ごめんね、吉田!成仏してね! (いや、まだ死んでねぇから)
昼休みに屋上でいつもと同じメンバーでお弁当を食べる。花と京子ちゃんと話をしながらお弁当をつまんでいけばいつの間にかお弁当は空になっていた(さっすが、お母さんのお弁当!全部美味しいからね!)さてさて、そろそろ応接室にでも行かないといけないなぁなんて思い、携帯を見れば不在着信が3件。珍しいと思いながら、確かめればその番号は3件とも同じで、携帯に登録されていない番号だった。少しだけ不気味に思い、かけ直す気にはなかなかならない。一体どうすれば良いんだろうと携帯を見ていれば、またもや着信がかかってきた。さすがにとらないわけにもいかないだろうと思うのだけど、その番号は先ほどの3件の不在着信と同じ番号。しらない番号から電話がかかってくるなんて、ワン切り以外じゃ初めてだ。
「ちゃん、電話鳴ってるよ?」
「あ、うん(えい、女は覚悟だ!)」
京子ちゃんに言われ私は電話の通話ボタンを押した。正直、恐くてたまらない。電話をかけてきた人が恐い人だったらどうしよう、とか、危ない人だったらどうしよう、とか思いながら携帯を自分の耳に近づける。さぁ、かかって来い!!気合は十分。しかし、手にはしっかりと汗をかいていた(いやさ、恐いものは恐いんだよ)「もしもし」と声を出して、相手の反応を待てば、その声は私が思ってもいなかった人物だった。
『?』
「え、ひ、ひ、雲雀さんっ?!」
私は咄嗟の事に思わず声がでてしまった。花と京子ちゃんが不思議そうにこちらを見ている。どうやら、私が雲雀さんと言った声は聞こえなかったらしい。私はホッと息を吐きながら、その場から離れて屋上の端っこへと移動する。向こうから聞こえてくるのは雲雀さんの声。しかし、どうして雲雀さんは私の携帯の電話番号を知っていたんだろう。私は雲雀さんの携帯の番号を知らないからこそ、後で応接室に言って雲雀さんに直接聞こうと思っていたのに。
『電話番号は母さんから聞いたよ。』
「(エスパー雲雀ですか?!)あ、そ、そ、そうなんですか!」
私が考えた事を答える雲雀さん。もう凄いとしか言いようがなかった。そして、エスパー雲雀なんて思ったことが申し訳なくて、心の中でひっそりと謝った(ごめんなさい、雲雀さん!)それにしてもお母さんも、私の携帯の番号を雲雀さんに教えてるんならちゃんと言ってくれれば良いのに。まったく、どこか抜けてるんだよなぁ、なんて思っていれば「?」と再び雲雀さんが電話越しに私の名前を呼んだ。その声色が何だか、優しくて、聞いていて暖かかった。
『この番号が僕のだから・・・・・いつでもかけて来て良いからね』
「は、はい!」
嬉しい雲雀さんの一言に思わず心が躍る。だけど、いつでもかけて良いなんてことはないんじゃないかと思った。だって、雲雀さんって忙しいし、迷惑をかけるわけにはいかない。私はそんな事を思いながら電話から聞こえてくる、聞いていて気持ちの良い声に耳をすましていた(いつでも電話したい、なんてそんな我侭言えるわけが無い)そして、私はハッと、雲雀さんに聞かなければいけないことを思い出した。そ、そ、そうだよ、今日の晩御飯何が良いか聞いてないよ!もう、このまま電話で聞いてしまおうか、と思ったけれど、何となくこれ以上電話して雲雀さんの電話代が掛かってしまってはもっと迷惑をかけるかなぁなんて思い、私は応接室に行くことを決めた。
「えっと、あの、今、雲雀さん、何処にいるんですか?!」
『・・・・・応接室だけど、それが「じゃあ、今すぐ行きますから、待っててくださいね!」
ピッと電話を切る。花や京子ちゃんに謝ると私は急いで屋上から出て行くと階段を降りて行った。あ、そういえば、雲雀さんに今大丈夫か聞くの忘れてた!(私の馬鹿・・・・!)応接室にいたってもしかしたら仕事をしている可能性だってあるのに、いや、むしろ仕事をしているはずなのに、私は雲雀さんの返事を聞くこともせずに電話を切ってしまった。自分のあまりの馬鹿さに呆れた。それによくよく考えてみれば、雲雀さんが携帯の電話代なんかを気にするようには見えない。それなら応接室に行くより、電話で聞いたほうが何倍も効率的だったはず。はぁ、とため息が思わずでそうになる。
