ただいまとおかえり
放課後になって私はハンバーグの材料を買いにスーパーへと寄った。本当は、家に一旦帰ってこようかとも思ったんだけど、正直面倒くさくて(だ、だって、学校からの帰り道にスーパーがあるんだよ!それなのに家に帰るなんて二度手間だからね!)私は制服のままスーパーでの買い物をすませた。ガサゴソと重い荷物と重いかばんにさっきからちょっと腕が痛くなってきたけど家まではあと少し。絶えられない距離じゃない・・・・・・・と、思う。スーパーの袋の中には雲雀さんの注文のとおりハンバーグの材料がちゃんと入っていて、多分、買い忘れはないと思うけど、まぁ、あったとしても雲雀さんが帰ってくるまではまだまだ時間があるから、買いに戻っても大丈夫。
「(あと少し、あと少し)」
まるで念仏を唱えるかのように心の中で私は何度も唱えた。鞄は落としても大丈夫だけど、スーパーの袋は絶対に落とすわけには行かない。だって、雲雀さんに落としたことがバレたりでもしたら、ね、うん、僕のハンバーグが!みたいな展開になると思うんだよ!!いや、まぁ、そんなことは優しい雲雀さんだからないと思うけど、むしろキャラが違うって感じなんだけど、でも絶対、私の印象が良くなくなることは分かりきった事だ。
雲雀さんに美味しいハンバーグを作るためにも私は、ちゃんとこのスーパーの袋を落とさずに家へともって帰らなければならない(あぁ、だけど腕が痛い・・・・・・!)頑張るだ、私!と思いながら重い荷物と格闘していれば、遂に見えてきた自宅。やったぁ!と焦る気持ちを抑えて、慎重に荷物を荷物を運んだ。門を開けて、ドアの前で鍵を取り出すために、荷物を地面へと置く。
「(鍵どこにやったけ、)」
と、思いながらポケットを探っていれば私は早々に鍵を見つけた。鍵には一つの鈴がついていて、その鈴からチャリンと音がなる(何故か、無くさないようにつけておきなさい、とお父さんに渡された)(もしかして、私ってお父さんにも雲雀さんにも何も出来ない子のように思われてるんじゃないのか?)ガチャガチャと音を経てて、鍵をあけてドアノブを回す。ドアを開ければ、もうお母さんもお父さんにも旅行に出てしまっているから家の中はは、静かだった。物音一つしない家に、私は気が重くなるような気がしながら、鍵をポケットに直して荷物を持ち上げる。
一歩、家の中に足を踏み入れて、誰もいないのが分かっていながらも「ただいま」と一言、声をかけた。
「おかえり」
しかし、何故か言葉が帰ってきた(えぇぇ、何このホラーな展開?!)私はその聞き覚えのある声に辺りを見渡す。いや、だって、まさか、そんな事があるわけがないと、と思ったからだ。きっと、家に一人なんて寂しいと思っていたからこんな幻聴が聞こえたんだ、と思いながらも後ろを振り返れば、少し後ろに雲雀さんが、いた(な、なんで?!)うっすらと笑みを浮かべている雲雀さんに反して、私は今間抜けな顔をしていることは間違いが無い事だろう。
いや、だって、まさか、雲雀さんがこんな時間に帰ってくるなんてありえるわけがない、し。って言うか、おかえりって雲雀さんから初めて言われたような気がするんですけど・・・・・・!雲雀さんは門をあけて、こちらに向ってくると私が持っていたスーパーの袋をとりあげた(と言う言い方はあんまりよくないけど実際にはとりあげたが一番しっくりくる言い方だ)
「な、なんで、雲雀さん、」
「僕が自分の家に帰ってきたら悪いって言うのかい?」
「そんなことはないですけど、だって、いつもはもっと遅くに帰ってくるじゃ」
ありませんか、と言い終わる前に「今日は風紀の仕事が早く終わったんだよ」と雲雀さんは言った。そんな今日に限って都合よく風紀の仕事が早く終わるんだろうか。いや、そんなまさか。8時になるのなんて当たり前の風紀の仕事が早く終わるなんてありえないに決まっている。だけど、雲雀さんはさっさと玄関から上がると「ほら、美味しいハンバーグ作ってくれるんだろ?」と言って、私の方に意地悪な笑みを向けていた。私はそれ以上何も考えずに、雲雀さんの優しさに甘える事にした。
きっと、じゃない。これは絶対、雲雀さんが私が一人が嫌いなのを知って帰ってきてくれているんだろう、と思った(あ、だけど、自惚れだったりして・・・・・!まぁ、別に雲雀さんが一緒にいるってことでOK牧場だよね!)
