「俺、のことが好きなん、だ」






俺がありったけの勇気を振り絞ってに自分の思いを伝えれば、はとても驚いた顔をして「・・・・・は?」と言った。のその顔と声が場の雰囲気と全然違って思わず笑ってしまいそうになる。その後、は俺のこの言葉に何を思ったのか眉を寄せ怪訝そうな表情に変えて俺を見てきた(あぁ、きっと本気にされてないんだろうな)



俺はもう一度、ゆっくりと「が、好きなんだ」と言った。俺は、ずっとが好きだった。この想いを伝えた今、君はどうするんだろう。不安。だけど、俺はにこの想いを伝えられた事で、満足もしていた。駄目ツナな俺でも好きな子に好き、だと伝えることができた。













目の前のは俺の言葉にまた目を見開いて驚いたけど、急に悲しそうな顔になり、その瞳には涙がうかんでいた。どうして、が泣きそうなんだ?と思い「?」と俺が声をかければの瞳から涙が零れ落ち、俺の制服を濡らした。
どうして、が泣く?君が俺を好きで、俺が君を好き。これで、ハッピーエンドじゃないの?(少なくとも、俺はそう思っていた)(自分でも思うほど気楽な考えだ)









「ご、ごめんね」








突然謝る。俺には訳がわからない。何を謝ってるんだよ、




泣いていること?それとも、俺の気持ちに対して?だけど、さっきは俺のことを好きだ、って言ったじゃないか。これは俺の自惚れだったって言うわけなのか。いや、それなら逃げる必要なんてこれっぽっちもなかったはず。が屋上から出て行く必要なんて一つもなかったんだ。じゃあ、は今なんで泣いて、それも俺に謝ってくるんだよ。の瞳からはどんどん涙が溢れてきて、俺の制服や、コンクリートを濡らしていく。


がこんな風に泣くのをはじめてみた。俺はを泣かせたいわけじゃないのに……そう思って俺は一つの考えがうかんだ。もしかして、は俺の言葉を友達としての好き、と受け取ったんじゃないだろうか。は鈍いから、それも考えられる












「・・・・・・・ねぇ、。言っておくけど、俺はのこと友達としてじゃなくて、女の子として好きなんだから、ね」









驚いた顔でこちらを見る。あぁ、やっぱり勘違いされていたのか(俺たちって最後の最後まで勘違いしたり、されたり)ゆっくりと笑みを浮かべれば、は困惑そうな表情をして「そ、そんな、ことあるわけ、」と言った。そんなことあるわけない、とは思うの?





それこそ、そんなことあるわけがないとはっきり言い切ることができるよ。俺がを女の子として好きじゃないわけがないんだから。だから、俺の気持ちを勝手に決め付けて、一人で泣かないで欲しい。


俺はになら自分の気持ちをさらけ出せるんだ。が泣かないというのなら、いくらでも言葉を囁いて、安心させたい。








「あるよ。嘘じゃない。」


「だって、綱吉くんは、」








京子ちゃんのことが好きなんじゃないの?と弱弱しくて聞いてくるの言葉に、俺は思わず言葉を失った。だって、ずっと中学3年のときからを目で追って同じクラスになって俺にしては頑張って話しかけて、なのに「まさか、そんな勘違いされてたなんて、」思いもしなかった。
好きな子にずっと、そんな勘違いされていたとは思いたくもなかったんだ。そして、その事でがつらい思いをしていたなんて。自分の不甲斐なさに嫌気がさす……だけど、まさかが俺が京子ちゃんのことを好きだと思っていたなんて、もそうとう鈍い。鈍すぎると思う。







「つ、綱吉くん?」



「結構分かりやすかったと思ってたのに・・・・・」



「えっ、ちょ」








そうだよ、俺ってかなり分かりやすかったと思うんだけど「山本とか、獄寺くんにもすぐバレちゃったのに、」なんで肝心の好きな子にはバレることもなく勘違いされちゃってんだよ!(いや、バレるのはバレるので困るけどさ!)「あの、えっと、」俺の言葉に驚いて焦ってる、。俺は顔をあげてをまっすぐ見た。その瞳にはもう涙がなくて、安心した。







「・・・・・・・・、今から俺が言う事しっかり聞いてね」






もうがそんな下らない勘違いをしないよう。俺の気持ちをはっきりと伝える。俺が好きな子は京子ちゃんじゃなくて、もちろん他の女の子でもなくて、目の前にいる、と言う女の子だけと言う事を「俺は確かに、京子ちゃんが好きな時もあった」俺の言葉に僅かにつらそうな顔をする。ごめん、そんな顔をさせて。だけど、俺のことが好き、だからそんな顔をして、つらそうにしてくれるんだろ?と思うと、少しだけ嬉しい気持ちになってしまった(不謹慎だ)でも、俺が言いたいのはこんなことじゃなくて、この先なんだ。







「だけど、今はのことが好きなんだ。京子ちゃんでもなく、他のどの女の子でもなくて、俺はが好き」




「つなよ、し、くん」




は、俺のことどう思ってくれてるのか、な?」







俺が聞けば、もう乾いてしまっていた瞳からまた涙が一粒落ちた。どうして、そこで泣くんだよ。と思いつつも、ゆっくりと久しぶりに俺の目の前でが笑ってくれて、俺はその笑顔に目を奪われたような気がした。本当に久しぶりに見たの笑顔。この笑顔は、今、俺だけのための笑顔。凄く嬉しい。


やっぱりは笑った顔が一番素敵だ。ハルの言ったことは俺も同意。だって、こんなに素敵に笑う子を俺はしらない。この笑顔が、俺は好きなんだ。






「私も、綱吉くんが好き。誰よりも、好きだよ」







その言葉に俺は恥ずかしくなって、それをごまかすかのように笑った。さっきだって同じ言葉を聞いたけど、さっきのはが俺に言いたくて言った言葉なわけじゃなくて、咄嗟に出た言葉だった。だけど、今の言葉はが俺に伝えたいと思って、言ってくれた言葉で、そう考えるだけで胸が熱くなる。微笑むがあまりに可愛くて、俺はいつの間にかを自分の腕の中に閉じ込めていた。「やっと、捕まえた」ここまで来るのは本当に長かった。







でも、もう離さない、から。

















(2008・03・11)