沢田綱吉と言う男は私にとってはとても興味深い人物である。別に好き、嫌いとかそういう問題じゃなくて、ただクラスメイトとして見ていて飽きない存在だと言える。まず、彼の周りにいる人たちが個性的すぎるのだ。野球部期待のエースの山本武。タバコを吸って授業もまともに受けない獄寺隼人。ボクシング大好きの笹川了平。たまに、あの雲雀恭弥と一緒にいるところもみかけた事がある(まぁ、なんだか沢田綱吉はペコペコしていたけど)しかしながら、それでもすごい事には変わりはないのである。
キーンコーンカーンコーン
鳴り響くチャイムの音で私はハッと我に帰った。チャイムの音で騒がしくなる教室に私も釣られるように、鞄の中からお弁当を取り出す。食べる準備をしていると、いつものようにりりんが私の前の席に腰をおろした。昨日から私達は並盛高校の2年生なり、今はまだ桜が舞い散る季節である。クラス替えがあり親友であるりりんとまた同じクラスになれたことには先生に感謝するけど、学校がはじまってすぐ6時間と言うのは春休みぐうたら過ごしていた私にはきつい(ほとんどの学生が抱える悩みだと思う)
「本当にこのクラスってすごいメンバーよね」
「そうなの?」
りりんに言われ、私は新しいクラスメイトを見渡した。どこらへんがすごいメンバーなんだろうと思いながら見渡せば、丁度教室から出て行く沢田くんと山本と獄寺くんの姿が見えた。あぁ、確かにこのメンバーはすごいかもしれない。
「だって、山本武に獄寺隼人なんてこの学校の中でもかっこ良い男じゃない。それに笹川さんなんてこの学校のマドンナよ?」
「京子ちゃんは可愛いからね」
京子ちゃんに視線をうつせば、花ちゃんと楽しそうにお弁当を食べていた(花ちゃんも可愛いなぁ)だけど、私としてはこのクラスメイトの中で一番すごいのは沢田くんだと思う。だって、そのかっこ良い男子は沢田くんの親友といっても過言ではないし、学校のマドンナである京子ちゃんともとても仲が良さそうで。それに中学生のときより成長した沢田くんはこの学校の中でもかっこ良い部類に入る男子だと(私は)思っている。
「このメンバーと一年間同じクラスなんて幸せよね」
うっとりとした様子で語るりりんを一瞥しながら私はお弁当に手をつけた。あ、今日の卵焼き美味しいや。お母さん今日は卵焼き失敗しなかったんだと感心しながら視線をずらせば先ほどでて行ったばかりの沢田くんが教室に入ってきた。もしかして、山本と獄寺くんからハブられた?!なんて一瞬考えてしまったけど、そんな考えすぐに消えた。だって、あの山本(野球馬鹿)や獄寺くん(沢田くん馬鹿)が沢田くんとハブるなんて考えられないことなのだ。
「さん」
「あ、はい?」
いつの間にか目の前に来ていた沢田くん。りりんは少しだけ驚いた顔で沢田くんの顔を見上げている。おいおい、そんなに驚いたら失礼だろ、なんて思いつつ沢田くんが私に話しかけてきた理由を考えていた。1、用事がある(十分にありえる)2、リンチの呼び出し・・・いやいや、2はないだろう?だって私沢田くんに何かした覚えなんてこれっぽっちもないのに。もしかして「お前の顔ムカつくんだよ」みたいな感じだったり?えー、そんなこの顔は生まれつきなんだからかえ様がないよ、なんてくだらない事を考えながら沢田くんを見上げれば少しだけ困ったように笑いながら言った。
「数学の先生がさんのこと呼んでたよ。昼休み中までには来てほしいって」
「うん、分かった(2じゃなかった!!)」
どうやら2番のリンチの呼び出してはなかったらしい。まぁ、当たり前の言ったら当たり前なんだけどね!!まさか、沢田くんがリンチなんて今まで見た限りするわけないし、むしろ沢田くんがリンチするぐらいなら獄寺くんがすると思う。獄寺くんといえば、どうして沢田くんのことを「10代目」なんて呼ぶんだろう。彼と沢田くんの関係は友達じゃないのだろうか・・・もしかして主人と下僕とか?あはは、自分で考えておいてなんだけどありえそうで恐いねー(思わず鳥肌が立っちゃったよ)
