬢ちゃんの年でぬいぐるみは子供っぽすぎたか?」とロマーリオさんが困ったように言った。いやいや、そんな、むしろ、若い頃の自分を思い出せそうですよ!(だから、私は一体何歳なんだ!今だって十分に若いはずなのに……!)それにロマーリオさんからもらえるだけで嬉しいですから!










「だから、少し子供っぽいんじゃねぇかって言っただろ?」



「だけどよ、この年の女の子に何をやったら良いかなんて分かんねぇだろ、ボス。それにボスだって最後の最後まで悩んでたじゃねぇか」



「うっせぇ、ロマーリオ!」





「あ、あの、ロマーリオさん!ぬいぐるみすっごく嬉しいです!あの、本当ありがとうございます!!」










頭を下げて、言えば上から「それは良かった」とロマーリオさんの声が聞こえてきた。顔を上げれば嬉しそうに笑うロマーリオさんがいて、あぁ、本当に癒し系だ、と思っていれば「じゃあ、ボス。あとは若いお二人で楽しみな」といって、ロマーリオさんは歩き出していた。え、これってどういう事?と思っていればディーノさんがボソッと「ったく、ロマーリオの奴」なんていっているのが聞こえた。

良かった、私ロマーリオさんからは若いと思われているらしい。ホッと一息と言うのはこういう事を言うんだろうな!はは、見た目は中学生だから、若いって思われるのは当たり前のことなのに……っ!

















「あ、はい?(って、そう言えば)」









ディーノさんに名前を呼ばれて思い出す。そう言えば、私もディーノさんにお返しを準備していたんだ。って言うか、私がお返しをするべきなのにまたディーノさんからお返しを貰っても良いんだろうか・・・・・・・いや、まぁ、そこらへんは考え出すと面倒くさいことになりそうなので、この際置いておくことにしておく。とりあえず、鞄をガサゴソしながら、私は「?」とディーノさんに名前を呼ばれ、「ちょっと、待ってください」と言いながら鞄の中から手作りクッキー(自信作)を取り出した。










「えっと、私もお返しです。この前の花束の」











笑いながら言えばディーノさんは「ありがとな!」と言いながら受け取ってくれた「のチョコレート美味しかったから、このクッキーも絶対美味いんだろうな」と言うディーノさん。そこまで期待はしないで頂きたい。確かに自信作ではあるけど、ディーノさんがいつも食べているであろうクッキーにはとても及ばない(ディーノさんって何か高いクッキー食べてそうなイメージがあるし!)

だけど、これだけ嬉しそうに受け取ってもらえるととても嬉しい。自分の感情をここまで素直に表現できるディーノさんは、どんなにマフィアのボスであっても、綺麗だ。顔ではなく、中身が。もちろん、ニカッとまるで子供ような笑顔で微笑むディーノさんは綺麗なんだけど。










「本当は、この前言ったように赤いバラの花束にしようかと思ったんだけど、な」










困ったように笑いながらディーノさんが私の方に差し出してきたのは、箱、だった。包装された箱。とてもじゃないけど、バラの花束には見えない、それは、中身が見えないから私には何が入っているのかは想像できない












「えっと、実は俺もクッキーだったりするんだよなー」











はは、まさかかぶるとはおもってなかったんだけどな、と笑うディーノさんに私は「クッキー大好きですから」と言った。好き、ではなく大好きにしたのは、ディーノさんが少しだけ私と同じものを用意したことを気にしているように感じたから、安心させようとしてだ。本当にこれじゃあ、私の方が精神的には大人じゃないのか、と思ってしまう(私は中学生。私は中学生)
ディーノさんはその言葉にホッと息を吐いて安心したかのように、また微笑を深くした。やっぱりディーノさんの笑みは素敵だし、綺麗だ(ちょっと、私今後自分の顔鏡で見れないかも!)










「そのクッキーバラの花びらが入ってるんだぜ!」



「(す、凄!)」










こういうところにこだわるからイタリア人は女性を扱いを分かってるなんて、言われるんだろう。凄いですよ!ディーノさん!きっと、このテクで今まで何人もの女の人を虜にしてしてきたんだろう。よっ、天然ホスト!(・・・・・私は一体何をしたいんだろう)(我に返って後悔することが多すぎるぞ、最近)










「だけどよ、本当は赤いバラの花束にしようと思ったんだけど」




「(やっぱり天然ホストだ。この人、花言葉分かってこれ言ってるもんなー)」





「ロマーリオ達が、ボスが、まぁ、そのな、」









歯切れの悪い言葉を言うディーノさん。一体、ロマーリオさんたちに何をされた・・・・いや、もしかしたら言われたのかもしれないけど、「あいつ等が俺がロリコンだ、なんて騒ぎ出してな」・・・・・・・え?ちょ、ちょ、ちょっとその言葉は可笑しいでしょ!










「(ロリコンって・・・・・・!)」








ロマーリオさん達もそんな言葉知ってるんだなーとか、思うところは一杯あるけれど、ディーノさんがロリコンだなんて、あるわけがない。そもそも、私なんかをディーノさんが相手にするわけがないのに(綺麗なディーノさんと知り合いと言うだけでも、私としては奇跡に近いと思うのに)どうせ、ディーノさんをからかう為にロマーリオさんが言った言葉をディーノさんは本気にしてしまったんだろう。まぁ、でも、ディーノさんがロリコンは絶対にないと思うけど、でも、雲雀さんがロリコンって言うのは未だ、諦めてないんだよなー。さすがに雲雀さんにこんな事言ったら咬み殺されるから言えないけど、さ!







「まぁまぁ、ディーノさんがロリコンじゃないって言うのは分かりましたから。ですけど、ロリコンだって悪いことじゃないんですよ?」



?」



「恋愛に年の差なんて関係ないですし、それに私、雲雀さんはロリコンだって信じて疑いませんから!」




「へぇ、恭弥ってロリコンなのか!」




「いや、私の推測なんですけど、でもディーノさんだって思いません?雲雀さん、イーピンちゃんには優しいって」








あぁ、確かに、とディーノさんが頷く。ディーノさんが言うんだから絶対に雲雀さんがイーピンちゃんに優しい事は間違いない、と考えていれば、ディーノさんが思いもしなかった一言を言った。









「まぁ、恭弥はにも優しいと思うぜ」








あり得ない言葉に、私は言葉を失う。いやいやいやいや、それは絶対にない!絶対に!と首を横に振りながら必死にディーノさんに伝えれば、そうか?と、笑った「だけど、」とディーノさんの声がいつもより真剣みを帯びたものに変わり、私は顔をあげ、ディーノさんの顔を見た。真剣な顔。笑った顔は綺麗、だと感じるけれど、やっぱり真剣みを帯びたディーノさんの顔はとてもかっこ良いものだった「だけど、恭弥がロリコンなら俺も、ロリコンでも構わないかな」そう言って、ディーノさんは私と視線を合わせる。冗談で言っているとは分かっているのに、私の心臓はドクンと跳ねた。本当にこの人、ロリコンってどういう意味か分かって言ってるんだろうか(絶対に分かってないに違いない!)






年の差なんて、関係ない










アホらしい後日談







(2008・03・14)

雲雀さんロリコンネタをいつまでも引っぱっていてすみません(土下座