さて、ただ今6時間目の体育の時間。お昼の後の体育と言うのは授業の内容によってはお腹が痛くなってしまうと言う最悪な時間だけど、今日の女子の体育はグランドで鉄棒(ラッキー!!)それに先生もさっき放送で呼ばれてしまって、今のところほとんどの女子が自分達の会話に花を咲かせている。そんな会話にどうも混ざる気になれなかった私は、同じようにグランドで体育に励む男子の方を見てみれば今日はどうやら野球をしているらしい。元気だな、と思いながら回りを見渡せばそれを見ようと数人の女子がフェンスの周りに集まっているのもみえた。私としてはフェンスの周りに集まっている女子の方が元気に見えるから不思議だ。
「キャー、山本くん!!」
「獄寺くん頑張ってー!!」
やはりこの2人は人気があるのか応援の声が絶えず聞こえてくる。確かに山本は、野球部のエースと言われるだけあって先ほどからすごい周りとの男子に圧倒的な差を見せ付けているから応援するのも良いけど、獄寺くんはやる気がないのかあまり本気でやっているようには見えない。あんな風に、真面目にやろうとしない人を応援するよりも、沢田くんの様にどんなに出来ないとしても一生懸命頑張っている人を応援する方が良いのに(別に私が沢田くんを応援したくて言ってわけじゃなくて)
「も男子の野球を見ましょう!」
「あ、うん」
りりんに引っぱられるように少しだけフェンスの近くによれば、先ほどよりも野球に励む男子の姿がより見えるようになった。その中の一人である沢田くんは確か中学の時は沢田くんが入れば負けるなんて言われてたけど、今はどうやらそんなことはないらしい。それほど上手いとは感じはしないものの、下手ではないように見える。あぁ、沢田くんも成長したんだなぁなんて何故か親目線で見ていればいつの間にか私の横には京子ちゃんと花ちゃんが来ていた。
「あら、駄目ツナもなかなか頑張ってるじゃない」
「もう、花ったら、ツっ君は駄目じゃないよ!」
京子ちゃん、沢田くんをかばったりするなんて優しいなぁ。これはどこからどう見ても(いや、聞いてもか?)彼女が彼氏を庇っている様にしか聞こえないよ。ふふ、やっぱり私の勘は外れてはなかったんだ・・・!!今度、りりんにでも自慢話にでもして聞かせてやろう!なんて、くだらない事を考えながら野球にも飽きてしまった私は空を見上げた。今日も良い天気だ。大空・・・なんて、こういう空のことを言うんじゃないかなって、あれ、何かこっちの方に向ってきてるんですけど?カラスか何かが急降下でもしてるんじゃないかなって思ったのに残念ながらそれはハズレで、それは勢いよくこちらに飛んで来る野球ボールだった。
「えっ?」
だけど、それは運が良いのか悪いのか、私のほうじゃなくて隣にいる京子ちゃんのところへと飛んできている。遠くの方で男子やら女子やらが叫んでいるのが聞こえているけど、こんな時って実際本人はどっから飛んで来ているか分かんなかったりするんだよね・・・って、今はそんな事関係ないだろ私!!とりあえず、今は本来京子ちゃんを守るべき彼氏(仮)の沢田くんはいないから、誰かが京子ちゃんから野球ボールを守らなくては・・・って、違う違う。京子ちゃんから野球ボール守ってどうするんだよ!野球ボールから京子ちゃんを守らないと私!!
