コンビニでお菓子を選んでいる間も明日休もうかどうしようかを考えていたけれど、私は結局明日休む決心をすることができなかった。コンビニから外にでれば、少しだけ辺りは朱色に染まっていて私はそこでまたハァとため息をついた。そして、少しだけ視線をずらせばこちらへを向ってくる獄寺くんの姿が見えた。確か、私が放課後、綱吉くんと話しているときには既にいなかったのに、どうして私より遅い時間に学校の方からやってきているんだろうと思えば、そう言えば放課後は風紀委員が服装検査をしていた。獄寺くんは指輪とかしているし、その検査にでも注意をうけてたんだろう。まぁ、獄寺くんがその注意をまともに聞くとは考えられないし、風紀委員と何かあったことは間違いないだろうな!











?」






「やぁ、獄寺くん」






「お前、こんなところで何やってるんだよ?」











私に気付いた獄寺くんが顔をあげて、一瞬驚いたような顔をして私の方をみた。そんなに私がコンビニから出てきたことは驚く事だったんだろうか。いやいや、これでも私は結構コンビニ愛好家なんだよ?新発売のお菓子のチェックもするし、コンビニのおにぎりも好きだし(特に最近ではツナマヨが美味しいと思うよ!!)それに、こんなところで何やってるんだって、何で獄寺くんがそんなに少し怒った様子で聞いてくるのかが分からない。コンビニいることってそんなに怒られることだっけ・・・・?











「えっと、コンビニで買い物だけど・・・・」






「10代目はどうしたんだよ。お前と一緒に帰ったんじゃないのか?」






「さ、誘われたけど、ちょっと用事があって、それで」






「用事ってコンビニに行く事がかよ」











ギロリと効果音のつきそうな音で睨まれて、私は思わず獄寺くんから視線をずらした。どうしよう、恐い。もしも、私がたかがこれだけの理由で綱吉くんからの帰りのお誘いを断ったなんて綱吉くんが知ったらどうするだろう。もう、綱吉くんは誘ってくれなくなるかもしれない。いや、もしかしたらそっちの方が私にとっては都合が良くなるんじゃなだろうか。だって、綱吉くんからのお誘いを断って、私が悲しい思いをしなくて良くなるし、それなら初めから誘われない方が良いと、(・・・本当にそう思うの?)目の前の獄寺くんはそんな私をただ黙って見ていたけど、チッと舌打ちをした。











「・・・ったく、ちょっと面貸せ」








目の前で歩き出した、獄寺くんに何も言えずに私は獄寺くんの後ろを歩いた。なんとも言えない雰囲気で、獄寺くんはやっぱり怒っているんだろうかと思った。だけど、謝ることもできずに、私は買ったばかりのお菓子の袋を揺らしながら獄寺くんについていく(どうしよう、どうしよう)獄寺くん、に、殴られるのかな?と思いつつ着いて行けば、公園へと着いた。獄寺くんに言われて、ベンチに座れば獄寺くんも私の横に腰を下ろした。









「・・・・・・・お前、最近元気がないらしいな」






「は、へ、何、で」










思っていた言葉以上に優しい獄寺くんの言葉に、とっさに私は何を言ってよいのか分からなくなった。怒られる、と思ったのに。
「10代目のお誘いを断るなんて100年早いんだよ!」とか、言われて、罵倒されると思っていたのに。獄寺くんの言葉はそんなものじゃなくて、ずっと優しい声色で、ずっと優しい言葉だった(それに、なんで、"らしい"なの?)誰から、私が元気ないなんて聞いたんだろうと思えば一人だけ心当たりのある人がいた。りりんだって、気付いていなかった、私が元気がないことに。だけど、そんな中で気付いてくれたのは、綱吉くんだ。









「10代目が言ってたんだよ。最近、が元気ないって」







「(あぁ、やっぱり・・・)」






「本当、10代目に心配させるなんて、どういうつもりだ」











別に心配させたくて、させているわけじゃなくて。私だって、本当は私なんかの心配なんてして欲しいわけじゃない(だけど、心配して貰えて嬉しいと思っている自分もいて、)だから、なるべく笑顔で元気がないように悟られないようにしていたつもりで。それでも、綱吉くんにだけはバレてしまって。一番、心配してもらいたくない人にバレてしまって、その事を嬉しいと思ってしまうなんて。獄寺くんは綱吉くんの代わりに私に気付かせてくれようとしてるんだ。綱吉くんに心配させて喜んでいる私はどうしようもない人間だと。ごめんね、綱吉くん。心配をかけて、と思っていると自分の頬を、何かが伝った。










