今週は本当についていないらしい。綱吉くんが告白される現場を目撃する1週間から始まり、一日一回は良くない事が起きているような気がする(今週は一生に一度あるかないぐらいの運の悪さだ・・・・!)ハァ、とため息をこぼしながら先ほど帰りのホームルームが終わったばかりの教室を見渡せば、教室にはまだ人は残っていて、みんな笑顔で教室から出て行っている。今日は木曜日だから、あと一日学校はある。











「(・・・・もうこのさい明日は休んじゃおうかな)」











だって、このままじゃ明日一日だって持つ気がしない。それだけ月曜日から木曜日までの間私はついていなかった気がするのだ。そんな状態で明日学校に来ても、多分また良くない事が起こるんじゃないだろうか。良くない事が起こると分かっているの(いや、まぁ予想なんだけどね)に学校に来るなんて馬鹿だと思うし、自分があまりに哀れに思えて仕方がない。ならば、もう休んでしまった方が自分の為にも、









、帰らないの?」






「うぉ、つ、綱吉くん?!」










ぼぉっと教室の中を見渡していれば、綱吉くんがいつの間にか目の前にきて咄嗟に変な声がでてしまった(女の子だよね、私?!)そんな私に綱吉くんは少しだけ苦笑しながら、
「いきなり話しかけて驚いた?」と話しかけてきた。あぁ、やっぱり綱吉くんは良い人だね。どっかの、野球馬鹿と違って私が変な声を出しても笑ったりしないし。あ、ちょっと思い出したらまたムカついてきちゃったよ。絶対今度、山本を殴ろう。









「いや、大丈夫だよ!で、どうかしたの?」






がぼぉっとしてたから、帰らないのかなって思ったんだけど・・・」






「か、帰るよ!帰りの準備にちょっと手間取ったんだよ!!(明日休もうなんて考えてたなんていえるわけがない!)」





「そうなんだ?じゃあ、今日一緒に帰らない?」









「えっ?!」







私は咄嗟に教室中を見渡した。先ほどよりは、人が減っているけれどまだ人は残っている。その中にはもちろん、京子ちゃんと花ちゃんの姿があった(・・・綱吉くんは、何を考えてるんだ?)私と綱吉くんが、一緒に帰るところなんて京子ちゃんは見たくないんじゃないだろうか。私と綱吉くんが二人で帰ることには、ただの友達としての関係しかないけれど、それでも京子ちゃんにとってそう捕らえる事ができないかもしれない。私だって、好きな人がその二人の間になんの関係がないとしても、女の子と二人でいるところなんて見たくない。










「あー、今日は用事があるから遠慮しておくよ。誘ってくれてありがと、ね?」




「そっか、用事があるなら仕方がないよね・・・・」










少しだけ子犬を思わせるかのような綱吉くんのシュンっとした顔。そ、そんな顔で見ないでくれ・・・・!!私は子犬にめっぽう弱いんだから!!と心の中で格闘しながら、私は綱吉くんから視線をはずした。このまま、綱吉くんの顔を見ていたら一緒に帰ろうと言ってしまいそうになる。












「ご、ごめんね」




「あ、別に気にしないで良いから!!俺がいきなり誘ったのが悪かったんだし」








用事なんて本当はない。綱吉くんの誘いを断ったことに、少なからず罪悪感を募らせながら、だけど先ほどから視界の隅にうつる京子ちゃんの姿を見て、断って良かったんだと自分に言い聞かせた。まるで綱吉くんの誘いを断ったことを、正当化するかのように。(これで良かったんだよね?)ちらりと綱吉くんに視線を戻せば、綱吉くんは私の方をまっすぐに見ていた。私は少しだけ、その真っ直ぐな瞳に心を奪われたような錯覚をおこした。澄んで、とても綺麗な瞳だ。まるで、綱吉くんの性格をそのまま表したかのような瞳。









「・・・・・それでさ、最近何かあった?」






「え、なんで?」






「何か最近、元気がないように見えるから」










「・・・・・・」









綱吉くんの言葉に、私は言葉を失った。まさか、バレていたとは思いもしなかった。みんなの前では、なるべく笑顔を心がけていたし、あのりりんにもバレていなかったと思うのに、それなのに何故綱吉くんが私が元気がないことが分かるのだろうか。だけど、その事が少しだけ嬉しくて私は自分の心が暖かくなるのを感じた。心配してくれて、ありがとうと心の中で綱吉くんにお礼を言う。だって、私が元気がないなんて認めてしまっては、綱吉くんは優しいからもっと私の心配をしてくれると思う。私はこれ以上に、綱吉くんに心配をさせるわけにはいかない。









「あはは、それは綱吉くんの思い過ごしだよ!!私、元気すぎて困っちゃうくらいなのに!」





「・・・それなら良いんだけど」











ゆっくりと微笑む綱吉くんに、私は心の中でごめんね、を呟いた。私は、息を吐くと立ち上がりかえる準備のし終わった鞄を持ち上げる。











「じゃあ、私帰るから。綱吉くん、また明日ね」




「あ、うん、明日!」









私は急いで教室から出て行った。ドアから出て行くときに、少しだけ見えた京子ちゃんの笑顔に私が少しだけ胸が痛むのを感じた。少しだけ早足になりながら、廊下をすすむ。用事なんて本当はないから、このまま帰ればかなり早く家に帰り着くことになるだろう。ドラマの再放送でも見ようかと思ったけど、いつも見てるわけじゃないから話の内容もつかめないだろうし(今、再放送しているドラマってなんだったけ?)それなら、コンビニにでも寄って何かお菓子でも買って帰ろうかな。この前、新作のお菓子もチェックしている事だし










「(この前の新作のお菓子なんだったけ?)」









校門の前では風紀委員が服装検査をしているようだったけど、私はなんも違反をおかしていなかったのですぐに検査も終わりかえる事ができた(私、優等生だからね!!)一人で帰る道は、やっぱり何だか心細かったけれど、私の足は思ったよりも軽快に進んでいて、これも綱吉くんが私が元気のないことに気付いてくれた事だとおもった。人間、誰かに心配されると言うのはやっぱり嬉しいものなんだろう。だけど、心の奥では本当はこの道を綱吉くんと帰れていたはずなのに、と思えた。














そんな事、願ってはいけないのに












ハァとため息がまたこぼれる。ここ1週間で何回のため息をしただろうか(とても、数えられる量じゃないよ・・・・)ため息を吐くと、幸せが逃げると言う言葉をよく聞くけれど、ならば私はかなりの量の幸せから逃げられてしまった事になる。そう分かっていても、ため息がとまらないのは何故?やっぱり明日は学校を休んでしまおう。そして、来週の月曜日からはまた笑顔でがんばる事としようと思う。私はゆっくりとコンビニへと向う道の中、明日休む事を決めた。さて、明日は何をしよう。










「だけど、」









休んだら、綱吉くんと楽しく会話する事もできない。それに、りりんにも心配をかけてしまうこともできない。山本も心配するだろうし、明日はあの数学の授業もない。数学の授業がない日に休むなんて何かもったいない気がする。どうせ休むなら数学のある日が良いな。まぁ、だけど今の私が休みたいのは明日であって、来週の数学がある日ではないんだよね。そう考えると、明日本当に休んで良いのか、と思ってしまい、明日休むことに対して決心が出来ない。とりあえず、コンビニでお菓子でも買いながらゆっくりと決める事にしよう。






明日の過ごし方について













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(2007・11・27)