「(でも、もう行くって言っちゃったし、)」
そうだ、もう雲雀さんには応接室に行くと言ってしまったんだ。それなら、もう行くしかないんだよ。今さら自分の馬鹿さを思い知った所でどうこうなる問題ではないんだ。そう半ば思い込む形で、自分はつくづくポジティブかもしれないなんて思いながら私は、生徒でにぎわう廊下を駆け抜けて行った。はは、この人たちはまさか私が応接室まで自分で行きたくて行ってるなんて思ってないんだろうな!なんて下らないことを考えながらいけば、すぐに人通りが一気に少ないところにでた。応接室まではすぐそこ。さすがに応接室の近くで群れようと考える人がいないらしい。
まぁ、当たり前といえば当たり前だよね。そんな命知らずな人、この学校に居るわけが無いか、と走っていた足をとめて、私は歩き出した。さすがに私も応接室の近くを走る勇気なんてこれぽっちもない。見えてきた応接室の前にいたのは、えっと、あの、意外と親切な風紀委員の人と、吉田だった。最近教室で見かけないとおもっていたら、こんなところにいたのか。と思った。そして、吉田がこちらを見る。少しだけ驚いた顔をしているように見えたのは、私が一人でこんな所にいるからだろうか(まさか、チキンな私が一人で応接室に来るなんて思ってもみなかったんだろうね!)
「お前、何やってるんだ・・・・?」
「あ、うん、えっと、あの、まぁ、その、つまりは、」
「・・・・・」
いや、だけどね、さすがに雲雀さんに会いに来たなんて恥ずかしくて言えないんだよ。ちょっとは、そういうこと察しろよな!お前、そういうこと察しないから未だに彼女できないんだよ!!なんて心の中で吉田に対して悪態をついていれば、意外と親切な風紀委員の人が私のことをこれまた少し驚いたような顔で見ているのが分かって、私はさらに恥ずかしくなった(もう、帰っちゃうかな・・・!)一体、何ていえば良いんだろうと思っていれば、意外と親切な風紀委員の人が私に話しかけてきた。
「もしかして委員長に用事か?」
「は、はい、そうなんです!!」
「・・・・お前、一体何したんだ?」
「言っておくけど別に何もしてないからね」
別に会いに来た何ていわないで始めから用事があると言えばよかったと、後悔。それにしても、吉田があまりに私のことを疑ったような目で見てきて、思わず低い声がでてしまった。ほら、意外と親切な風紀委員の人も今の私の声で少し驚いているようだし、女の子の声としては無しだったかな・・・・!(私は正真正銘の女の子だぁい!)
バンッ
勢いよく応接室のドアが開く。私の目の前にいた吉田は、ドアの前にいたせいで、急に開いたドアで思いっきり頭を打っていた。痛そうだと一瞬思ったりもしたけど、まぁ、自業自得だね!と思い、私の顔は笑っていた。吉田の目には少し、涙目になっていて、風紀委員の癖にこんなことで涙目になって良いんだろうかとおもった(天下の風紀委員がドアに頭をぶつけたぐらいで泣くなんて)だけど、確かにぶつけた時の音は痛そうだった。なんと言うか、普通にぶつけたぐらいじゃとても出なさそうな音で、私が吉田の頭は割れてしまったのではないかと、思えるぐらいの凄まじい音だった。
「?」
「ひ、雲雀さん!」
どうやらドアを開けた人物は雲雀さんだったらしい、なんて簡単に予測できたことなんだけどね。だって、応接室にいるのなんて雲雀さん一人だし、だったら向こうからドアを開ける人物なんて雲雀さんしか考えられない。だけど、どうして雲雀さんはドアを開けたんだろうか。も、もしかして今から用事があって出かけるところだったとか?!そうだとしたら、私がここまで来たのは無駄足になってしまうじゃないか!と言うか、やっぱり私が来たのは迷惑だったのかなぁ、と思っていれば、雲雀さんはドアを開き、私を呼び寄せて、応接室へと入れてくれた。その間、ずっと涙目の吉田は無視されたままだった。
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(2007・12・19)