騒がしい教室の中で私は次の授業の準備をしていた。次の授業はなんと、あの最悪教師の数学の授業(あぁ、最悪!)しかし、この前の授業もサボってしまったし、またサボるわけにも行かないよなーと言う気持ちがあって、私は結局サボることもできずに数学の授業の準備をしている。そして、そんな中考えるのはいつも綱吉くんのことばかり。好きになって貰えないのなら、考えるのなんて止めてしまいたいと思う。だけど、私はいつの間にか綱吉くんのことばかり考えてしまっている。























突然呼ばれて振り返ればそこには、綱吉くんの姿。そして、その手には数学のテキストが握られている。もしかして、と思いつつ綱吉くんを見れば、困ったように笑っていた。私は、無理やり笑顔をつくり、綱吉くんに話しかける












「綱吉くん、どうしたの?」




「あのさ、悪いんだけど、」




「もしかして、数学聞きにきたり?」




「あ、うん」






「(やっぱり、)でも、私なんかに聞かない方が良いと思うよ。私、最近あの数学教師がムカつきすぎて授業真面目に受ける気がでないんだよね」











本当はあんな最悪な数学教師の授業だけど、私なりに真面目に授業を受けているつもり。だけど、綱吉くんに数学を教えるなんてもうしたくないんだ。いや、違う。本当は私を頼ってくれて嬉しいと思ってる。でも、これ以上、綱吉くんと近付きたくない。近付いたら、もっと好きになってしまうことなんてもう分かりきっていることなんだ「だけど、が一番教え方上手いんだよ」きっと、その言葉も綱吉くんを好きだと気付く前だったらとても嬉しかったと思うよ。だけど、今はその言葉が痛い。優しい綱吉くんの言葉がとても痛い。




綱吉くんに優しい言葉をかけて貰うたびに好きになってしまう。綱吉くんに優しい笑顔で微笑まれるたびに好きになってしまう。だけど、そんな気持ち届くわけがない。それが分かっているから、好きになるたびに私の心はもっと傷ついて、泣きそうになるんだ。でも、獄寺くんと約束したから、私は笑うよ。どんなに、つらくても、(綱吉くんに心配をかけないために)












「そっか。綱吉くんも嬉しい事言ってくれるね!!うん、良いよ!この、私が教えてあげよう!!」





「ありがとう、「」」











断るわけにもいかずに綱吉くんの申し出に笑顔で答えようとすれば、クラスメイトの女子が私の名前を呼んだ。呼び出し、と言われその女子の視線の先を辿ればそこには教室のドアからこちらを見る持田先輩の姿。なんで、ここにいるんだ!と思ったりもしたけれど、これはチャンスかもしれない。綱吉くんの申し出を断るチャンス。









「ごめん、綱吉くん。かなり、嫌だけど一応持田先輩も先輩だから、行くね」




(今絶対かなりの所強調したー!!)・・・いや、気にしないで」




「本当、ごめんね!」













気にしないで、と笑う綱吉くんに私の良心がチクリと痛んだ。ごめん、ごめんね、綱吉くん。私はやっぱり弱いんだよ。そして、今このタイミングでここに来た持田先輩に感謝した。持田先輩が来てなかったら私はもっと傷ついていた事間違いない「、あとでゆっくり聞かせてね」クラスメイトの女子がニヤッと笑った。前言撤回、誰が持田先輩なんかに感謝をするか(あぁ、変な勘違いされちゃったよ・・・・・!)やっぱり持田先輩は役に立たない。ドアまで行けば、持田先輩がニッコリと笑って、私の名前を呼んだ。こいつ、私がこの前言った事忘れてしまっているらしい。












「よっ、!実はさ、委員会の事でちょっと、」





「持田先輩、あんたこの前私が言ったこと覚えてますか?私、この教室には絶対来るなって言いましたよね?」





「えっ、そんな事言った、
言いましたよ・・・って、うお?!」















持田先輩を引っぱって人の少なくなる所まで連れて行く。あぁ、最悪だ!!ノートを運んで貰ってとき言ったはずなのに。持田先輩と付き合ってるなんて勘違いされたら、私は死にますからって!はぁ、と思わずついてしまいそうなため息をひっこめて、私は目の前の持田先輩を睨みつけた。わざわざ、私の教室に来るなんて・・・・も、も、もしかして京子ちゃんにまた
ラブ★アタックを始めようとしてたとか?!コイツ!