「って、おま、え」





「ご、ごめんね。ごめん。綱吉く、んに、心配か、け・・・て」











言葉にすると、もっと自分が駄目な人間に思えてきて、涙が止まらなくなってしまった。目の前の獄寺くんは、驚いた様子で私の顔を見ていて、私だって泣いたら駄目だと分かっているけれど、涙が止まらなくなってしまって、ただ獄寺くんに謝ることしかできなかった。(泣いて解決できる問題でもないのに、)本当に謝らないといけなのは、綱吉くんなのに。だけど、私は綱吉くん、本人に謝る勇気なんて持ってない。









「もう、泣くなよ!俺が悪かったから!10代目は、お前の心配を嫌々してるわけじゃねぇっていうのは分かってるんだ」




「ご、めん」





「だーかーら、俺に謝られても困るだろうが!!」











焦ったようにオロオロする獄寺くんを見て、泣いてしまって申し訳ない気分になってしまった。獄寺くんは、自分の頭をガシガシとかくと「これじゃ、俺が10代目に怒られちまう」なんて言ってるけど、そんなことはない。だって、獄寺くんは綱吉くんの為に、私がこれ以上綱吉くんに心配をかけないように、しようとしてくれたのだから。怒られるとしたら、私が怒られるべきなんだ。綱吉くんに心配をかけて、迷惑ばかりかけている私が。








「・・・・明日からは、ちゃんと笑う。もう綱吉くんには心配かけない」





「俺が言いたいのは、そういうことじゃ、」





「大丈夫。私は、元気だから」










少しだけ落ち着いた私は真っ直ぐに獄寺くんの顔をみて言った。いや、だけど明日から笑うのは無理かもしれない。これだけ泣いたのは久しぶりで、明日には目が腫れてしまっているだろう。休んでも心配されるかもしれないけど、それ以上に目が腫れてしまっていたら、綱吉くんに心配をもっとかけてしまうかもしれないし、りりんも私が泣いた事に気付いてしまう。それに山本だって。持田先輩に会えば、持田先輩にも心配をかけてしまう。もちろん、京子ちゃんや、花ちゃんや、他の人にも。









「はひ?!獄寺さんと、ちゃんじゃないですか!!」






「げ、馬鹿女!」




「ハルちゃ、ん・・・」






「って、ちゃん泣いてるじゃないですか!獄寺さんに何かされたんですか!」










いきなりのハルちゃんの登場に少しだけ驚いて、あぁ、ハルちゃんにまで心配をかけてしまったと思った。ハルちゃんはきれいなハンカチを私に差し出すと獄寺くんに何かを言っていた(ごめんね、獄寺くん)私が泣いているのを獄寺くんのせいだと、ハルちゃんは勘違いしてしまったらしい。獄寺くんになんだか申し訳ないことをしてしまった。私がただ勝手に泣き出したところだったのに。それに、この二人って知り合いだったのか・・・・って、今はそんな事関係ないよ。それよりも早く獄寺くんの潔白を証明しないと。









「ハルちゃん、獄寺くんは私のことを心配してくれただけだから」





「えぇ、そうだったんですか?!ハルとしたことが!!」





「・・・・





「獄寺くんも、ハルちゃんも、ありがとう」




「獄寺さんにも良いところがあったんですね!」






「なんだと、この馬鹿女!」











私の目の前で言い合っている二人が面白くて、少しだけ笑ってしまった。一瞬、2人とも驚いた顔をしていたけどハルちゃんがちゃんは、笑った顔の方が素敵ですよ!」と、言った。あぁ、そんな事ないのに。だけど、心から笑ったのは久しぶりかもしれない。明日は、とても笑えないかもしれないから、明日は休む事にしよう。そうしたら、来週の月曜日からは悲しくても、綱吉くんに心配をかけないように笑うなるから。だから、明日一日ぐらい休んでも、良いよね?








涙の理由について























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(2007・12・06)