「じゃあ、これだけだから」
「ありがとうね、沢田くん」
「どういたしまして」
沢田くんはそう言うと、また教室から出て行ってしまった。なんだか悪いことをしてしまったなぁ。多分、沢田くんは山本と獄寺くんと昼ごはんを食べに行く途中で頼まれて、わざわざ教室にまで戻ってきてくれたんだろ思う。本当に良い人だなぁ、としみじみ思う。
「あんた沢田と知り合いだったの?」
「あ、少しね。中学の時、クラス同じ時あったし」
「ふ〜ん」
どうやらりりんにとっては沢田くんにはあまり興味がないらしい。まったく、この面食いが!!と思えば、りりんは以前、風紀委員長の雲雀さんもかっこ良いとか言ってたような気がするな・・・かっこ良ければ良いってものじゃないと思うんだけど(雲雀さんの場合は特に)ふと時計を見れば、時刻は昼休みの中盤に差し掛かっていた。数学の先生のところにいかなちゃならないんだと思いながら、私は残りのお弁当に手をつけた。
お昼休みも終わり、今は睡魔が襲ってくる5時間目の真っ最中。昼休みに数学の先生に呼び出されたのはどうしようもない用件で本当に沢田くんには悪いことをしたなと思った。だって、わざわざ今日集めた春休みの宿題に私だけ名前を書いてなかったから確認のために呼び出されるなんて、先生も先生だし、名前を書き忘れた私も私だ。まったくもって、2年生になったばかりだと言うのに幸先が悪い。
「(ついてないなぁ・・・)」
本当に沢田くんどうしようもない用件なのにごめんねと思いつつ、先生が黒板に書くことをノートに書き写していれば、私の視線は黒板ではなく沢田くんの背中でとまった。(意外と大きいな)私の席は後ろの方で、前の方の席である沢田くんの姿は良く見える。思いだせば、中学の同じクラスのときもこんな席だったような気がする。そのときのことを思い出せば、今の沢田くんはずいぶんたくましく感じた。いや、感じただけではなく実際そうなんだろう。見た目こそはそこまで変わってはいないけど、性格はとても成長したような気がする。
「(沢田くんの隣、京子ちゃんだ)」
クラス替えしたばかりの教室でまだまだクラスの席は把握していなかったけど、どうやら沢田くんのとなりは京子ちゃんらしい。私としては、京子ちゃんと沢田くんはどこからどう見てもお似合いのカップルだと思う(りりんに言ったら、そんな事ないって言われたけど)それに京子ちゃんは沢田くんのことを「ツッ君」と呼んでいたし、沢田くんは京子ちゃんの事を「京子ちゃん」って呼ぶし、仲が良いんだろう。もしかしたら、もう付き合ってるんじゃないかと思ってるんだけど、2人の様子を見る限りまだみたいで、だけど私は時間の問題だと思っている。だって、女の勘は当たるものだし!!(私に女の勘があるのかどうかは疑問だけど)
私は沢田くんの背中から視線をずらし、再び黒板の内容をノートに書き写す作業に戻った。少しの間しか考え事をしていなかったと思うのに、黒板は一面、真っ白な文字で埋め尽くされて少しだけノートを書くのに嫌気がさして私はノートを書く手をとめた。京子ちゃんは私とは違って、沢田くんと特別な関係なんだろうと、沢田くんの背中を遠くに眺めながらふとそんな事を考えていた。
私と君との関係について
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(2007・08・31)
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