これからは
事前の報告をお願いします
あの星空の下、結局雲雀さんに質問できなかった日から数日が経っていた。あの日から特にこれといったことも無く雲雀さんとは会えば話すぐらいで、学校では殆ど会うことはなかったけど、大分仲良くなれたんじゃないかと思う(私の勘違いとかじゃないよ!)それでも、やっぱり心のモヤモヤは消えなくて、私はなんだか心の底から笑えているような気がしないこともない。まぁ、結局はそんな気がするだけで、もしかしたら自分の考えすぎなのかもしれないのだけど。できれば、自分の考えすぎであってほしいとも思う。
「ー、ご飯よー!!」
学校が終わって、部屋で自分なりにできない勉強を頑張っていればお母さんが下から呼ぶ声が聞こえた。机の上に、勉強道具を広げたまま私は椅子から立ち上がりピンク一緒の部屋からでる。階段をゆっくりと降りてリビングの方に行けば、そこには料理が並んでいて、お母さんもお父さんも、もちろん雲雀さんも席についていた。私も自分の席について、料理を見る(あぁ、やっぱりお母さんのご飯はいつでも美味しそうだな!!)なんてのん気に考えながら、みんなで料理を食べる。雲雀さんとお父さんと家族になってからは、夜はみんなでご飯を食べるのはもう習慣になっていた。私はそれがすごく嬉しくてたまらない。
「(1人で食べるよりも何倍も美味しく感じる)」
今まではお母さんが夜仕事で遅くなっていたときは、一人でご飯を食べる事もあった。誰と会話をすることもなくて一人で食べる食事。それはとても味気なくて、確かにお母さんの作って行ってくれた料理はすごく美味しかったのだけど、それでも心から美味しいと思えることはなかった。それに比べて、今はどんな食事でも美味しいと思えるぐらい、みんなで食べる食事はすごく美味しい(いや、お母さんの料理はどれも美味しいんだけどね!)お父さんと会話して、雲雀さんもそこまで話すことは無いけどたまに会話に加わって、まるで家族だ。それがすごく私にとっては喜ばしいことなのだ。
「あら、あなたあの事言っておかなくても良いのかしら」
「あぁ、そうだったな」
突然、お母さんがハッと思い出したようにお父さんに言った。言っておかなくても良いのかしら、って何を言うのだろうか。と思いお母さんの次に出てくる言葉を待つ。目の前に座って、ご飯を食べていた雲雀さんも顔を上げてお母さんの方を見ていた。私はお母さんの言葉を待ちながらも味噌汁を手に取り、口につける。あ、今日の味噌汁の具お豆腐だ。いやぁ、やっぱり日本人は味噌汁だなぁなんて思いながら、視線だけお母さんの方にやった。その瞬間、何故だか悪寒が走った。
「私たち、明日から旅行に行ってくるから」
「ごほっ!!」
思わず、飲んでいた味噌汁を噴出しそうになってしまった。(雲雀さんにぶっかける所だった・・・!!それに味噌汁噴出すなんて女の子失格!!)私はなんとか口に含んでいた味噌汁を飲み込むを、ニコニコと微笑んでいるお母さんを見た。雲雀さんもお母さんの言葉に驚いているのか、持っていた箸をカランと落とした。あ、雲雀さんでもこんなに驚く事があるんだなぁ。いやいや、普通は驚くに決まってるって。だって、急に何言うかと思ったら「私達、明日から旅行に行ってくるから」だよ?そんな事、前の日に言う親なんて普通いないだろ。
「な、なんで・・・?」
「だって、私達新婚旅行いってないじゃない」
「僕の休みが明日からしかとれなくてね、急遽きまったんだよ」
「・・・・急遽決まったにしても、急すぎると思うんだけど」
そうだ、もっと言ってやれ雲雀さん!なんて思いつつ、お母さんの顔を見ればやっぱりすごく嬉しそうに微笑んでいて私は何も言えなくなってしまった。そうだよ、私はこのお母さんの微笑みに弱いんだ。だけど、お母さんとお父さんが明日からいないってことはこの家には雲雀さんと私だけの2人きりになってしまう。私、雲雀さんが納得できるような料理を準備できる自信なんてないよ・・・!!
「恭弥くん、ごめんなさいね。」
ゆっくりと困ったように笑うお母さん。さすがにその顔に雲雀さんは何も言えなくなったのかうっと言う顔つきになって押し黙った(雲雀さんを黙らせるなんて、お母さん実は最強?)
その後、お父さんの話を聞けば、3泊4日ぐらいで帰ってくるらしい。さすがに中学生2人を家に残すのは心配らしく(むしろ心配なのは私だと言われた。それを聞いて雲雀さんは頷いていた)お父さんの仕事の関係もあって、その日数だそうだ。あぁ、そう言えば忘れていたけどお父さんってどこかの社長さんだったんだよね。
「お土産たくさん買ってくるからね」
部屋に戻り、横になって目をつぶる。机の上には未だ、勉強道具が出しっぱなしだけど明日の朝、鞄に詰め込めばよいだろうと思いそのままにしておいた。お母さんとお父さんは明日からいないのか・・・やっぱり食事の準備は私がしなくちゃいけないよね?雲雀さんは夜帰ってくるのも遅いし、風紀の仕事をして帰ってくるのだから、疲れているに決まっているし。だけど、私なんかの食事で雲雀さんは納得してくれるだろうか。確かに、お母さんと2人で暮らしていたときは私が食事の準備をすることもあったけど、それでも心配だ。
「(まずいなんて言われたらどうしよう)」
あぁ、だけど優しい雲雀さんのことだからそんな事言わないかもしれない。って言うか、そう期待しておくことにしよう(そうじゃなちゃ、やっていけないしね!)明日からは雲雀さんが帰ってくるまでは一人なのか。そう思うと少しだけ寂しいような気がした。今まで、家に帰れば誰かしら人がいて「ただいま」と言えば、「おかえり」と返してくれる人が絶対にいたのに、明日から数日は帰っても誰もいない。
まぁ、数日のガマンなのだから、と言ってしまえばそれでおしまいなのだけど、それでも寂しいと思うのは仕方がないことだ。
「(だって、私は一人が嫌いだから)」
群れを嫌う雲雀さんの妹が、群れを好くなんて何とも不思議な感じだ。雲雀さんに知られたら咬み殺されてしまうかもしれない。私はそう思いながら、いつの間にか寝てしまっていた。明日から雲雀さんと2人きりの生活だと言うのに、ずいぶんお気楽だと自分でも思った。
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(2007・10・13)