「京子ちゃん、危ない!!」
「キャッ!」
「っ!!」
「っ!」
りりんの叫ぶ声が聞こえた瞬間には見事にボールは私の肩にクリーンヒット★・・・正直、星なんてつけている余裕ないけど、それでも京子ちゃんじゃなくて私に当たってよかった。学校のアイドルでもある京子ちゃんに野球ボールなんか当ててみろ、学校中の男子から当てた奴が血祭りに祭り上げられてしまう。ズキズキと痛む肩を抑えれば、少しだけそこに痛みがはしった。だけど、目の前で心配そうにしている京子ちゃんを更に心配させる事なんて私にはできない。無理やりとまではいかないけれど、私は笑顔をつくった。
「ちゃん、大丈夫?!」
「もちろん!私って意外と丈夫だから」
「ったく、心配させないでよね」
りりんが心配してくれるなんて明日はやりでも降るんじゃないの・・・?って、まぁ何だかんだ言ってりりんは本当は優しいから心から心配してくれたんだろう。私は飛んできた野球ボールをボールの当たっていない腕のほうで拾いあげて、走り寄ってくる山本の方を見た。多分、この野球ボールは山本の場外ホームランでしたって所だと思う。だって、場外ホームランなんてこのクラスの男子の中じゃ野球部である山本ぐらいにしか打てないし。あはは、この私に怪我をさせた罪はでかいぞ、山本よ!!
「悪っ、大丈夫か?!」
「山本、覚悟は良いね?」
ニッコリと笑顔をつくりながら、山本に近付いていけば山本は冷や汗をたらしながら一歩後ろへとさがった。実は私は山本とは仲が良い方だったりするし、ここはきつい一言・・・いや、一撃をかましてやろうと思ったのだ。もし、私じゃなくて京子ちゃんに野球ボールが当たっていたとしても、山本の場合だったら血祭りにされる事はなかっただろう。だってそんな事したら他の男子が、学校中の女子に血祭りにあげられてしまうしね!
「ちょっと待て!」
「ふふ、誰が待ちますか!」
「ま、待って、さん!!」
ちくしょー、誰だよ今から山本を沈めてやろうと思ったのにと声のするほうを見ればそこには少しだけ息をきらせた様子の沢田くんがこちらを見ていた。やっぱり友達思いだから、私をとめたのかと妙に感心してしまう。だけど、沢田くん、山本は一回くらい殴っておかないと分からない男なんだよ。それに、殴られたぐらいで泣き出すような男じゃないから心配しないでと言おうとしたら、それを言う前に沢田くんが口を開いた。
「・・・さっきのボール、俺が打ったんだ」
「うえぇ?!(なんだよ、この叫び声!)」
「ツナのやつ、スッゲーだろ!!俺でも難しいのに、ここまでボール飛ばしたんだぜ」
「や、山本全然すごくないから!本当ごめんね、さん!」
まさか、あのボールを沢田くんが打ったものだなんて思いもしなかった。この会話を聞いていると思われる周りの女子も驚いているようだし、私だって正直ビックリだ。山本だって、飛ばすのを難しいって球を沢田くんが飛ばすなんて、中学の時の沢田くんからはとても考えられないことで、沢田くんって凄い・・・!!とボールが当たった事も忘れてしまうぐらい、感動してしまった。
「気にしなくて良いよ!!それにしても凄いね沢田くん、場外ホームランなんて!」
「俺のときと態度違いすぎじゃね?」
「うるさいですよ、山本くん?」
ギロリと山本を睨めば、すぐに山本は黙った。だけど、ただのクラスメイトに「慰謝料払えや!」なんて言えるほどずうずうしい性格じゃないし、あんな風にいえるのは友達。それも仲が良い山本だからから言えることで、ただのクラスメイトの沢田くんには言えないことなんだよ!!うんうん、と自分勝手に納得していれば、少しだけ肩が痛くなってきた。時計を見れば、もうそろそろ授業は終わるけど、保健室には行ったほうが良いと思うと言うか、行きたい。そう思っているとりりんがグッドタイミングで「、とりあえず保健室行ってきなさいよ」と言ってくれた(さすが親友、私のことよくわかってる!!)
「うん。じゃあ、保健室行ってくるね」
「あ、俺も行くよ!!」
「大丈夫、大丈夫!!」
沢田くんはついて来てくれるとは言ってくれたけど(本当沢田くんは優しいね!)、それも何だか申し訳なくて、私は素直に断った。それに、好きな女の子の前で他の女の子と2人きりになるなんて少女漫画の中じゃタブーだ!例えが少女漫画ってところが自分の恋愛経験の無さを語っているけど今はそんな事関係ない。私は京子ちゃんと沢田くん、2人の間にわって入ろうなんて気はこれっぽっちもないんだから。
態度の違いについて
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(2007・09・12)
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