あと、の言うとおりシチューは今まで食べた事がないぐらい美味しかった 君が可愛すぎるからいけないんだ
いつもなら僕一人の応接室だけど、今日は違う。なんと、この僕の応接室にがいる。もう外は真っ暗で暗くなっていて、正直なところ僕の書類なんてもう片付いた。先ほどからはたまたま机の上においてあった本を読んでいるけれど、どうしてものことが気になって、本に集中なんてできるわけがない。普通の奴ならもう、終わっても良いころなんだけど・・・って、ヤバイ。何、あの子。なんで、あんな書類の処理するだけでモタモタしてるわけ?!すっごい可愛いんだけど!!書類の処理するだけであんな可愛い子見たことないよ。って言うか、可愛いなんて思った自体が初めてのことなんだけど。
「(母さんに連絡しとかないと)」
思えばこんな時間まで遅くなったら母さんが心配しているだろう。ついでに父さんも。携帯を取り出して、メールを打って再び本に目を通す。のほうを見れば、目の前の書類もあと少しの様に見えた。本を読むフリをしながらの様子をうかがう。この様子なら、もうそろそろ帰れるだろうな・・・なんだか、少しだけそれはそれで寂しいかもしれない。せっかく二人きりになれたのに。もっと話せれば良かったんだけど、と僕が少しだけ物思いにふけていると何か視線を感じた。その視線の矛先をたどれば、がこちらを横目でうかがっている。
「ねぇ、終わったの?」
「は、はい」
「ふーん、あまりにも遅いから退屈したよ」
僕の馬鹿・・・!!なんて後悔しても、もう遅い。だけど、を見ていてもそれほど僕の言葉を気にしているようには見えなかった。いや、むしろ睨まれた?何、この子。僕をここまで来るのに睨んでくるなんて。さすがの僕も許さないよ?って、いや、やっぱり許す事にする。だって、この子睨んだ顔もすごく可愛いんだけど(・・・僕はかなり重症かもしれない)
「じゃあ、帰ろうか」
「・・・・は?」
僕が言えば、は睨んでいた顔から一気に間抜けな顔になった。帰る場所が一緒なのに、こんな暗い中、一人で帰すわけにはいかないじゃないか。いや、家が違ったとしてもちゃんと送り届けたとは思うけどね。
「またが迷子になったら困るからね」
朝、吉田から聞いたことを思い出して少しだけ頬が緩んだような気がした。目の前のを見れば、とても驚いた顔をしているように見える。何か僕、変なこと言ったっけと考える。あぁ、そういえば今初めての名前を声にだして呼んだ気がする。今まで心の中では何回も呼んでたけど(なんだかストーカーみたいじゃないか)だけど、仮にも兄妹だしさんなんて呼び方おかしいだろ・・・の籍は雲雀に入れてはないから、兄妹ってわけでもないけど(これだけは父さんに感謝だね)それに、僕だって好きな子ぐらい名前でよびたいさ。
帰る途中は何を話してよいか本当に分からなかった。途中の顔を不細工になっているなんて言ってしまって、後々この僕が自己嫌悪してしまった。だって、はどんな顔も可愛いから不細工なわけあるわけないのに。そこらへんで群れている女子の方がよっぽど不細工だ。
次の日、風紀の仕事のために朝早くから着替えて部屋から出た。隣の部屋からは、物音一つ聞こえてこないからはまだ寝ているんだろう(当たり前だ、こんなに朝早いんだから)階段を降りて、台所で何か飲み物でも飲んでいこうと思えば、そこにはパジャマ姿のが牛乳を持って立っていた。とりあえず、僕は平静を保ちながらの持っていた牛乳を手に取る。牛乳と言えば身長を伸ばすのに最適だからね(いや、別に気にしてないよ?)
そういえば、昨日一緒に帰ったけど、この子、道覚えたんだろうか。あぁ、なんだか覚えてなさそうだな。一応、確かめてみれば、「はい」と元気の良い返事が帰ってきた。なんだか、その返事が可愛くて思わず意地悪に微笑めば、に少しだけ睨まれた。
「じゃあ、僕はもう行くから。も遅刻しないように来るんだよ」
念には念をおしておかないといけないと思って、言えば、が口を開いた。
「わ、分ってます!!えっと、いってらっしゃい」
「・・・・うん、行って来ます」
誰かにいってらっしゃいって言ってもらえるのってこんなに嬉しい事だったんだと僕は初めて知った。今まで、僕はこんな事言ってくれる人なんて家にいなかったし。これはが言ってくれたから嬉しかったのかな。なんだか、たったこの一言だけでも機嫌が良くなる僕は思っていたよりも単純なのかもしれない。もしかしたら「おかえり」なんて言って貰えるんじゃないかと期待している自分がいて、笑えてきた。あれ、今思ったんだけど、さっきの挨拶ってなんだか新婚の夫婦みたいな感じじゃなかった?
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(2007・08・19)