次の日の朝はいつもと変わらないようにやってきた。いつものように顔を洗い、いつものように学校へとでかける。学校へつけば、笑顔でみんなに挨拶をして、自分の席に着く。そんないつもと変わらない朝。そして鞄の中の教科書を机の中にうつし終われば、私はハァと息を吐いた。まだ月曜日なのに、なんだこの疲れは(私ってまだ女子高校生だったよね・・・・?)1週間の始まりがこれじゃあ、なんだか今週1週間に期待ができない。そう思いながら、ぼぉっと黒板を見つめればいきなり頭に大きな衝撃が加わった。











うげっ!






「おはよう、。なんだよ、うげって!!」






「や、山本?!何すんのよ!」












思わず出た女の子らしくない声。ちょっと山本、お前笑いすぎなんだよ!そう思い、山本をキッと睨みつける。昨日、ちょっと優しくしてやろうかと思ったけど、それはやめだ。そもそもなんで私がこんな奴に優しくしなければならないんだ。朝から女の子の頭を叩くなんて、男として最低だぞ!!(まぁ、それでもコイツはモテるからね!)私は叩かれたところをさする。山本は未だに、笑っていた。













「あはは、お前本当に面白いのな!」






「それ褒めてないから、本当あんたいい加減にしないと私も怒るよ!」











面白いなんて喜ぶ女の子なんていないだろう。いや、確かに山本から可愛いなんて言われたら、そりゃ気持ち悪くて仕方がないけど(やば、鳥肌たってきちゃったよ)それに、山本に面白いなんて言われたら他の女子は喜ぶんじゃね?なんて思ったりもしてしまったけど!!だけど私は別に山本に面白いなんて言われても喜べない。それにしてもこの男、朝から私を怒らせたいのだろうか。考えて見れば、朝から山本が私に話しかけて来るなんて珍しい。いつもなら、綱吉くんや獄寺くんと話しているのに、と思えば教室にはまだこの2人は来ていなかった。あぁ、暇つぶしがてら私のところに来たのかこの男は(暇つぶしなら他の子でやってくれ。お前ならみんな喜んで暇つぶしの道具にでもなってくれるよ)













とりあえず、死んで





「おいおい、そりゃないだろ」










ニッコリと微笑みながら言えば、山本は冷や汗を一筋流した。そして、何故か私の目の前の席に腰をおろす。私としては早く山本との会話を終わらせて、本の続きを読みたかったのに、これじゃあ私は本を読むことできないじゃないか(いや、読もうと思えば読めるけど、私はさすがにそこまで酷くないよ)そんな私の気持ちを知ってかしらずか山本はどんどん話をふってくる。そして、私もいつの間にか山本の話が面白くて、本を読むことも忘れて、山本との会話を楽しんでいた。(これぞ、山本マジックだ!)




























ガヤガヤと煩くなってきた教室を見渡せば、いつの間にか人が多くなってきていた(もうチャイムがなる5分前だから当たり前か・・・)もちろんと言って良いのかは分からないけれどその中には、今日は遅刻しなかったらしい綱吉くんと、獄寺くんのコンビがいた。あぁ、山本はこの2人の方に行かなくて良いのだろうかと山本を見るけれど、山本は爽やかな笑顔でくだらない事を未だ話している。あ、それとも山本は遂にあの2人からハブられたのか?あの2人が山本をハブるなんてことは絶対にありえないとは分かっていても、こんな事を考えてしまう人間の想像力と言うものはどこまでも豊かだと思う。











「それでな、」





「山本」










山本のくだらない話を右から左へと聞き流しながら、聞こえてきた声に顔を上げればそこには綱吉くんが立っていた。あれー、さっきまで前の方にいたと思うのになー?ちょっと、瞬間移動ですか?と目の前にいる綱吉くんを見れば思ってしまった。先ほどまで綱吉くんがいた場所を見れば、そこには獄寺くんがこちらを睨みつけるように仁王立ちで立っていた(恐ぇぇ!!)やっぱり愛しの綱吉くんがこっちに来たから睨んでいるんだろうか。それなら私を睨むのは筋違いだよ、獄寺くん。だって、綱吉くんが呼んだのは山本の名前で私の名前ではないのだから。










