まだ違和感の残る私を呼ぶ声に振り返れば、そこにはいつもの様ににこやかな笑顔を浮かべた沢田くんが立っていた。え、もしかして持田先輩と一緒にいるところ見られた?!なんて思って心配になったけれど、沢田くんなら話せば納得してくれると思うし、周りに言いふらすような人でもないから心配することはないだろう。それに、別に沢田くんに変な勘違いされたとしても、沢田くんは友達。これがもしも好きな人とかだったら必死に弁解とかしたと思うけれど、友達にそこまで必死に弁解してもそれはそれで逆に怪しくなるような気がした。











、そのノートどうしたの?」







「あ、これ?!数学の先生がか弱い私に無理やり押し付けてきたんだよ!酷くない?!」







「あぁ、そうなんだ。俺、持つの手伝うよ」







「えっ、別に大丈夫だよ!(か弱いのところスルー?!私、何気に痛い子じゃん!)







「ほら、貸して」











沢田くんは私の制止も半ば無視する形で、私の手にあったノートをなんとすべて持ってくれた(ワオ、ありえないんだけど!!)さすがの私もすべて持ってもらうのは悪い気がして、沢田くんの手からノートをとろうとしたのだけど、沢田くんは既に歩き出していてなかなか沢田くんからノートをとることができなかった。いや、ノート全部持ってくれたことはすごく嬉しいって言うか正直ラッキーってかんじなんだけど、その相手が沢田くんって言うのはなんだか申し訳ない気がしてならない。どれだけ、良い人なんだ沢田くん!!だけど持ってくれるのは半分だけで良いんだよ!どこぞやの、使えない先輩と一緒で!











「ちょ、ちょっと、沢田くん!半分は持つよ!」







「これぐらい俺一人で持てるよ・・・って、名前で呼んで良いって言ったのに」







「えぇ?!いや、なんだか沢田くんを名前で呼ぶなんて(恥ずかしくて)できないよ!!」







「でも、俺はのこと名前で呼んでるし、気にしなくても良いよ。それに、みんな俺のこと名前で呼ぶしね」











あぁ、確かに考えてみれば沢田くんのことをはみんな名前で呼んでいる。これは私がただただ意識しすぎているだけなのだろうか。だけど、私が沢田くんを意識する理由なんてこれっぽっちもないし、それに沢田くんがこれだけ名前で呼んでも良いと言ってくれているのに名前で呼ばないのは、失礼なのかもしれない。私はう〜んと少しの間考える。友達なのだから名前で呼び合うのは普通の事なのかもしれない。うん、そうだ。これは普通だと、少し自分に言い聞かせれば沢田くんが私の名前を呼んだ
?」彼のほうを見れば、少しだけ心配そうにこちらを見ているような気がした。











「・・・えっと、じゃあ、綱吉くんって呼んでも良い?」







「え、あ、うん!全然良いよ!!」











焦ったかのような声をだす綱吉くん・・・え、もしかして私、綱吉くんって呼んだりしてる?クラスのみんなは沢田くんのことを確か、ツナって呼んでたようなきがするんだけど。と考えてみれば、山本も他の人たちも沢田くんのことはツナって呼んでいる。もちろん獄寺くんは沢田くんのことを10代目って呼んでいるんだけど、よくよく考えてみれば綱吉くんなんて呼ぶ人はいない。私としたことが、なんてことをしてしまったんだ!と後悔してももう遅い(何を後悔しているのかは自分でも良くわかないんだけど)それに今さら、呼び方をかえるって言うのも変なことだしなぁと考えて見れば自分の気楽な頭は別に綱吉くんって呼んでも良いかなんて考え出していた。











「・・・なんだか、綱吉ってあんまり呼ばれないから新鮮な気分かも」







「た、確かにみんなツナって呼ぶもんね。やっぱり、私もツナくんて呼んだほうが良い?」







「ううん。やっぱり綱吉って呼ばれると嬉しいから」











にっこりと嬉しそうに微笑む綱吉くんはかっこよいなぁ・・・って、言うか私ずっと綱吉くんにノート持たせっぱなしじゃないですか。私が持つって言ったのに上手いこと綱吉くんに話しずらされたなぁ、と思えば私の目にはまだ少し遠いけれど自分のクラスのプレートが見えてきた。











「そういえば、さっき持田先輩と一緒にいた?」







「あ、うん。途中までノートもってもらったんだ(綱吉くんとは違って半分しか持ってくれなかったけど)







