君は一体、何を考えてるの?
並盛の秩序を乱す奴らを咬み殺して家に帰れば、もうそれなりに遅い時間だった。この前、と帰った時と違って一人で帰る帰り道は長い道のりに感じて家についた時には、やっとついたのかと思ったほどだった。玄関を前にして、ふと朝の出来事が頭に戻ってきた。はもう家に帰っていることだろう。じゃあ、もしかして「おかえり」って言ってくれるだろうか。僕は高鳴る胸を抑えながら、玄関のドアに手をかける。
「(と父さんの声がする)」
ドアをあければと父さんの声が聞こえてきて、僕はその声に少しだけイラつきを覚えた。は、実の息子である僕なんかよりよっぽど父さんと仲良くなっていた。確かには優しくて、可愛いくてとても良い子だから父さんが可愛がる理由も十分分かる。だけど、その光景を見ると、まるで、僕だけがその場に取り残されていたような気分になってしまう。僕だけ一人だと感じられ(と父さんがいるのに何故か孤独だと思うんだ・・・)、僕はその輪の中には入っていけない。今まで父さんとなんて殆ど話していなかったから今さら、仲良く話すなんて考えられない。でも、その輪の中に入りたいと思ってしまう僕がいる。・・・・・こんな気持ち、僕らしくないのに。そう思いながら靴を脱いでいるとリビングから誰かが歩いてくる音がした(母さんだろうか?)
「お、おかえりなさい」
まさか、と思って顔を上げればそこにいるのはだった。本当にこの子は僕をどれだけ喜ばせれば気がすむんだろう。さっきまでイラだっていた気持ちはまるで消えてしまったかのように僕の中からなくなっていた。たかが、おかえりと言う一言だけなのにここまで暖かい気持ちになれるとは思っても見なかった。を見れば、僕の学ランを見て少しだけ青ざめているようにも見えた。の視線をたどってみれば、そこには先ほど咬み殺している時についたと思われる赤い血。あぁ、僕とした事がを恐がらせてしまった!!まぁ、今さら後悔しても、もう遅い。それにの怯えた顔も嫌いじゃないし。好きな子ほどいじめたくなるなんて小学生の考えだと思うけどね。
「ただいま」
僕が言えば、少しだけの顔が赤くなったような気がした(自分に都合の良いように考えすぎだ)靴を脱いで、とリビングの方に行けば、父さんがテレビを見ているのが見えた。父さんがこちらに気付いて振り返って僕を見て、「おかえり、恭弥」と言った。何だか、すごく久しぶりに聞いたような気がしたのは、僕の勘違いだろうかと考えれば、僕は確かに以前にもこの言葉を聞いていた。その時の僕はほとんど聞いてはいなかったし、ただ視線をやるだけだったけど、今は違う。僕は父さんの言葉に何故か少しだけ嬉しくなっていていつの間にか「ただいま」と父さんに返していた。一瞬驚いたような顔をした父さんがこれまた嬉しそうに微笑むものだから僕はなんだか恥ずかしくなった。
食事を終え、お風呂に入り終わった僕は自分の部屋のベッドに横になっていた。髪は濡れているけど、特に気にする事はなく僕にしては珍しく、ただぼぉっと横になったまま部屋の天井を見つめていた。「キィ」と聞こえてきた音に、思わず体が強張る。自慢じゃないけど、僕は葉の落ちる音でも目が覚めるし、人の気配くらい察知できる。今の音はが窓を開けた音だろう。そう言えば、おやすみを言ってはなかった。この機を逃すわけにはいかないと思った僕は、ベッドから降りて窓へと近寄る
――――――キィ
「何してるの?」
自分の部屋の窓から顔を出して、空を見つめるはとても綺麗だった。いつものには可愛いと言う印象があるのに、なぜかこのときのは綺麗という言葉が一番しっくり来るような気がした。濡れた髪からは、いつもとは少し違った印象があって、こんなのと僕が家族にならなかったら見られなかったであろうと思うと、また少しだけ父さんに感謝した。
「空を見てたんです」
こちらに気付いたがこたえる。それだけで僕の胸が少しだけドクンと、高鳴った気がした。多分、気がしただけじゃなくて本当に高鳴ったんだと思うけど。の言葉に僕は、空を見上げる。確かに綺麗だ。だけど、どんな星よりものほうが綺麗だ(・・・キザ過ぎる)そんな事、言えるはずも無く僕は再びのほうに顔を戻した。もし、あんなキザな台詞、に言ったらはどんな反応を示してくれるだろうか。自分でも分かってる。まだ、その時期じゃない。今言っても冗談だと思われるだけだ(僕が冗談なんてつくわけはないと分かっていても、冗談だととられてしまう)
「あぁ、確かに今日は星が綺麗だね」
僕が言えば、は少しだけ驚いた顔をした。この子、僕がこんな事言うなんて思ってなかったらしい。本当にこの子、たまにすごく僕に対して失礼だよね。そもそもはすぐに顔に出る。ほら、今だって何を考えているかまでは分からないけど急に真剣な顔になっている。さっきまでとは全然違う顔。満天の星空のした、僕はの顔を見つめる事しかできなかった
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(2007・09・22)