「どうした、ツナ?」




「あ、えっと、女の子が呼んでる」










チラリと綱吉くんの視線がうつった方を見れば、そこには前のドアの外の廊下からこちらを伺うように覗いている女の子がいた。どうしよう、普通に可愛いよ、あの子。いや、別にどうすることもないんだけどさ、あの様子だと山本に告白をしにきたと見て間違いではないだろう。はは、良いな青春って★なんて思っていれば山本は一言「悪ぃ」と言って、あの女の子がいる方へと立ち上がって向っていた。













「(何で山本がモテるんだろう・・・・あいつただの野球馬鹿なのに)」











ぼぉっと、山本の背中を見送る。やはり私と山本はただの友達であるからこそ、私は山本が何故モテるのかが分からないんだろう。本当、あんな男のどこが良いのかマジで誰か教えて欲しい。そして、ふと気付けば綱吉くんはその場に残ったままだった。山本への用事が終わったのなら、あそこでこちらを睨み続けている獄寺くんの元へと戻ればよいのに(ちょっと、獄寺くん睨みすぎだろ!)それに、綱吉くんを見ると昨日のことを思い出す。あの可愛いハルちゃんって子と知り合いになれた事もだけど、あの一人で帰る心細い帰り道の事も。














ごめんね、山本と話している最中だったのに」






「なんで綱吉くんが謝るの?それにあれは山本が一方的に話してただけだから」






「あ、そうなんだ。だけど、も楽しそうにしてたけど?」






「えぇー?!いやいやいやいや、それはないって!!」







「え、ちょっと否定しすぎじゃない?!」













自分が思っていたよりもはずむ会話。それと同時にやっぱり綱吉くんと話すのは一番楽しいと感じた。なんだ、別に普通に話せているじゃないか。いつもと変わらない今日。誰だよ、昨日今までと変わらず綱吉くんと話すのが楽しいと思えるのかとと思ったのは(・・・・うん、それは私ですけどね)私と綱吉くんが、会話を楽しんでいると山本がこの場に戻る事なくホームルームの始まりのチャイムがなった。一日の始まりのチャイム。そのチャイムと共に、綱吉くんが京子ちゃんの隣の席へと戻っていく。いつもと変わらない風景に、少しだけ、私の胸が疼いた。











「(なんだかやっぱり、今日の私は疲れている)」











机に突っ伏したくなる気持ちをなんとか押さえ、教室に入ってきた先生の言葉に耳をすませる。今日は風紀委員があるからとか、数学の係りの生徒はあとで数学の担当の先生のところに行けとか・・・って、えぇぇぇ?!思わずガタンと椅子から立ち上がれば、教室中の視線が私に集まる(ちょっと、みんな見すぎだから!)












、どうかしたか?」






「・・・・いえ、別に(絶対、あの数学教師ぶっ飛ばしてやる!!)






「そ、そうか?そう言えばは数学の係りだったな。後でちゃんと行けよー」





「あ、はい」










ガタンと自分の席に着きながら、私は今週過ごしきる自信をなくした。何故か重く圧し掛かる疲れと、こんな時に限って数学の先生から呼び出されるという自分の運の無さに思わず涙がでそうになる。何だか最近、涙腺が思っている以上に緩んでいるようだ。誰も私に注目しなくなった教室を見渡せば、山本がこちらを心配そうに見ていることに気付いた。それに、綱吉くんも。だけど、私は綱吉くんの視線を無視して山本にだけ、視線をおくった。大丈夫、だと言う言葉を含めて。













だって今、私が綱吉くんを見れば綱吉くんに甘えてしまう












綱吉くんは優しいから私の甘えを許してしまうだろう。だけど、彼には私以上に甘えさせなければならない存在がいる。そんな彼に私は甘えてしまってはならない(私は彼の重荷にもなってしまう。私は彼の重荷にはなりたくない)だから、今は山本の視線にだけ気付いたフリをした。それに、山本が今日の朝、話しかけてきてくれたのは昨日の私が泣いている事に気付いていたからこそ、心配して話しかけてきてくれたのだ。私はその事に気付かないほどの莫迦ではない(そしてはっきりと分かるのは山本の優しさは友達としての優しさだ)





優しさの違いについて
































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(2007・10・21)