誰もいない放課後の廊下をあちこちに走り回る。だけど、どこにもはいなくて俺は一度教室に戻る事にした。
ガラッ、とドアを開ければ先ほどを屋上へと引っぱって行った時にいた人たちももういなくなっていて、教室にはの隣の席に座っている獄寺くんがいた。獄寺くんは俺がドアをあけてことで思いっきり顔をあげる「10代目!」といつものように声をかけてくる獄寺くんにを見ていないか、と聞けば返ってきた言葉は「逃げられました」の一言だった。
あぁ、もうの奴!と叫びたくなる気持ちを抑えつつ、俺はハァと息を吐いた。一体どこに行ったんだよ、。俺の知っているは俺に大人しく捕まってくれるとは思ってはいないけど、こんな時ぐらい捕まってくれても良いのに。
「10代目」
「何、獄寺くん?」
実は、と言いながら話し出す獄寺くんの言葉に俺は息を飲んだ。ハルからついこの前、が泣いていたと言うのを聞かされた。俺はそれを聞いても結局俺は何をすることもできなかった。
まさか、そんなが俺の為に泣いてくれていたなんて俺は知らない。
その事を知っていれば俺はに泣かないで。俺の為に泣かないでくれ、と声をかける事ができたかもしれない(いや、きっとできないだろう)(俺は弱虫だから。それに彼女が俺の為に流してくれた涙が愛おしい)俺が勝手に心配していただけで、が泣く事なんてこれっぽっちもないのに。好きな子を心配するなんて当たり前だろ?好きな子を心配しない奴なんていないわけない、と思う。
「出過ぎたマネをしてすみませんでした!」
頭を下げてくる獄寺くんに俺は「ううん、そんなことないよ」と応えた。俺が臆病だったから、いつまで経ってもに何もできなかったから代わりに獄寺くんがしてくれたんだ。俺は本当に友達に恵まれている(なのに、獄寺くんにまで嫉妬するなんて俺って凄くかっこ悪いな、)「ありがとう、獄寺くん」その言葉に獄寺くんが安心したような顔を見せた。きっと獄寺くんのことだから大変な事をしてしまったんじゃないかと、思っていたんだろう。
そんな気にすることなんて一つもないのに。俺のためにしてくれたことなんだ。そして、俺はそれに応えないといけない。
だから、俺はを何が何でも捕まえて、俺の気持ちを伝えないといけないんだ
教室に残るの鞄に俺は視線をうつす。まだ学校にいることは確かだ。ずっと、ここで待っていればいずれ戻ってくるかもしれないけど、俺は待っているよりも自分の手でを捕まえたい。息がきれていようとも、額を汗が流れようとも、そんな事関係ない。
今まで自分で動く事ができなかったんだ。今、動かないでいつ動けと言うんだよ。また走り出そうとする俺は獄寺くんに「先に帰ってて良いよ。俺、捕まえてくるから!」と言葉をかけて、教室を出ようとする。だけど、その前に「お、ツナじゃん」と言う声がすぐ後ろから聞こえてきた。
「山本・・・・?」
「あれ、獄寺もいるじゃねぇか。何してんだ?」
ユニフォーム姿の山本に俺は素直に「を捕まえるんだ」と伝えた。普通ならこんな事言ったら意味が分からないと思うんだけど、山本はずっと前から俺の気持ちに気づいているからその言葉で気づいたんだろう「そっか、頑張れよな」といつものように微笑みながら言った。山本は何だかんだ言って、鋭いから、俺が今から何をしようとしているのか分かったんだと思う(だけど、山本はさっき俺が教室からを引っぱって行った時には既に部活に行ってたんだよな)
さて、絶対にを捕まえてみせる、と気合を入れなおし、両腕の袖を捲り上げた。気合は十分。運はない俺だけど、頑張ってを見つけることにしよう。走り出した俺の背中に友達の応援する声が聞こえてきて、これは何が何でも捕まえないといけないな、と思った。
俺にも応援してくれる友達がいるんだ
(2008・03・07)
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