「お前いきなり引っぱるなよー」




持田先輩、京子ちゃんと綱吉くんの邪魔なんてしたらぶっ殺しますからね





「(こ、恐ー!つーか、何のことだ?!)な、な、何言ってんだ、お前!俺がお前の教室に行ったのは委員会のことだ!」






「あ、そうだったんですか?」






「俺、一番最初に言ったよな?絶対、言ったよな?」






「すいません、持田先輩が私の教室に来たってことで、なんだかイライラしてしまって」





「お前、俺先輩だよな?」











いや、でも約束をやぶったのは持田先輩なんだから、私は間違った事なんて一つもしてないよ。と思いながら、持田先輩が来た理由および、委員会の話を聞いた。まだ次の授業が始まる時間まではたくさんの時間がある。そして、持田先輩は話終わったのか「そう言えばよー」と違う話をし始めようとした。私は持田先輩の話に付き合っていられるほど暇じゃないのに(って、本当は暇なんだけどね!)つまらない話ならさっさと帰ろうと思い、持田先輩の方を見る。









「お前、いつの間に沢田と仲良くなったんだよ?」






「えっ、なんでですか?!」




「いや、さっき仲良さそうに話してたし、この前まで名字で呼んでたじゃん」




「あはは、綱吉くんはどっかのうざったい先輩と違ってよい人ですからねー!!」




「・・・・・それに、京子と沢田っていつ付き合いだしたんだ?」




「いえ、まだ付き合ってませんけど?」




「お前、だけどさっき、」





「でも、私の勘ではもうすぐ付き合いだすと思ってますから!」











笑顔で私は言う(だけど、こんな勘本当は当たって欲しくないと思ってる)目の前の持田先輩は「確かに、中学のときのこともあるしなー」と言いながら、遠くを見つめていた。自分が綱吉くんに負けたときのことでも思い出しているんだろうか。あぁ、思いださないほうが良いんじゃないんですか?自分がハゲになったときのことなんて。と思えば、持田先輩は「だけど、」と言いながら、私を見た。しかし、どんなに待ってもこの言葉の先は出てこなかった。








「・・・あー、もうこんな時間だぜ。ほら、さっさと教室に戻ろうぜ」




「(一体何が言いたかったんだろう)・・・・教室に戻ったら、持田先輩の事聞かれるんだろうなぁ。もう、本当に持田先輩死んでください」





お前本当に俺のこと先輩って思ってる?でも、まぁ、本命の奴がいねぇんならそこまで気にする事なくね?」





「それも、そうで、す、ね」









そんな事ないんですよ、持田先輩。貴方にも、誰にも言えないけど、本命の人はいるんです。だから、気にするに決まっている。だって、私は綱吉くんのことが好きなんだから。でも、きっと綱吉くんは気にもしないんだろう。持田先輩なんて、京子ちゃんにストーカーしてた人くらいの認識じゃないのかな(私ってつくづく、持田先輩に失礼だよなー)私が誰と一緒にいようと、彼は気にする事はない。それでも、私は勘違いされて欲しくないと思う。なんて、意味のない思いなんだろう。彼が勘違いしたところで、どうにかなるってことでもないのに。























持田先輩と別れて教室に行けば、ドアをあけた瞬間に綱吉くんがいた。思わず、ひぃっとまた女の子らしくない声がでる。綱吉くんは私を見ると微笑んで、「もう、持田先輩との用事終わった?」と聞く。その言葉に頷けば、綱吉くんは何かを言おうと口を開いた。










「じゃあ、さ、「」」









クラスメイトの女子に名前を呼ばれる。いきなりの質問に私は、はぁとため息を吐いた。とりあえず、持田先輩は今度、絶対に殴ってやると心に決めて、私は綱吉くんに「本当にごめんね」と謝って女子達の方へと言った。何を聞かれるかなんてもう分かっている。














「ど、どうしたの、みんな?」





「あんた持田先輩とどんな関係なのよ!」












分かりきった質問に、泣きそうだよ(本当、なんでこの年の女の子はこの手の話ばっかりかな・・・・・!)だけど、私が本当に好きなのは綱吉くんだなんて誰にもいえなくて、どんどんされる質問を一つ一つ丁寧に返す事しかできなかった。遠くに見える綱吉くん。さっき、私が謝った時に寂しそうに笑ったのはなんで?綱吉くんもこの女の子たちと同じように私が持田先輩なんかと付き合っていると勘違いしているのかな。京子ちゃんと楽しそうに話す綱吉くん。もしかしたら、私は綱吉くんと距離を置いた方が良いのかもしれない。自分の気持ちを抑えきれる自信はできた。だけど、これ以上傷つきたくないと心が悲鳴をあげている。










傷ついていく心について



















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(2007・12・28)