昨日からの様子が可笑しい。それでも僕は何も聞くことなんてできずに学校に来てから彼女と話す機会をもつことができなかった。家に帰ってまだ様子が可笑しかったら絶対に聞こうと覚悟を決めてはいるものの、それが僕に実践できるのかは分からない。





確かの彼女の事を深く知りたいと思う。けれど、彼女にだって聞かれたくないこともあるだろう。この僕が人を気遣う日がこようとは思いもしなかったが無理やり聞き出すようなことはしたくない。既に何回か無理やりな形で聞き出した奴の台詞じゃないかもしれないが、それでも好きな子に無理やり、ということはしたくないと思ってしまう。









まぁ、だけどもしかしたら何か悩みがあるのかもしれないし、僕にそれを解消できるかなんて分からないが悩み事というのは人に話したほうが楽になるらしい(僕にはそんな気持ち分からないけど)早く家に帰りたい、と思いながら目の前の書類を片付けていればチャイムの音が鳴り響いた。

6時間目終了のチャイムだ。このさい、もう帰ってしまおうか、と考えているところに応接室のドアを叩く音が部屋に響く。








「何?」



「委員長、」







部屋へと入ってきた草壁を見ると、自然と眉間に皺がよった。決して、ドアを叩いたのがじゃないかと期待したわけじゃない。そう決して。断じてそんなことはない。うん、本当に絶対にそんなことはないから……!








入ってきた草壁の様子をみるかぎり、どうせ言うことが聞かない奴らがまた何かしでかしたんだろうということは容易に推測できた。



委員たちでどうにかしてもらいたいものだ、とは思いながらもこのまま我がままに野放しにしておけるわけもない。学ランを羽織り、応接室を出る。草壁もそれに続いて僕の後ろを歩きながら詳細を説明していく。あんまり返り血を浴びないようにしておかないと、を怯えさせてしまうかもしれない。







こんな時までのことを考えてしまう僕はすでに後戻りできないところにまで来てしまったのかもしれない。
















****
















次々と増えていく不良たちをどんどん咬み殺していく。よかった、にメールしておいて。しかし、これ以上帰るのが遅くなるのも困る。なぜなら家では、一人でが待っているのだから。母さんに僕は確かに言った。に寂しい思いはさせないと。彼女が一人が嫌ならば、僕が傍にいようと、そう思っていた。だからさっさとこんな奴ら咬み殺して終わらせたいと思ってはいるのに、弱いやつらほど群れたがるのか人数だけは多い。








(傍にいると決めていたのに)




刻一刻とすぎていく時間が憎らしい。









やっと、すべてを咬み殺した時には時刻は7時をとっくにすぎていてそろそろ8時をなろうとしていた。さすがにこれは遅すぎる。いつもならこれでも普通だけれど、今日は父さんも母さんもいない。あの大きい家に彼女は一人でいる。きっとが寂しい思いをしているのは間違いないことだろう。






僕はそれを分かっていたからこそここ二、三日はさっさと家に帰っていたというのに。






咬み殺したうちの一人で蹴飛ばしてもイライラが解消されるわけじゃない。早く帰らなければ、これ以上をあの家に一人にしておくのは僕が許せなかった。携帯を手に取り、の番号を呼び出す。しかし、いくらコールがなってもがでることはなかった。








まぁ、お風呂にでも入っているのだろう。そう思った僕は帰路を急いだ。走るまではいかなくても、段々と早足になるのをとめられない。あの場所の処理は草壁あたりがしていてくれるだろう。それに、僕が咬み殺したあとの処理はいつも風紀委員に任せている。電話を一本いれ、家へとたどり着いた時、僕は思わず目を見開いた。








「電気が、ついてない…?」








もう時刻は八時。静かな住宅街ではなお更、辺りは真っ暗だ。そんな中、家からは光の一筋もこぼれていなかった。二階のの部屋も電気がついていない。お風呂に入っているといっても、まさかリビングの電気を消したままにしておくことはないだろう。

ドアの鍵をあけても、中から人の気配はまったくしない。






何故?どうして、と思いながら僕は再びの携帯に電話をかける。






でも、いくら待っても彼女が電話に出ることはなく、いつの間にか留守電の無機質な女の声に変わっていた。まさか、友達にところに行ったのか?でも、それなら僕にメールの一つや二つくらいしておくだろう。それに放課後メールした時の返事には、そんな事かかれていなかった。バタバタと足音をたてて、奥へと進みリビングの電気をつける。

リビングのテーブルの上に置かれた料理に気づき、近づく。それほどコレを作ってから時間が掛かっていないんだろう。台所のなべに入っていた味噌汁はそれほど冷めてはいなかった。










じゃあ、どこに行ったんだろうか。まるで、これじゃあ神隠しのようだ。電話にもでない。血の気が失せるのを感じながら、僕はリビングを出て二階へと急いだ。そうだ、もしかしたら寝ているのかもしれない。彼女のことだ、それも考えられないこともない、と思い僕のとなりの部屋にある彼女の部屋のドアをノックする。








?いるの?」








しかし何回ノックしても返ってくる声はなく、僕は我慢できずにドアをあけた。真っ黒な部屋の中。父さんが準備したベッドは膨らんだ様子もなく、彼女の姿は部屋のどこをさがしてもない。








心臓がドクン、と音をたてる。こんな時間に、どこに行った?もう一度携帯を確認しても、メールも電話もきていない。











僕が恐れていたことが、ある。僕の我がままの為だけに彼女に近づいて、良いのだろうかと。彼女が一人が寂しいと思うのなら、僕が傍にいてあげようと思っていた。でも、本当にそれは彼女のためになるのだろうか。いつか、彼女に僕を好きになってもらおうと、好きにさせてみせる、と思っていた。






でも、それは僕の気持ちを押し付けるだけにならないのかと考えたことがある。






並中最強だと呼ばれて、僕の事を良く思わない輩が多いのを、僕は知っている。彼らにとって僕の弱点は、これ以上ない脅しの道具だろう。以前の僕にならそんなものは存在しなかった。だけど、今の僕にはがいる。いつ彼女の存在が奴らに知られるのかも分からないことに、内心僕は怯えていた。まだ、僕と彼女の関係をしるものはほとんどいない。








だけど、もし彼女が僕の義理の妹だと知られたら?その彼女を僕が大切にしていると知られたら?







(大切な人なんて本音を言えば作りたくなんてなかった)




それでも、できてしまった。大切で愛おしいただ一人の子が。







もしかしたら、という考えに僕は急いで階段を下りていく。思いっきりドアをあけて、外へと駆け出す。どこにいるかなんて、わからない。だけど、探さなければならない、と思った。彼女を一人にしたいと決めたから。彼女を僕のせいで傷つけないと決めたから。手足を我武者羅に動かして、前へと突き進む。ねぇ、どこにいったの、?暗くなった星空のもと、僕は彼女を見つけるために無我夢中で夜道を駆け抜ける。僕の足音しか聞こえてこない、僕は焦る気持ちをせしとめることができなかった。











お願いだから僕から離れないで















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(2009・03・08)この連載の雲雀の方向性がわからなくなってきました。とりあえず、もっと更新頑張ろう・・!更新が毎回遅すぎる><
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