「・・・ってもしかしなくても持田先輩と知り合い?」







「うん。中学の時の委員会の先輩と後輩だったんだよね」







「そうなんだ」







「そうなんですよね。あとね、一年の時、綱吉くん持田先輩に決闘申し込んだでしょう?実は私もあれ見に行ったんだよね」







「えぇ、あれ見たの?!」







「うん。私、実は名前も知らなかったけど綱吉くんのほう応援してたんだ」







「えっ、持田先輩の後輩ってさっき・・」







「そうなんだけどさ、持田先輩のあの勘違いにはさすがにムカついててね。綱吉くんが持田先輩を負かしたときは気持ちよかったよ」







「へ、へぇ」











少しだけ頬を引きつらせる綱吉くん。いや、本当にあの時の私は一生懸命に綱吉くんを応援していたんだよ。だって、あの可愛い京子ちゃんをあたかも自分のものかのように扱う持田先輩を私は殴りたくて殴りたくてたまらなかったんだから。別に、私は持田先輩の事好きなのに、京子ちゃんのことしか眼中に無いなんて!なんて気持ちは少しも(いや、微塵も)無かったのだけど、あの時の持田先輩は調子に乗りまくっていてあまり先輩としても人としても好きな方じゃなかったのだ。あの事件の後は、良い先輩なのかもしれないと思いつつ、今の関係まで築き上げたんだけどね。今は良い先輩だとは思っている。たまに殴りたくなることもあるけど・・・って、もしかしたら殴りたいと思う数の方が多いのかもしれない(・・・持田先輩、嫌いじゃないんだよ)




























綱吉くんと一緒ににぎやかな教室に足を踏み入れる。もし、この教室に一緒に入ってきたのが持田先輩だったら色々言われたのかもしれないのだけど、綱吉くんと一緒だったためか誰も何も言わなかった。良かった、持田先輩は途中で帰らせて。あぁ、そうだ!!今度、持田先輩に会ったら綱吉くんはノート全て持ってくれたんですよって言う事にしよう。



モテる男がどういうものなのか、持田先輩に教えてあげなければ、あの先輩は一生独身かもしれない(それはさすがにないかもしれないけど)そんなくだらない事を考えていれば、教卓の上に綱吉くんがノートを置いた。重かったと思うのに、綱吉くんは特段疲れたようすもなくて、私は少しだけ驚いた。











「ありがとう、綱吉くん」







「別にこれぐらいどうってこと無いよ。それにには数学教えてもらったり御世話になってるし」







「あ、それもそうだね」







「えぇ、そこ認めちゃうの?!」







「あはは、冗談だよ、冗談!!だけど、本当に助かったよ。ありがとう!」











私がお礼を言えば、先ほどまで教室にはいなかった獄寺くんが教室に入ってきて「10代目!」と叫んだ。一体、10代目とは何のことなんだろう。獄寺くんは私の方をチラリと見てから、再び綱吉くんに視線をずらして、綱吉くんの近くに寄った。やはり、獄寺くんも綱吉くんの横がよく似合う人なのかもしれない。山本も京子ちゃんも、獄寺くんも綱吉くんの横が良く似合う。私は確かに、この教室に来るまで綱吉くんの横にいたのだけれど、なんだかしっくりこなかったのが正直なところだ。いや、彼がもっている雰囲気はすごく穏やかで好きなのだけれど、私が彼の横が似合わないと思うのである。これは、綱吉くんの問題ではなく私の問題なのだ。まぁ、友達として付き合っていくのにはなんら関係の無い話なのだけれど。











「おい、!10代目にこんなの持たせてるんじゃねぇぞ!!」







「あ、うん?(獄寺くんって本当に綱吉くんのこと尊敬してるんだなぁ!素晴らしいな、友情って!)」







「ちょっと、獄寺くん!俺が手伝いたかったから手伝ったわけでは悪くないから!!」







「10代目は本当に優しいんですね!も10代目の優しさに感謝するんだな!!」







「あはは、そうだね。ありがとう、綱吉くん」











私が言えば、満足した様子の獄寺くんは自分の席へと戻っていった。あぁ、綱吉くんって本当に良い友達を持っているよね。りりんももう少し優しかったら良かったのに、なんて思っていれば綱吉くんが小さい声で
「ごめんね」と言ってきた。私は別に良いよ、と笑いながら言ったけど、これがもし私ではなくて京子ちゃんだったら獄寺くんはあんな風に言ったのだろうか、なんて考えてしまった。もし、私ではなく京子ちゃんだったら彼もこんな風に言わなかっただろう。だって、京子ちゃんは綱吉くんの好きな子で(これは女の勘だけどね!)大切な人なんだから。それを今まで一緒に行動していた友達である獄寺くんが知らないわけが無いのだから。














私と、彼の友達について


























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(2007・09・30)