****
居間でテレビを見ているであろう、雲雀さんの為に準備したハンバーグは自分で言うのはあれかもしれないけど、かなり良いできだと言って良いと思う(これって、雲雀さんの重圧のおかげかな?美味しく作らないと咬み殺されるぞ、みたいな?)いつもの食卓よりは寂しいけれど、一緒に食事をする人がいるってだけで、その寂しさもなくなっていた「雲雀さん、できましたよ」と言えば、雲雀さんがテレビを消して、こちらへとやって来る。
私の最高傑作ハンバーグを見て雲雀さんは目を丸くしていた「これ、本当にが作ったの」と、ボソッと言った一言は聞かなかった事にしておきたいと思う。私って、本当雲雀さんにどんな風に見られてるんだろ・・・・・?ハンバーグも作れない子に見えてるのか、な?(そうだったらちょっと悲しいんだけど)向い合わせの席につき、私はいただきます、と手を合わせながら、視線だけは雲雀さんに向け雲雀さんがハンバーグを口に入れるのをじっと見た。
「どうですか、美味しいですか?」
「・・・・・美味しい」
「ほ、本当ですか?!」
雲雀さんの美味しいの一言に私は嬉しくなって身を乗り出してしまった。だって、ね、雲雀さんって舌肥えてそうだし、ちょっと心配だったんだよね。あー、でも良かった。美味しいって言って貰えて。それも雲雀さんに美味しいって言ってもらえるなんて私って少し凄くない?と、調子にのりつつ、私も一口ハンバーグを食べる。その味は今までの中で一番良い出来と言っても良い味だった(自分で言うのもなんだけど、美味しいんだけど!)とりあえず、良かったとホッと息を吐けば、雲雀さんが口を開いた。
「まさか、がここまで料理が上手いとは思って無かったよ」
「そ、それってどういう意味ですか!」
「そのままの意味だよ」
しれっと酷いことを言う雲雀さん。私は確かに料理が上手いって言っても中々信じて貰える事は少ないけど、お母さんとずっと二人っきりで暮らしてきたんだ。大体の家事はできるんだぞ、雲雀さんと違って!と思いながら、じーと雲雀さんを睨んでいれば私の視線に気付いた雲雀さんがため息をはきつつ(ひ、酷い!)「僕が美味しいって言うのは珍しいんだよ」と言った。いや、確かに珍しいと思うんだけどさ・・・・・!何か言い返そうかと思い雲雀さんの方を見れば、なんだか意地悪な笑顔じゃなくて、目を細めて嬉しそうに笑っているものだから、私もそれ以上何も言えずにハンバーグを食べた(・・・・・私、雲雀さんの笑顔にきっと弱い)
それにしても、よくよく考えて見れば、なんだか、これって新婚さんみたいじゃ、ない?そう思った自分が恥ずかしくなって、私は熱くなる体温を下げるかのようにお茶を勢いよく飲みこんだ。
食べ終わった後の後片付けは雲雀さんも手伝ってくれて早く終わり(雲雀さんが手伝ってくれるなんて思ってもなかったんだけど!)(皿割られたら困る、って言われた時はちょっと、うん、いや、かなりムカついたけどね!)雲雀さんとも色々な話を、した。とは言っても、学校の事がほとんどの話題だった・・・・・・雲雀さんがどれだけ学校が好きなのか改めて分かった気がするよ。
そんな雲雀さんとの会話を楽しんてお風呂にも入りいつもよりは静かな家の中、自分の部屋に戻ってそろそろ寝ようかと欠伸をすれば、その欠伸を雲雀さんに見られてしまい「大きい欠伸だね」と言って笑われてしまった。は、恥ずかしい!やっぱり女の子なんだから手ぐらいあてて欠伸をすれば良かった、と後から後悔しても遅いんだけど、やっぱり雲雀さんにはそんな女の子らしくない所を見られたくなかった(あれ、何でだろう・・・・・・?これって雲雀さんには女の子らしい所を見て欲しいってこと?)
「ほら、早く寝なよ。もう眠たいんだろ?」
「そうですね。じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ」
雲雀さんの言葉を聞いて私は部屋へと入り、ベッドへとダイブした。明日のお弁当とかどうしよう、とか、朝ごはん作るために早起きしないと、と思っている間にも瞼はどんどん下がってきて私はいつの間にか眠ってしまっていた。とりあえず、全然寂しくなかった、とまどろむ意識の中、思っていた。
Next
(2008・02・19)