「何してるの?」












とりあえず平静を装ったまま僕はに話しかけた。表面的にはいつもの僕となんら変わりがないように見えると思うけど、実は内心冷や汗ダラダラだ。このお弁当がぼくのものなら、一安心。だけど、もしもこのお弁当が草壁のだったりしたら、僕は何が何でも阻止しなければならない。そんな事を考えているとは持っているお弁当を僕の方に差し出してきた(え・・・?これってもしかして、)













「お弁当を届けにきました」








「・・・・」












思わずどうして良いか分からなくなってしまった。が持っていたお弁当の行方はどうやら僕宛てだったらしい。勘違いしていた自分が少しだけ恥ずかしくなって、何も出来たない(あぁ、僕の馬鹿!)受け取らないと分かっていても手を動かそうとしない僕に、は再度お弁当を差し出してきた。やっとそのお弁当を受け取ると僕は真っ直ぐにのほうを見た。














「・・・あり、がとう」












咄嗟に出た言葉に、と草壁が二人して目を見開いて驚いていた。僕はその驚きように、思わず眉をひそめた。僕だってお礼くらい言うよ。確かに、ここ数年言った覚えはないけど。だけど、がわざわざ僕のためにここまで持ってきてくれたんだからお礼を言うのは当たり前だろう(あとで、草壁だけは咬み殺そう)目の前で驚いてオドオドするがあまりにも可愛すぎて僕は自分でも気付かないうちにの頭に手を伸ばした。僕の手に柔らかく絡んでくる髪の毛が心地よくていつまでも撫ぜていたい気持ちになる。












「ところで、授業は?」











「あ、もう始まってますね・・・あはは」













僕が聞けばは力なく笑いながら答えた。

















「もしかしなくても、これ僕に届ける為だけにここに来たの?(なんて自意識過剰な質問なんだろう)








「え、あ、はい!!もちろんです!!」








「・・・遅刻までして?」








「そう、なりますかね」













僕にお弁当を届けにきたのかと聞けば、はっきりと答えるが愛らしく、とても嬉しいと思った。本当なら生徒が授業をサボるのを見逃したりしない(風紀委員は別だ)だけど、は特別。僕のためにそんなに勉強できる方ではないのに授業に遅刻までしてお弁当を届けてくれるなんて、僕ととの距離が少しでも縮まった証拠じゃないだろうか。あぁ、僕ってどれだけ自意識過剰なんだよ。期待しすぎて後で後悔するのは、僕なのに。少しだけ考えて、僕は口を開いた。
















「じゃあ、4時間目は応接室に居れば良いよ」









「あっ、本当ですか?って、えぇぇぇぇぇ?!」









「もう、どうせ授業は始まってるし」













が授業に遅れて教師に怒られてしまうのは何だかすまない気がして、この時間は応接室にいてもらうことにした。丁度、僕の仕事は終わったし、ゆっくりするのも良いだろう。はさっきよりも驚いた様子でこちらを見ている。草壁もまた目を見開いていた(こっちを見るな、草壁のくせに














「いや、でも」









だって教師に怒られたくはないだろう?(違う、本当は僕が一緒にいたいだけだ)


















僕はそう言いながら、応接室のドアを開けた。の顔は少しだけ、強張っていた。この様子だと、は僕の誘いを断りそうだなと思いつつの顔をうかがえば、が口を開いた。















「ひ、雲雀さ「あ、それと、草壁(君の意見なんて聞くつもりはない)










「なんでしょう、委員長」








「4時間目の授業はは休むって教師に伝えといて(4時間目はあと何分だ・・・?)









「・・・・はい、分かりました」















草壁が去っていくのを見届ける前に、僕はを応接室へと招きいれた。応接室にある時計を見る。4時間目が終わるまで、まだ30分以上はある。どうやったら、この短い時間の間に、君ともっと仲良くなれるだろうか。・・・って言うか、2人きりじゃないか!!昨日は僕もも風紀の仕事をしていたらか特段話す必要もなかったけど、今はそんな事は言ってられない。どうしよう、僕。って、今さら悩んでももう遅いんだよ!
























を中央にあるソファーに座らせ、その向かい側に僕は座った。あぁ、話す話題が見つからないんだけど。目の前に座ったを見たくても見れない。その間にも刻々と時間は過ぎていくばかりで、何も出来ない自分の不甲斐なさに少しだけへこんだ(この僕が)とりあえず、紅茶でも出すことにしよう。その間に、何か話すことを考えれば良いんだし。頑張れ僕と励ましながら僕は立ち上がり、を見た。














、紅茶は飲める?」









「え、あ、はい!!」












の言葉に、僕は応接室の奥にある部屋へと向う。その間もと何を話そうかと、ずっと考えていた。女の子ってどんな話題が好きなんだろうか。考えても今まで、女子とほとんど話さなかった僕には分からない。はぁ、とため息を一つ吐きつつ、紅茶のパックを取り出す。応接室にある紅茶は結構良いものだから美味しい。もきっと喜ぶだろう。そう思うと少しだけ、僕の頬はほころんだ。















君が喜べは僕も嬉しい













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(2007・09・01)